6歳までの子どもの自己肯定感を育てる「親からの3つの言葉」

西剛志
2023.10.12 18:22 2023.10.26 11:50

二人の子ども

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子どもの健やかな成長を促す”自己肯定感”に対して、親の笑顔がどのような影響を与えているのか、脳科学者の西剛志さんに教えていただきました。

※本稿は『PHPのびのび子育て』2021年1月号から一部抜粋・編集したものです。

自己肯定感を高めるには?

笑顔の母と息子

「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ」

これは今から約100年前にウィリアム・ジェームズという心理学者が残した言葉ですが、なんと最新の脳科学の研究では「笑うと本当に幸せになれる」ことがわかってきています。

笑顔になると口角が上がりますが、ほっぺたの筋肉を動かすと脳のスイッチが入って「チョコバー2000個分」の脳への刺激(16000ポンド/約290万円を受け取ったときと同じ脳への影響)があると言われています。そして、笑顔は幸せな気持ちを周りに伝染させることもわかってきています。

ハーバード大学が幸せな人とそうでない人を調べたところ、周りの人たちの幸福度がその人の幸福度を決めている(つまり、不幸せな人の周りには不幸せな人が多く、幸せな人の周りには幸せな人が多い)ことがわかったそうです。

とすると、親の状態というのは、脳のミラーニューロンという細胞を通して、まるで鏡うつしのように子どもにうつってしまうということなのです。

また、幸せはどんな言葉を使うかで変化してきます。たとえば、最高に嬉しいときにはどんな言葉を使っているでしょうか? もしよかったら、その言葉を今、心の中で言ってみてください。気持ちが変化したことに気づきましたか?

私たちは言葉を言った瞬間、脳に刺激が送られ映像に変換されます。よい言葉を言うと、よいイメージが脳内に写ります。そして、よいイメージはそのまま子どもの自己肯定感につながるのです。

ですから、親の笑顔と言葉は、子どもにとって最高の贈り物になるのです。

脳の育ち方のタイプに合わせた「自己肯定感」の育て方

母親と娘

もともと自己肯定感が低い子どもは世の中に存在しません。みなさんは自信のない赤ちゃんを見たことがあるでしょうか?

ハイハイができないと、あきらめる子どもはいないと思いますし、子どもは元々生まれながらにして素晴らしい自信をもって生まれてきます。

しかし、成長していく中で、自信を奪うような言葉を言われたり、周りに笑顔が少なかったり、うまくいかなかった体験をマイナスに捉えてしまうなど、後天的な環境によって自己肯定感が下がってしまうことがあります。

私は仕事で全国の認定こども園や保育園の子どもを5000人以上見てきて、その中で子どもによって自己肯定感に差があるのはなぜなのか、ということを調べてきました。

その結果、未就学の子どもの自己肯定感は大きく4つの要素でできているように思います。今回は自己肯定感の育ち方のタイプをチェックできる診断を用意しました。

特に安心感は、幼少期に肌と肌が触れ合う頻度が高いほど、高まることも報告されています。子どもを抱っこしたり、膝の上で読み聞かせをしたりするなどの肌と肌の触れ合いは、ストレスに強くなる遺伝子にも影響することがわかっているのです。

自己肯定感の4大要素(0~6歳の場合)

高い高いする親子

1. 安心感
自己肯定感を高める上で一番大切なもの。「自分が守られている」と認識できないと脳は不安定になる。言葉がけとスキンシップがポイント。

2. 成功体験
小さい頃の成功体験は、無意識の記憶に残りやすい。チャレンジして困難を乗り越えられた体験は、脳と心を成長させる。

3. 好きなこと、得意なことがある
好きなことや得意なことを見つけて認めてあげることで、子どもの自尊心が高まる。

4. コミュニケーション力
他者とうまくコミュニケーションを取れることは、自信につながり、幸福度が高まる。3~4歳から活発に。

わが子の自己肯定感チェックシート

笑う子

ここでは、子どもの自己肯定感のタイプをみてみましょう。次の10項目であてはまるものはいくつありますか?

1. 親と離れてもリラックスして遊べる
2. 親子で肌と肌が触れ合う時間が多い
3. 難しいことでも、失敗を恐れず挑戦する
4. 過去の写真を一緒に見て思い出を振り返ることが多い
5. 何事も夢中になって遊ぶ
6. 自分の好きなこと、得意なこと(特技)をちゃんと言える
7. 自分の意見をはっきり伝えることができる(聞き分けがない子も含む)
8. 友だちに迷惑をかけることが少ない
9. 大声で笑うことが多い
10. よく歌う(鼻歌も含む)

【チェック結果】
A:0~3個 → エネルギーを秘めた 種タイプ
B:4~7個 → まだまだ伸びる 発芽タイプ
C:8~10個 → たくましく育っている幹タイプ

A:エネルギーを秘めた種タイプ

真剣な顔の子ども

4~6歳の場合は、子どもが親との関わりに不安がある可能性があります(0~3歳は成長期なので大丈夫です)。

原因としてよくあるのが、注意ばかりして子どもの言葉をちゃんと聞いてあげないケースです。触れ合いが足りないケースもあります。子どもはたくさんの可能性を秘めているので、太陽のような光をたっぷり与えて育ててください。

【自己肯定感を育てる言葉】
・もっと聞かせて
・子どもが言っている言葉をそのまま返す(おうむ返し)
・そう。素晴らしいね!

