中学受験塾で見えた「志望校に合格できた親子」の共通点

石田勝紀
2024.04.22 11:25 2024.04.12 07:00

勉強する男の子

子どもの成績は、実は自分で無意識のうちに決めている「ゾーン(レベル)」の結果によるものだそう。つまり、オール2の子は「オール2のゾーン」を、オール5の子は「オール5のゾーン」を自ら選んでいるのです。

志望校に受かる子がやっている「ゾーンの自己決定」について、教育評論家の石田勝紀さんに解説していただきました。


※本稿は、石田勝紀著『中学受験に合格する親子の「魔法の会話」』(PHP研究所)から一部抜粋・編集したものです。

志望校に合格する子ができている「あること」

学校の教室

志望校に合格する子は、勉強をたくさんするとか、塾に行く以前に、あることができている子が圧倒的に多いのです。

しかし、この超重要なことは一般には語られません。なぜ語られないのか謎ですが、ここが固まると受験のみならず、自分の人生を思い通りに選択できるようになります。「これまで数々の子どもたちの成績を上げてきたノウハウは何ですか?」と聞かれたならば、それはこれからお話することだと答えます。それは、

「どのゾーンで行きたいかを決める」

ということを子どもたちにさせてきたことなのです。

わかりやすく5段階評価でいえば、「あなたは、1~5のどのゾーンで行きたいか?」ということです。オール2のゾーンか、オール3なのか、オール5(これらは大方の目安です)なのか、「5つのゾーンのうち、いずれのゾーンを取るのか?」ということです。

子どもは自分で自分の「ゾーン」を決めている

勉強する子ども

このような質問をすると子どもたちは「?」となります。今まで聞いたことのない話なので、驚くのです。続けて私は次のように言います。

「オール1のゾーンもオール2のゾーンも悪くない。どのゾーンを選ぼうがそこには、良い悪いというものはない。それぞれ、ひとつの生き方なので。だからオール1の成績であろうが、それは自分が1で行くと決めたのだから、それはそれでいいのである。

しかし、ひとつだけ重要なことがある。それは、自分よりも上のコースを歩んでいる人を『羨うらやましがったり、嫉妬したりしてはいけない』ということだよ。自分でそのコースを選んでおきながら、羨ましがるというのはおかしいだろう」

「自分でそのコースを選んだ」と言うと、「いや、自分では選んでいない」と子どもは言うかもしれません。

しかし、実際は”選んでいる”のです。その証拠に、もしオール4のコースやオール5のコースを選択したなら、それなりの勉強をするはずなのです。それを、勉強しない、宿題をやらない、テスト勉強をしないということであれば、明らかに自分でそのゾーンを”選択”しているのです。

これは非常に重要なことなので、「中学生の勉強法」という講座ではいつも話をします。もちろん、中学受験をする子どもたちにも話をします。

大切なのは、自分の選択に納得していること

考える小学生

子どもたちは、本音では、勉強はできないよりはできたほうがいいと思っています。

しかし、いつしか、自分は”このゾーン”と無意識に決めてしまっており、それなりの、態度、勉強しかしないようになっていくのです。もちろん、自己選択の結果、今の自分があるということに、本人は気づいていません。それをまずは気づかせてあげることが必要なのです。

先ほど述べたように、私は、別にオール2やオール3が、悪いとは思っていません。オール1のゾーンでもその後の人生を謳おう歌かし大成功された方もいらっしゃいますし、英語もできず、学校の勉強もできなかったが、海外で成功された方も知っています。たかだか、学校のかぎられた教科の成績ぐらいで人としての価値が決まったり、人生が決まったりするものではありません。

しかし、一番よくないことが、「羨望」「妬み」といった負の感情を持つということなのです。それがあると、自己選択した価値あるゾーンでなくなっていきます。ですから、「自分が選んだそのゾーンに本音で満足しているのであれば、問題ない」というのが、私の考えです。

子ども自身が本気で決心することが大切

勉強をする男女

このような話をすると、多くの子どもたちは、できるものなら、違うゾーン(成績における上のコース)へ行きたいと言います。それに対して私は、

「もちろん行くことができる!」と返答します。

しかしそのためには、まず、「どのゾーンで行くかを決めなければいけない」と言います。

現在、オール2の子はオール3にしたいと言い、オール3の子はオール4にしたいと言います。ここでようやくスタートラインに立ったことになります。この決心ができたあと、私は、続けて次のような質問をします。

「それ、本気?」

「そのためには、〇〇ぐらい勉強しなければならないけど、それでも本気で行く?」

本気で決心が固まっていない子は、考え込んだり、「できれば行きたい」という曖昧な返答をしてきます。

そのような状態であれば、まだ本気ではない段階なので、今後、途中であきらめてしまうことでしょう。ですから、このやりとりを、「本気で決めた」と言える状況になるまで繰り返します。ここが確定するとあとの成長が早いのです。

志望校に受かる親子の会話術

勉強する親子

さて、私は子どもたちをこのように指導してきましたが、ご家庭においては、どうすればいいのかということですが、次のようなステップでお話をされるとよいでしょう。

1.「今の自分の成績は、自分で”あらかじめ決めた“結果である」ということを認識させる。

2.しかし、自分で選択を変える決心をすることで、ゾーン(合格できる学校)が変わるようである(もし、お話をされる保護者の方が、この考え方に信念がある場合は、「変わる!」と断定形で話されてもいいですが、そうでない場合は、伝聞的に「そう言われている」と語ってもいいでしょう)。

3.「その選択したゾーン(一般的に今よりも上のゾーンになる)で行くには、もちろん『勉強する、授業態度をしっかりする、宿題などの提出物をしっかり出す』という当たり前のことをやるようになるが、それでもそのゾーンを本気で選択する?」と確認する。

4.ゾーンは親が決めるのではなく、子どもが決めるものです。親の欲によって子どもをコントロールしようとすると、その後、失敗をしたときには親の責任にしてくる可能性もあります。自己決定、自己責任を中学受験という場を通じて、教えていくことも大切なことだと思います。

ですから、仮に、子どもが現状のゾーンのままでいいという選択肢もあります。その場合は、今後決して、自分より上のゾーンを行く人に対して、羨ましがったり、妬んだりはしないように。自分のことを卑下したり、他人に対して不平不満を漏もらしてはいけない。なぜなら、自分で選択したことなのだから、と伝えるといいでしょう。

石田勝紀

教育評論家。20歳で起業し、学習塾を創業。その後、中高一貫私立学校の常務理事に就任し、大規模な経営改革を実行するとともに教師の指導力を高める。講演会や企業での研修会は毎年150回以上にのぼる。教育デザインラボ代表理事、都留文科大学特任教授。

公式サイト:https://www.ishida.online
公式ブログ:http://s.ameblo.jp/edu-design

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