中学受験は家族のチーム戦!パパ・祖父母・きょうだいの役割は?

渋田隆之
2023.12.14 16:20 2024.01.19 11:50

スマホを触る女の子

受験を間近に控えてナーバスになっている子どもに対して、家族はどのようにケアしていくのが良いのでしょうか?

中学受験の第一線で30年以上指導してきたプロ講師・渋田 隆之さんに、両親や兄弟、祖父母それぞれの立場でのベストなかかわり方について聞きました。


※本稿は渋田 隆之著『2万人の受験生親子を合格に導いたプロ講師の 後悔しない中学受験100』(かんき出版)から一部抜粋・編集したものです

家族を笑顔にするのがお父さんの役割

会話する父と子

お父さんの一番の役割は、子どもの勉強を見てあげるとことではなく、家族を笑顔にする役割を演じることだと思います。まず、お母さんとのコミュニケーションをしっかりととることです。また、ときには「ありがとう」という言葉でねぎらうことができたら最高です(日本人は、言わなくても伝わるだろうと思いがちです)。

家族みんながホッとする場が、家庭であるべきです。とくに入試の直前期には、子どものそばにいて、勉強だけでなく健康管理でもヘトヘトなお母さんをお父さんがしっかり支えることで、お子さんのメンタルも安定します。

ちなみに、この項目では便宜上、一般的な父親・母親の役割で分けていますが、子どものそばにいる時間が多い人(ここではお母さんと仮定しています)のほうが物理的にも精神的にも大変だという前提で話を進めています。

休みの日には、博物館や科学館に行くなど、机上での勉強以外の体験を、お父さんが企画するのもよいでしょう。そして、どこかに子どもを連れ出すときは、お父さん自身がおもしろがることが大切です。子どもが博物館をまわっているのに、お父さんが座ってスマホをいじっているというのは、好奇心も楽しさも半減してしまいます。どんなことでも学びの入り口になるので、その瞬間を大切にしてください。

会話する父と子

また、仕事で忙しいお父さんのほうが、一歩引いた視点で物事を見ることができ、客観的な判断ができることもあります。

医療の分野ではセカンドオピニオンが大切だとされますが、受験でも、お母さんとは別の視点を持ったお父さんの意見をすり合わせることで、大きく失敗することが少なくなります。

世の中の厳しさを日夜感じているお父さんであれば「中学受験での成功と社会の成功に因果関係などない」「学歴よりももっと大事なものがある」「能力が高いだけの人よりも一生懸命な人が勝つ」という言葉にも、重みが出てきます。日々、目先のことに追われたり、将来のためのことを考えられなくなったりする事態から脱却できます。

一生懸命になるあまり、子どもの成績が自分への評価であるかのように考えてしまうのが中学受験の怖さです。過去にも、保護者にプレッシャーがかかってまわりが見えなくなるケースには、成績が伸びない子どもを追い詰めるように「勉強の量」で対処しようとする共通点がありました。

お母さんは塾にお迎えに行って貼り出される成績表を見るなど、つい他の子と自分の子を比較したり、子どもの成績の上下に一喜一憂したりしてしまう、ということが起こりがちです。お父さんは、家族みんなが安心して受験に向かえるように状況を冷静に整理してください。

祖父母との協力体制をどう作る?

祖父との会話で反省……

頭を抱える母親

6年生のゴールデンウィークに、最後のチャンスだと思って帰省しました。そこでの、祖父の何気ない言葉。

「小学生のうちから、こんなに大変な思いをさせなくていいんじゃないの?」
「昔は、○○中なんてできない子が行く学校だったんだけどな」
「公立の○○高校はすごいところだぞ」

本人がそれを聞き、落ち込んでしまいました。事前に、今の中学受験の状況を説明しておけばよかったと反省しました。

祖父母の時代とは、中学受験のあり方も、学校の難度もまったく違います。しかし、孫がかわいくて大事だと思うゆえに出てしまった言葉だと思うと、この祖父を責めることもできません。

「シックス・ポケット」として祖父母にも教育費の負担をしてもらうケースもあります。最低限の子ども(孫)の状況を共有しておきましょう。また、祖父母と同居している場合は、逆に「全員で応援する体制」になりすぎると子どもの逃げ場がなくなるので、役割分担を決めておくことをおすすめします。

祖父母の「孫に対する無償の愛」は、子どもの精神面の安定のためにも大変重要です。祖父母は入試にあまり深入りせずに、ひたすらあたたかい目で応援してもらうのがよいのではないでしょうか。

