心の土台を育てよう!心の不安定さの原因を知って、自分と人を大切にできる子に

窪田容子
2024.08.02 17:19 2024.08.15 11:50

砂遊びする親子

子どもが泣いたりぐずったりすることが多いと、親は不安になるものです。
子どもの心が不安定になる原因は何でしょうか?また、親は子どもに対してどのようなかかわり方ができるのでしょうか?

本記事では、子どもの不安の原因と特徴、そして子どもに安心感を与え心の土台を育てるための手引きとして、臨床心理士・公認心理師の窪田容子先生による解説をご紹介します。


※本稿は『PHPのびのび子育て』2020年9月号から一部抜粋・編集したものです。

子どもの不安を安心に変え、やさしさと強さを育みましょう

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「うちの子は、本当にちょっとしたことで、ぐずったり、泣いたりすることが多くて、将来が心配です……」

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「そういうことが多いと、不安になりますよね」

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「子どもは、何が原因で不安定になるんでしょうか?」

先生のアイコン

「いろいろな理由があるので、それを知って、どうすればいいのか一緒に考えてみましょう」

乳幼児期は、心の土台を形成する大切な時期です。

草原を歩く親子

親(養育者)との健全な情緒的結びつき(愛着)は、その後の子どもの心の安定や、人間関係の築き方の基礎になっていきます。

子どもは、怖いとき、不安なとき、さびしいとき、親のもとに駆け寄ってきたり、泣いて訴えたりします。抱っこして、よしよししてもらったら、怖い気持ち、不安な気持ち、さびしい気持ちがなだめられ、安心感に変わっていきます。この体験が繰り返されることで、嫌な気持ちになっても大丈夫なんだ、と子どもは感じられるようになるのです。

そうすれば、成長して嫌なことやストレスに出合ったときに、なだめてくれる人がいなくても、きっと大丈夫と思えるため、気持ちが安定していられます。

逆に、不安なときやさびしいときに、なだめてもらえなかったり、「そんなことで泣くなんて弱虫ね」「ぐずぐず言わないで!」などと怒られたりすると、不安やさびしさがふくれ上がってしまい、怒ったり泣き叫んだりして、不安定になってしまうのです。

最初に愛着を結ぶ親との良好な関わりは、困ったら助けてもらえるという人への基本的な信頼感につながります。そして、人を思いやり、やさしい気持ちを向けることへとつながっていくのです。

子どもの心が不安定になるのは、どんなとき?

どんな子どもも、気持ちが不安定になることはあります。子どもがいつもより、怒りやすかったり、泣きわめいたりするときは、何かがうまくいっていないというサインです。

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「たとえば、これらが原因として考えられます!」

環境の変化

入園入学、クラス替えなど、新しい環境に入るとき、子どもは大なり小なり不安を感じるものです。家でゆっくりお話を聞いたり、一緒にくつろいだりする時間をたくさんとれたらいいですね。そうやって不安が安心に変わるようにサポートしてあげると、子どもは新しい環境に適応しやすくなるでしょう。

叱られることの多さ

叱られてばかりであれば、子どもは親から受け入れられていないと感じ、安心できなくなってしまいます。叱る回数を減らすこともよいでしょうし、叱った後に「わかってくれたよね」「次はきっと大丈夫だよね」と、抱っこしてフォローするのもよいでしょう。叱られても、気持ちがなだめられる体験をすることが大切です。

習いごとなどの忙しさ

たくさんの習いごとや、それに伴う練習や宿題がストレスになって不安定になっていることがあります。やりたいと言って始めたことであったとしても、子どもは自分の許容量がわかっているわけではありません。何か無理しているような様子が見られた場合、子どもの気持ちを聞いて、多すぎて負担になっているようなら調整してあげましょう。

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「最近、習いごとを2つも始めて、本人は楽しそうにしていましたが、無意識にストレスを感じていたのかも……」

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「時間をとって、ゆっくり気持ちを聞いてあげるといいかもしれませんね」

年齢による心の不安定さの違いってあるの?

