やさしい子が「陰キャ」の一言で傷つけられてしまう時 親がしてあげられること

吉田美智子
2024.06.28 14:50 2024.07.11 11:40

後ろ姿の小学生
元スクールカウンセラーで2000人以上の親子の悩みを解決してきた吉田美智子さんは、内向的な子には長所が多くあり、その力を伸ばす方法を伝えています。

本記事では吉田さんの著書『声かけで伸ばす内向的な子のすごい力』より、内向型の性格の子が抱えがちな問題について「芯が強く個性的な内向型」と「環境感受性が高いHSC型」のケース別に親の対応方法を解説した一節を紹介します。

※本記事は、吉田美智子著『声かけで伸ばす内向的な子のすごい力』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より一部抜粋・編集したものです

「陽キャ」「陰キャ」で二分されてしまう

廊下を歩く小学生の集団
子どもの意地悪は年齢によりその理由や質が異なります。まずはその違いについて説明します。小学校低学年までは、子どもたちはまだ自己中心的で、それぞれが思いのままにふるまいます。

その自己中心性であったり、意地悪をしたときの相手の反応がおもしろいからという単純な理由で嫌がらせをすることがあります。だから、意地悪されたら「やめて」と言うように、子どもに伝えることが大事です。

何が悪いことなのかわかっていない場合があるので、してはいけないことを大人が教えることも必要です。注意されてもすぐに直せないときもありますが、よくない行動をしたときに、その都度注意喚起してください。

小学3、4年生になると、自分の言動が相手にどう受け取られるかがわかるようになり、自分の行動をコントロールするようになります。ただ、コントロールできる子とできない子が混在しているためトラブルが発生しやすい時期です。

行動をコントロールできない子に対する周りの目が厳しくなって、批判されることが増えるとフラストレーションが高まり、ますます不適切な行動をする悪循環につながることもあります。もし子どもが意地悪をしてしまうようなら、家では我慢させず、ストレス発散できるようにしてあげましょう。

このように小学校中学年くらいまでは、子どもの成長過程で自然と生じるトラブルが多く、それは次の4つで対応できます。

①嫌なことは嫌と言うように子どもへ伝える
②大人が行動を注意する
③意地悪の理由を大人が解説する
④子どもが傷ついたときは話を聞いて慰める

小学校高学年以降の思春期に入ると、環境にもよりますが、陰湿化した意地悪が増えます。

「陽キャ」「陰キャ」のように性格を二分する考えもでてきます。内向型やHSC型は、「陰キャ」と言われてしまうことがあるかもしれません。子どもの性質をネガティブなものだととらえた意地悪が起きたときには、どのような対応ができるでしょうか。

内向型の場合・子どものいいところを一緒に考える

小学生と両親の食卓

子どものいいところを一緒に考える自分の内向的な性質を「陰キャ」という言葉で否定されると、子どもは悲しい気持ちになりますし、親も暗い気持ちになるでしょう。

子どもの傷つきを、親は悲しい気持ちになりつつも冷静な態度で受けとめる必要があります。子どもと一緒に、子どもの性質について振り返ってみてください。誠実で個性的で人に流されず、人の悪口を言わず、努力する。

たくさんの長所があるよね。そんなあなたを暗いとからかうのは、不当だと思う。気にせずに、これまで通りのあなたでいればいいよ。だから、自信と誇りを持ち続けてほしいという親の気持ちを伝えてあげてください。

もし、子ども自身が自分を変えたいという気持ちがあるときは、どうしたいと思っているのかを聞いてみましょう。

明るくなりたい、積極的になりたい、目立ちたいなどの子どもの願いを聞いたら、そのためにできることはどんなことかを一緒に考えてみます。子どもの試みを応援しつつも、そのままのあなたでもいいよという思いも伝え続けてください。

HSC型の場合・自然や芸術に触れる機会をつくる

旅行する親子

これまでお話ししてきたように、HSC型の子どもは人のネガティブな感情をキャッチしやすく影響を受けやすいタイプです。

それを「陰キャ」と称されることは、自分が力を発揮できない場面を指しているだけに悔しさがあるでしょう。

このようなときは、悔しく悲しい気持ちを一緒に受けとめてくれる親の存在が子どもを助けます。子どもの共感力、人のために動ける優しさ、美しいものに感動する感受性など、どれも暗いと言われることではありません。他者に投げつけられた意地悪を、深く受けとめる必要はないことを親子で確認します。

傷ついた気持ちを癒やす行動として、自然や芸術に触れることもおすすめです。苦しさを忘れさせてくれたり、孤独を癒やしてくれたりして、心を回復させることができます。

また、学校とは別に子どもが自分らしくふるまえる場所を持つことも、傷ついた気持ちをやわらげてくれます。たとえば、習いごとに通う、美術館・映画館めぐりなどを子どもに提案してみましょう。

さらに、異年齢の人と関係を持てる場所もおすすめです。同学年同士は、どうしてもお互いのプレッシャーが強くなりがちですが、年上や年下との付き合いは、もっと気楽に自分を表現することができます。

吉田美智子

吉田美智子

臨床心理士・公認心理師、はこにわサロン東京・代表。外資系企業勤務、臨床心理士の資格取得。東京都・神奈川県・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年はこにわサロン東京を開室。主な技法は、ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析。子育ての相談、親子関係、トラウマケア、ストレスケア、アンガーマネジメントなどの相談に携わる。

X:@hakoniwasalon