祖父母との会話が息抜きに

受験期間は忙しくてなかなか帰省ができませんでしたが、オンラインでおじいちゃんとおばあちゃんと話す機会を作ったのがよかったようです。

毎日顔をつき合わせる家族だけと話していると息が詰まってしまうので、ほっとする時間が取れたようです。

兄弟・姉妹は応援団に徹してもらう

虫眼鏡で観察する男の子たち

中学受験生活では、当然、一緒に暮らす兄弟・姉妹の生活にも影響が出ます。

「弟が勉強しているときは、テレビのボリュームを下げていた」
「入試前、受験を控える子のために、家族全員で体調管理に気をつけた」
「今年は兄が受験だから、正月の里帰りも我慢して一丸となってがんばった」
などの話を聞くと、「絶対に合格させねば」と、講師としても気合いが入ります。

受験が終わったあとに、みんなで家族旅行をするのを楽しみにしていたという話も聞きました。

姉の優しさに気づけたとき

姉も中学受験の経験者だったので、いろいろ口出しをしてきて、うるさくてしょうがなかったです。家の中に母親が2人いるようで、イライラすることもありました。

でも、姉はぼくの受験のために、「外食や家族旅行は、受験が終わるまで我慢していいよ」と言ったり、好きな音楽もヘッドフォンをつけて勉強の邪魔にならないようにしたりと、実は優しかったんだなあと気づいたときはうれしかったです。こっそり、神社にお参りにも行ってくれていました。

中学受験経験者は、弟妹になんとか頑張ってほしいあまりに、つい口出しをしてしまうことがあります。しかも、自分が受験生のときにはできていなかったであろうことも「漢字は毎日やるべきだ」「模試の復習はしっかりしないとダメじゃないか」などと、結構細かいところを偉そうについてきます。中学校・高校で部活動をやっている場合は、先輩として後輩を教える癖がついているからかもしれません。

しかし、同じ苦労をした経験者として応援団に徹してくれれば、これほど心強いことはありません。

「正解主義」ではなく「修正主義」で向き合う

勉強をする男女

「がんばれと言ったのも、がんばらなくていいよと言ったのもあなたでした」

これは、中学受験を見事に表した言葉です。

保護者のみなさんは、がんばって成功してほしいという気持ちと、こんなに大変ならやめさせたほうがよいのでは、という気持ちの葛藤の中で日々を過ごしているのではないでしょうか。

「がんばってほしい」も、「がんばらなくていい」も、どちらもその状況においては正解です。この本の中にも、いろいろな事例が登場するため、ときには矛盾していると思うこともあるかもしれません。。しかしそれは、絶対的に正しい方法論などはなく、むしろ葛藤の中にこそ正解があることの表れともいえます。

男の子

本稿では「子どもをプラス思考でとらえる」というスタンスで筆を進めています。

しかし、ほめてばかりでは成功しないかもしれないし、ほめることにより油断して失敗することだって、ないとは限りません。

逆に、叱ったほうが成功するかもしれませんし、叱ることでモチベーションをなくして失敗することも当然あるでしょう。自分の子どもがどちらのタイプに近いか、今はどちらの手法を選んだほうがいいか、と常に探るスタンスでいることが大切です。

それには、ほめてみたり、ときには叱ってみたりして、子どもの反応を観察し、また結果を分析してみてください。子どもは千差万別ですし、時期によって、受け止め方も変わってきます。

まとめると、「正解主義」ではなく「修正主義」でいくことです。そのためにも、子どもとは密にコミュニケーションをとることをおすすめします。

渋田隆之

国語専門塾の中学受験PREX代表、教育コンサルタント・学習アドバイザー。 
神奈川大手学習塾で中学受験部門を立ち上げ、責任者として20年携わる。 
同部門は、オリコン顧客満足度ランキングで、2010年度・2011年度の2年連続で全国1位を獲得。 
毎年、塾に通う受験生全員と生徒面談を実施。保護者向けにも、ガイダンス、進路面談・カウンセリングを担当し、これまで関わった人数は2万人以上。一人ひとりの個性や、置かれた環境に寄り添ったアドバイスに定評があり、生徒・保護者から絶大な信頼を寄せられている。 
保護者向けの講演会は年に80回以上。日々の思いを綴るブログ「中学受験熱血応援談」は年間100万件以上のアクセスを獲得している。 
2022年7月に中学受験PREXを立ち上げ、現在も継続して中学受験の最前線に立ち続ける。国内最大の受験人数を誇る首都圏模試センターの中学受験サポーターも歴任し、中学校と受験生の橋渡しとなる情報提供を日々行っている。

X:@takayukishibuta

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などなど、受験をするか迷っている人にも、塾に通っている人にも役立つ!
著者の教え子とその保護者のエピソードも満載です。