小学生の女の子

成長期の子どもの心は不安定です。親は、そのときそのときの子どもの心の揺れを冷静に受け止め、子どもをやさしく見守っていくことが大事です。

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「子どもの年齢によって、不安定になる原因やそのあらわれ方に違いはあるのでしょうか?」

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「生活、環境の変化、子どもの心の成長などで、心の不安定さの原因は変わってきます。そのあらわれ方も、子どもによって違いますし、成長するにつれて変わっていくことがあります」

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「うちの子は来年、小学生になるんですが、何か注意したほうがいいことはありますか?」

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「小学校に入ると、友だちや先生との関係が中心となり、気づかないうちに、子どもが悩みやストレスを抱えていることがあるので、お子さんの様子をより注意深く見てあげることが大切ですね」

3~6歳(幼児期)  甘えを十分に受け止めて

幼児期の子どもは、気持ちを言葉で表現することが上手ではありません。このため、不安やストレスがあるときに、泣く、かんしゃくを起こす、親にしがみついて離れない、怖がる、幼稚園や保育園などに行くのを嫌がるといった形で表現する場合があります。外に表わすのが苦手な子は、体調を崩すことや元気がなくなることがあります。  原因がわからない場合でも、スキンシップをとるなど、いつもより甘えさせてあげることで、安定していくことが多いです。

7~12歳(学童期)  個性を認める言葉がけを

学童期は、他者と比較される機会が増え、仲間集団の中での自分の位置づけも意識されるようになります。親が他の子と比較し、できないところばかり見て叱ってしまうと、子どもは劣等感をもち、それが心の不安定さにつながることがあります。向こう見ずな危険な行動、人や物への暴力、自傷行為なども、不安定さや自分を大切にできていないサインです。  優劣でははかれない子どもの個性を大切にとらえ、伝えることは、子どもの自己肯定感を育み、心の安定につながっていくでしょう。

やさしくて強い心を育てるために

笑う子

強い心を育むには、ストレスがあったり、嫌な気持ちになったりしても、それを抱えて乗り切っていけるという安心感がベースにあることが大切です。 やさしい心を育むには、自分だったらこんな気持ちになるから、あの子も今悲しいのだろうな、さびしいのだろうなと、自分の気持ちと照らし合わせて相手の気持ちに思いを馳せられることが必要です。

1自分の感情に蓋をさせない

強い心をもつとは、子どもが泣かない、悲しまない、怒らないということではありません。また、感情を抑えて我慢することが強い心を育むわけではないのです。

出せない感情は心に溜まる 感情を受け止めてもらえないと、自分の感情に蓋をして抑圧していきます。抑圧した感情は出口がないまま、心の奥底に溜まっていき、不安定さやイライラ、爆発という形で外に漏れだしていってしまいます。

安定した強い心を育むためには、感情を抑えて我慢するのではなく、自分の気持ちを感じて表現できることが大切です。

2子どもの気持ちを受け止める

感情を抑圧すると、自分の感情がわからなくなっていきます。そうすると、自分の感情と照らし合わせて相手の感情に気づくことができなくなり、人にやさしさを向けることが難しくなるでしょう。

人の気持ちに気づけるように 泣いているときに「悲しいよね」、怒っているときに「悔しいよね」「嫌だったんだね」と、ただその感情を受け入れ、抱っこしてギュッとしてあげましょう。今自分が感じていることや、気持ちを表現しやすくなりますし、繰り返し大切に抱えてもらうことで、自分でも自分の気持ちを大切にできるようになります。

自分の気持ちを大切に思うからこそ、周りの人の気持ちにも気づき、大切に考え、相手の力になりたいというやさしい気持ちにつながっていくのです。

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「自分の気持ちを大切にできるようになることが、大事なんですね」

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「そうなんです。だから、お母さん、お父さんは、お子さんの感情を受け入れて、いっぱい抱きしめてあげてくださいね」

窪田容子

窪田容子

フェリアン顧問
臨床心理士・公認心理師。幼稚園や学校のカウンセラーなどを経験し、心理相談機関フェリアンでカウンセリングを行なう。共著に、『今からでもできる人格の土台をつくる子育て』、『子どもにキレてしまいそうなとき』(以上、三学出版)などがある。