自己肯定感は他人から認めてもらえることがベースとなります。1日5分だけ、親(自分)の意見は絶対に言わずに、この3つの言葉を使って話してみてください。魔法のような効果に驚くかもしれません。

B:まだまだ伸びる発芽タイプ

遊ぶ子ども

自己肯定感は順調に成長していますが、工夫次第でもっと伸びるタイプです。自分は愛されているという安心感と、チャレンジしたときに楽しい! という感覚があると、ゆるぎない自信がさらに芽生えていきます。

また、私たちの幸福度は、自分で決定する回数に比例することがわかっています。子どもに指示するよりも、選択させるのもよい方法です。

【自己肯定感を育てる言葉】
・あなたが大好きよ
・どうしてそんなことができたの?
・どっちがいいかな? 

何かできたときに「すごい!」とほめられると、子どもは、できた自分はすごいけど、できない自分はダメだというイメージになります。できたことよりも、どうしてそんなことができたの? と聞いて、過程を評価しましょう。

C:たくましく育っている幹タイプ

微笑みあう親子

これからの社会を生き抜くために十分な高い自己肯定感が育っているタイプです。家族や周りの人に愛されていて、自分が信頼されていることを自覚しています。何に対しても自信をもって進めます。

今後は「自分が恵まれていること」、「感謝することの大切さ」や「思いやりの気持ち」を育むと、より素晴らしい自己肯定感が育っていくでしょう。

【自己肯定感を育てる言葉】
・今日はどんなことが楽しかった?
・いつもチャレンジしてすごいと思うよ
・生まれてきてくれてありがとう

幸福度が高い人ほど、過去の幸せな出来事を振り返る回数が多いことがわかっています。就寝前などに、今日の楽しかったことを一緒に振り返ってみてください。親が感謝すると、子どもも感謝の気持ちを学びます。

自己肯定感は生きる力

手

最近、とくに「自己肯定感」という言葉をよく耳にするようになりました。そして、私も親御さんたちから、「自己肯定感が大事と聞きますが、どうしたら子どもにそれをつけてあげられるのでしょうか?」、「自己肯定感が低いと、何がよくないのでしょうか?」というような質問を受けることが多くなってきました。

皆さんが気にされているように、自己肯定感を高めることは、子育ての中でも非常に重要なテーマです。というのも、自己肯定感が高いか低いかは、将来、子どもの人生に大きな違いとなって表われて、いろいろな影響を与えるからです。

自己肯定感は人によって様々な定義がありますが、簡単に言うと「ありのままの自分を好きと思える気持ち」です。これがあることで自分を信頼し、「自分ならできる、やれる、大丈夫」と思うことができるようになります。

そして、自分を好きになり、その自分に対する信頼感から、少しのことではくじけない、折れない心をもつことができます。

ですから、やる気をもって何かに取り組んだり、挑戦したりしながら、人生を生きていくときの大切なベースとなるもの、といってよいでしょう。

そして、そういう心の状態は脳の働きとも強く結びついていて、自己肯定感が低い人は、ネガティブで、自分をよく見せようとするなど、心が緊張状態におかれやすくなります。すると、脳が本来の働きをしなくなり、せっかくもっている能力が発揮できなくなるのです。

リラックスしているときには、脳内にセロトニンという物質が分泌され、感情を安定させ、やる気や集中力を持続させてくれます。このように、脳と自己肯定感というのは、切り離すことのできない関係なのです。

今回お伝えしたように、何より大切なことは、お母さんやお父さんの”笑顔と言葉”です。私も多くの子どもたちの自己肯定感を高めるために全国を飛び回っていますが、何より親御さんの想いが一番ですので、ぜひ、それを大切にしていただければ嬉しいです。

西剛志

西剛志

脳科学者(工学博士)。2008年、企業や個人を成功に導くための脳科学的なノウハウ を提供する会社を設立。脳科学を生かした子育ての研究も行ない、全国の幼稚園、こども園・保育園などで1万5000人に講演会などを提供。テレビやメディアなどにも多数出演。著書に、『世界一やさしい自分を変える方法』(アスコム)、『脳科学的に正しい一流の子 育てQ&A』(ダイヤモンド社)など海外を含めてシリーズ累計32万部突破。