スキップできないのは「運動神経が悪いから」ではない…元楽天・聖澤諒さんが小学生へ教えること
東北楽天ゴールデンイーグルスのプロ野球選手として、盗塁王を獲得するなど活躍。現在は楽天イーグルスアカデミーのコーチとして子どもたちを指導する聖澤諒さん。
自身が子どもの頃には夢にも思っていなかった「自分がプロ野球選手になる」を実現させた経験から、引退後の現在は子どもたちの可能性を伸ばし育てる仕事に取り組んでいます。
そんな聖澤さんの著書より、子どものやる気を高めるコミュニケーションについて触れた一説を紹介します。(写真撮影:黒澤崇/提供:辰巳出版)
※本記事は聖澤諒著『弱小チーム出身の僕がプロ野球で活躍できた理由』(辰巳出版刊)より一部抜粋・編集したものです。
生まれつき運動神経の悪い子なんていない
スキップをさせてみると同じ側の手と足が一緒に出てしまったり、右足を上げてと言っても左足が上がってしまったりする子も多いものです。
そういうときに「僕は運動神経が悪いからできない」「僕には無理だから」とすぐに諦めてしまったり、投げやりになる子が多いと感じています。いますぐにはできなくても、小さい頃にこういった動きを繰り返しやっておくことが後々大事になってくるのに、もったいないなぁと思っています。
自分でもいろいろな本を読んで勉強していますが、小学生のうちは運動神経が良い、悪いはまだ決まっていません。自分で判断して諦めるのは早すぎるのです。生まれつき運動神経の悪い子はいないのです。
「運動神経」とは脳からの運動指令を筋肉に伝える通り道のこと。自分のイメージ通りに身体を動かせる子は「野球が上手い」「センスがある」など言われ、自分のイメージ通りに身体を動かせない子は「野球が下手」「センスがない」などと言われがちです。
ですが、たくさんの動きを経験し、たくさんのスポーツにチャレンジすることで「神経回路」を育て、運動神経を鍛えることはできるのです。だからこそ、楽天イーグルスアカデミーでは運動神経自体を高める練習もたくさん取り入れるようにしています。
頭でイメージした動きを正確に早くできるようにする。難しく言うと脳と手足の連動、協調を高める。そういうことにも力を入れています。
まずは自分の体を思い通りに動かせるようになること。それができるようになると運動神経も少しずつ良くなっていきますし、野球が上手くなるスピードも上がります。小さい子は特にそういうところからスタートしています。
「えー!できなーい」「むりー!」という子もいますが「こういう練習が大事なんだよ」「これを頑張ると野球が上手くなるんだよ」と言い聞かせながら根気強く子ども達にやらせています。
まずは良いところを探すことで、子どものやる気を伸ばす
「ここを直さないとなかなかヒットが打てないな」練習を見ていてそう思う部分があっても、すぐには言わないようにしています。悪い点を言われると子どももあまり良い気分にはならないですし、前向きな気持ちで練習に取り組みにくくなるものです。
まずはその子の良かったところを見つけて、それを伝えてから、悪いところ、直すべきところの話に入るようにしています。
「こういうところが良いよね、できてるね」そういう話をしてから「もっと良くなるためには」「ここがこう使えるようになると打球がもっと飛ぶようになるぞ」そんなふうに話すようにしています。
そうしたほうが本人のモチベーションも下がりませんし、聞く耳を持ってくれて前向きに練習に取り組んでくれる子が多いと感じています。昔とは子どもが育ってきた環境や気質も違ってきていますから、指導者も変わらないといけません。
子どもが言うことを聞かない、言ったことを子どもができないと嘆くのではなく、指導者がその子にあった指導法やかける言葉を変えていかなければいけません。
どんなに正しい技術指導をしたところで、それを子どもが理解できないと一方通行な指導になってしまって意味がありません。
弱小チーム出身の僕がプロ野球で活躍できた理由(聖澤諒、辰巳出版刊)
中学校時代の同学年のチームメイトは5名で公式戦では1 回戦コールド負け、公立高校でも同学年は2名で練習試合はほとんど勝てず…。
元東北楽天ゴールデンイーグルスの聖澤諒氏はプロ野球選手とは思えない経歴にもかかわらず、盗塁王や外野手無失策記録、WBC代表候補、そして球団初の日本一では中心選手として活躍した。本書籍はそんな聖澤氏の激レア野球人生を振り返るとともに、そこに至るまでの「考え方」に迫った一冊です。