子どものわがままを助長させる「親のNGな叱り方」

立石美津子

子どもが癇癪を起こしたときに対応を間違えると、わがままを助長したり、長所をつぶしたりしてしまうことも……。どのように受けとめればいいのか、子育て本著者であり講演家の立石美津子さんがご紹介します!

※本稿は『PHPのびのび子育て』2021年6月号から一部抜粋・編集したものです。

子どもの反抗は、親からの自立、成長の証

子どもは自分の思いどおりにならないとき、わがままを言うことがあります。こんなとき、何でも言うとおりに従わず、時には「世の中、思いどおりにならないこともあるんだ」ということを教えていくことも、子育てでは必要になってきます。

ただし、自己主張は成長の過程です。それを全部抑え込んでしまうと、将来、「自分の意見を言えず、自分の感情を押し殺し、何でも人の言うとおりにする人」に育ってしまうかもしれません。

さて、まず、最初にやってくるのが2〜3歳にかけて起こる”魔のイヤイヤ期”。人生最初の親への反抗は、イコール「親からの自立、成長の証」です。「ついにイヤイヤ期がやってきた。おめでたい! お赤飯を炊いてお祝いしよう!」くらい喜ばしいことなのかもしれません。

子育てとは、我が子が生まれた瞬間から”いつかお別れするその日のため”にやっているのかもしれませんね。子どもの主張を頭ごなしに否定したり、一方的に命令して子どもを従わせたりすることを控えて、子どもの気持ちに寄り添い、ダメな理由を伝え、選択肢を与えてみませんか。

【ケース1】食べたいヨーグルトがなくて、大泣きして牛乳をぶちまけた

・NG対応
×子どもを“王様”にしてヨーグルトを買いに行く
→子どもは、また同じことをすれば、言うことを聞いてもらえると学習します。

×「なんでそんなわがままばかり言うの!」と叱る
→声を荒らげるほど、子どもは大泣きします。「残念ながらありません」と淡々と事実を伝えましょう。

×牛乳の後始末を親がする
→子どもにも後始末をさせないと、「こういう行動をすると後が大変になる」ということを学べません。

・OK対応
〇「△△ヨーグルト美味しいよね。食べたかったよね。ママも食べたかった……(共感)。でも、残念だけれど、売り切れだったの(理由)。明日、買いに行く? 明後日にする?(選択肢)」
→子どもに決めさせることで、気持ちが切り替わります。

〇牛乳の後始末を子どもにやらせる
→もし、牛乳で濡れた床がかえって汚れてしまうことがあっても、ダメ出ししないようにしましょう。

【ケース2】「あの服じゃないと嫌!」と、泣いて暴れて着替えない

・NG対応
×「だったら好きにしなさい!」
×「一生、それを着ていたら!?」
×「勝手にしなさい!」
×「友だちから『その服しかもっていないんだ~』って、バカにされるよ!」
→子どもにも子どもなりにその服を着たい理由があり、こだわりや好みがあるので、突き放すような言葉で脅すと、不満だけが残ってしまいます。

・OK対応
〇「そっか! ママが選んだ服を着るのが嫌なんだね。自分で着る服を選びたいんだね(共感)。今日は寒いから(理由)、この中で好きなのを選んでくれる?(選択肢)」
→子どもは自己決定したいので、大人から命令されることを嫌がります。すべての服から選ばせると時間がかかるので、場違いでない服や、その日の気候で着ても問題がない服を2~3着用意し、子どもに選ばせましょう。自分で決められたら納得するはずです。

【ケース3】幼稚園に、家のおもちゃを持っていくと言って聞かない

・NG対応
×とりあえず持っていく
→「園の入り口でママに渡してね」と、とりあえず家から持っていくことを許すと、家でしていた押し問答が園の入り口で起こります。

×「今日だけ特別よ」と許す
→一度許すと、何度も同じことが繰り返されます。

×「おもちゃを持っていけないんだったら、幼稚園には行かない!」と子どもから親が脅されて、渋々折れる
→子どもはあらゆる場面で、同じ手段を使うようになります。

・OK対応
〇「おもちゃを持っていって遊びたいよね。友だちに見せたいよね(共感)。でも、友だちもほしくなっちゃうよ。皆に触られたり、取られたり、なくなったりしたら困るよね(理由)。それでも持っていく? おうちに大切にしまっておく?(選択肢)」
→園のため、友だちのためではなく、本人にとっておもちゃを持っていくことは「得策ではない」と伝えましょう。一方的にルールを伝えて守らせようとしても、子どもは納得できません。

【ケース4】公園から帰りたがらず、まだ遊ぶとぐずる

・NG対応
×「いい加減にしなさい!」
×「さっさと帰る準備して!」
→「いい加減」「さっさと」という言葉は曖昧で具体性に欠け、子どもには伝わりにくいです。

×「夕飯を作る時間がなくなっちゃうじゃない!」
→親の都合を一方的に押し付けているだけです。子どもにも「あと少しで完成するから砂を掘るのを中断したくない」「友だちと今、どちらがうまくできるか競争している」などの都合があります。

