楽天アカデミーコーチ・聖澤諒さんが見た「成長しつづける子」と「伸び悩む子」の違い

nobico編集部

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楽天イーグルスの中軸選手として、同球団のリーグ優勝や日本一へと貢献。盗塁王も獲得するなど記録に名を残す活躍を見せた聖澤諒さん。引退後の2019年より、楽天イーグルスアカデミーのベースボールスクールでコーチをされ多くの子どもたちを指導しています。

聖澤さん自身は自らのことを「非野球エリート」だったと語ります。中学・高校生の頃には、将来のプロ野球選手としての生活は想像もしていなかったそうです。そんな自身の経験からアカデミーでは子どもたちが自分自身の能力を決めつけないよう心がけていると言います。

自らのこれまでを振り返った自著『弱小チーム出身の僕がプロ野球で活躍できた理由』(辰巳出版刊)を発表したばかりの聖澤さんに、親の関わり方と子どもの成長の関係、能力が同等でもその後に伸びる子と伸びない子の違いについてお聞きしました。(写真撮影:黒澤崇/提供:辰巳出版)

「子どもの自立性を育てる」のは何歳からが最適?

――子どもの競技のにおける成長と親の関わり方には関係はあるとお考えですか?

聖澤諒(以下、聖澤):はい、確かに保護者の関わり方の違いは、子どもの成長に影響を与えます。最近の傾向として、保護者が先回りしすぎる傾向があると感じています。

子どもに考えさせる時間を与えず、保護者の方が突っ走ってしまい、「お金さえ払えば良い指導が受けられる」という考えが見受けられます。子どもたちが自ら成長する機会が少なくなってしまっているのです。

私が大学時代に出会った監督は、ヒントまで教えてくれましたが、そこからは自分で答えを導き出すという方針でした。今の教育では、正解を与えすぎてしまっている印象があります。

――子どもが自分で考えて実行する機会が減っているということですね。では、子どもが成長するために、何歳くらいから親は子どもの自立性を意識すべきでしょうか?

聖澤:5歳くらいからだと思います。保護者が子どもの泣き声を聞いてすぐに飛んでいくのではなく、少しだけ我慢して子どもに任せる姿勢も必要です。かわいいわが子を枠に閉じ込めず、外の世界を経験させることが大切です。

人見知りでも「損をしない」ために子どもに教えたいこと

――5歳で初めて集団生活を経験する子どもも多いと思います。その場合、親はどのように接するべきでしょうか?

聖澤:最初から完全に突き放すのは難しいので、段階的に進めるのが良いでしょう。楽天イーグルスアカデミーでは、保護者のみなさんにもネット越しなど、少し離れた場所で、子どもたちの状況を確認いただいています。子どもたちが自分の意思で、輪に入っていく事を見守れる環境が重要ですね。

――人見知りの子どもと社交的な子どもでは、成長に違いがありますか?

聖澤:確かに違いはあります。社交的な子どもの方が、指導をより多く受けられる傾向にあります。指導者としても、反応がある子どもにはより丁寧に教えようとしますし、理解度も確認しやすいです。一方で、人見知りな子どもは、理解度が把握しにくいため、指導が進みにくくなることがあります。

ですので、人見知りの子であったとしても、そういう場で損をしないように「挨拶と返事」の大切さを教えています。コーチから見て反応が良ければ、何で困っていて、どう指導したらよいかがわかりやすいからです。「挨拶と返事」であれば、性格に左右されずに誰でもできるようになりますから。

――なるほど。挨拶と返事はコーチがより効果的な指導をするために必要なんですね

聖澤:その通りです。もう一段階レベルを上げるのであれば、挨拶や返事に加えて一言だけでもコメントを添えられるようになると、さらにコミュニケーション力が高まります。

例えば「こんにちは、今日の天気はいいですね」といった具合です。

また、他人の失敗や指導を自分のことのように捉える姿勢も大切です。他人ごとと思わずに、自分の成長のヒントとして活用できる子どもは伸びる傾向にあります。他人とどう関わるか、自分以外のことをどう捉えられるか。そういった点が子どもの成長を分けるポイントかなと思います。

弱小チーム出身の僕がプロ野球で活躍できた理由(聖澤諒)

弱小チーム出身の僕がプロ野球で活躍できた理由(聖澤諒、辰巳出版刊)

中学校時代の同学年のチームメイトは5名で公式戦では1 回戦コールド負け、公立高校でも同学年は2名で練習試合はほとんど勝てず…。
元東北楽天ゴールデンイーグルスの聖澤諒氏はプロ野球選手とは思えない経歴にもかかわらず、盗塁王や外野手無失策記録、WBC代表候補、そして球団初の日本一では中心選手として活躍した。本書籍はそんな聖澤氏の激レア野球人生を振り返るとともに、そこに至るまでの「考え方」に迫った一冊です。