家族の会話が育てる「子どもの語彙力」 親が知っておきたい声かけのコツとは?

齋藤孝
2024.11.01 10:35 2023.11.14 11:50

会話する父と子

人の感情や思考は「言葉」を通して育まれます。それを体感として知っている親は、子どもに語彙力を身につけてほしいと願うもの。

では、子どもの語彙力を育てるために、親ができることは何でしょうか?
教育学者の齋藤孝さんは、「改まった“勉強”の形をとらなくても、親子の普段の会話が語彙力アップにつながる」と語ります。

親から子への「声かけ」のコツを、齋藤孝さんの著書『親子で楽しく考える力が身につく! 子どもの語彙力の育て方』(KADOKAWA)よりかいつまんで解説します。

【筆者紹介】佐藤恵(さとうめぐみ/ライター)
教育やビジネス、医療に関する書籍・情報誌の企画・ライティングを手掛ける。

うれしい時もつらい時も「ヤバい」で大丈夫?

子どもを叱る母親

一昔前なら「チョー」や「カワイイ」、ここ数年は「ヤバい」。その時代ごとに、汎用性の高い流行り言葉が生まれます。ピンチの時も「ヤバい」、おいしい時も「ヤバい」、うれしい時もつらい時も「ヤバい」で済んでしまう(済ませてしまう)子どもたちの語彙力、国語力に不安を抱いている親御さんは少なくないと思います。

子どもに語彙力を身につけてほしいと思い、本やドリルを買ってあげる……では解決できないことは、薄々感じている。かといって、親がマンツーマンで語彙を伝授する時間は(自信も……)ない――。

語彙の習得方法は勉強だけではない

手をつなぐ親子

そこで齋藤孝さんが提唱するのが、「語彙の習得を、改まった“勉強”の形ではなく、日常生活のなかに溶け込ませること」。親子の普段の会話も語彙力アップにつながるといいます。

その最たるものが、親からの声かけ。親がどんな言葉をかけるかによって子どもが受ける刺激も変わりますし、蓄積されていく言葉も変わってきます。

意識したいのは、「考える力を育む声かけ」。考えるとは、頭の中で言葉を積み上げていく行為。つまり、言葉(語彙力)がなければ、考えを進めていくことができないのです。

子どもの「ヤバい」の具体性を引き出す

トランプで遊ぶ親子

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先ほど挙げた「ヤバい」や「ムカつく」の多用が危ないのは、具体的なことが何一つ語られていないこと。いいことも嫌なことも「ヤバい」でひとくくりにされてしまうことで、「いい」と「嫌」の程度が1でも10でも同じになってしまい、大して嫌でもないことがおおごとになってしまうケースがあるからです。

例えば子どもが「このアイス、ヤバい」「明日のテスト、ヤバい」「このユーチューバー、ヤバい」と言ったら、「何がどうヤバいか、もう少し具体的に言ってみてくれる?」と聞きます。この声かけによって”然とした感情を1つ1つ解きほぐすように、子どもの思考を深めていくことになります。

子どもの中にある「具体性」を引き出してあげる声かけによって「ヤバい」「ムカつく」を因数分解できるようになり、「このアイス、ヤバい」が「食べたことないくらいおいしい」、「明日のテスト、ヤバい」が「授業でもよくわからなかったところがテスト範囲に入っているから自信がない」と、状況や感情を腑分けして表現できる語彙力を獲得できるのです。

佐藤恵

佐藤恵

教育やビジネス、医療に関する書籍・情報誌の企画・ライティングを手掛ける。