・OK対応
〇時計が読める子だったら、「4時まで遊ぶ? 4時5分まで遊ぶ? どっちか選んで」
〇時計が読めない子だったら、「あと50数える間、遊ぶ? 100数える間、遊ぶ?」
〇「滑り台3回滑ったら帰る? 2回滑ったら帰る?」
→自分で決めたことなら守ります。

〇「100数える間に、この袋に砂場セットを入れてね。よーいドン!」と、遊びにしてしまう
→まだ遊びたい気持ちが満たされ、気持ちも切り替わります。

【ケース5】友だちのおもちゃを奪う、自分のおもちゃを貸さない

・NG対応
×「何してるの! ダメでしょ!『ごめんなさい』は?」
×「いじわるしないで貸してあげなさい! 『いいよ』って言いなさい!」
→頭ごなしに否定し、謝罪や譲渡を強いるのはNG。その場では言うとおりにしても、子どもは納得できず、同じことを繰り返します。親同士の人間関係を優先し、「ごめんね」「いいよ」の言葉だけを子どもに強要し、「シャンシャン、めでたしめでたし」としないことが大切です。

・OK対応
〇「それで遊びたいんだね(共感)。でも、いきなり取るとびっくりするから(理由)、口で『貸して~』ってお願いしてみようか? それとも終わるまで待っていようか?(選択肢)」
〇「まだ遊んでいたいよね(共感)。でも、△△ちゃんが貸してほしいみたい(理由)。あと2回遊んだら貸してあげる? 3回遊んだら貸してあげる?(選択肢)」
→どう行動すればいいのかが具体的にわかる選択肢を与え、子どもに決めさせましょう。

【ケース6】欲しいものを買ってもらえないと、床につっぷして泣く

・NG対応
×仕方がないので「今日だけ特別よ」と許す周りへの迷惑を考えて買い与える
→「いくら泣いても買ってあげませんよ」という親の態度を貫くことが肝心。大人が折れて買い与えてしまうと、子どもは「親が困るように大騒ぎすればお菓子が手に入る!」と誤って学習してしまいます。
そして、声は毎回バージョンアップし、買ってくれるまで泣き叫ぶ悪循環に陥り、さらに手がかかることになってしまうのです。

・OK対応
〇買い物する前に、「今日は、お菓子は買わないよ。欲しがるなら買い物に行くのをやめるけど、どうする? 行く? 行かない?(選択肢)」
→事前に確認、約束しておきます。

〇買い物中、「このチョコ、美味しそうね。ママも買って食べたいな(共感)。でも、まだおうちにあるから我慢できるかな(理由)。土曜日に買おうか? 日曜日に買おうか?(選択肢)」
→それでもぐずったら、買い物を中断して帰り、有言実行を。

【ケース7】好き嫌いが激しく、 食べさせようとすると暴れる

・NG対応
×好きな食べ物に嫌いなものを混ぜ込む
→味噌汁に嫌いなおかずを加えたり、白飯に残したおかずを混ぜたりするのは、味噌汁や白飯に芋虫を入れられているようなもの。子どもにとっては拷問に近いです。

×「△△(苦手な食材)を食べないんだったら、デザートは抜きよ!」
→無理強いして食べられるようになることもありますが、不快感が残り、一生食べられなくなるケースもあります。

・OK対応
〇本人の目の前で「ああ、美味しい、美味しい。この△△、なんて美味しいんでしょう」と、家族全員で美味しそうに食べて見せる
〇牧場などに連れていき、嫌いな食材を動物が美味しそうに食べている様子を見せる
→本人に「美味しいのかな? 食べてみたい」と思わせることがポイント。

〇「ご飯を全部食べて、お楽しみのデザートにしよう」
→楽しいゴールが見えると、頑張れるものです。

「ダブルバインド」子育てに注意!

脅して言うことを聞かせようとせず、子どもの気持ちに寄り添いましょう。否定から入らずに共感する。これで子どもは「気持ちをわかってもらえた」と感じ、受け入れ態勢ができます。そして、なぜそれがダメなのか理由を教え、選択肢を与えましょう。

それからやってはいけないのは、「(親)もう帰るよ」「(子ども)嫌だ〜もっと遊びたい!」「(親)じゃあ勝手にしなさい、バイバイ!」。

これを「ダブルバインド=二重拘束」と言います。親は「もう帰るよ」と初めに声をかけます。子どもが言うことを聞かないと、今度は「じゃあ勝手にしなさい」と命じ、しかも「バイバイ」と言います。

一種の脅しですが、子どもは「見捨てられたら大変だ」と慌てます。もし、「じゃあ勝手に遊んでいていいんだ」と言葉どおりに子どもが解釈し、帰ろうとしなかったら、親は「いい加減にしなさい!」と腕をつかんで連れて帰るでしょう。

でも、この時点で親の行為は、指示したことと矛盾していて、子どもには不満が募るばかり。公園に行くたびに同じバトルが繰り返されます。こうしたダブルバインドをしないようにしましょう。

もし、年齢と比較して行動が心配な場合、例えば5歳なのにすぐにキレて友だちに手が出る、癇癪がひどい場合、発達障がいの傾向があるのかもしれません。悩み苦しまないで、専門機関に一度相談してみるのも方法です。