「子どもの海の事故」は釣りで多発する…『子ども版 これで死ぬ』が教える命を守るための準備

羽根田治(監修),藤原 尚雄(監修),松本 貴行(監修),山中 龍宏(監修),大武 美緒子(文)
2024.10.22 13:37 2024.10.28 11:50

海と堤防とテトラポット

※写真はイメージです

海での事故が起こるのは夏だけではありません。堤防での釣りであっても、必ずライフジャケットを装着すべき理由とは? 書籍『子ども版 これで死ぬ 』より、事故の事例と共に、子どもの命を守るための知識をご紹介します。

※本稿は書籍『子ども版 これで死ぬ』(羽根田治 監修,藤原尚雄 監修,松本貴行 監修,山中龍宏 監修,大武美緒子 文/山と渓谷社刊)より一部抜粋・編集したものです。本記事の内容は同書より基本的な情報の一部を掲載しています。より詳しい情報は同書や、専門の解説書や講習会などをご参照ください。

釣りで堤防から転落

11月下旬、徳島県で8歳の男の子が堤防から転落、父親が海から引き上げ、病院に搬送されましたが死亡しました。男の子は家族で釣りに来ていて、魚のえさになる貝を探している途中で堤防から波消しブロックの間に転落し、おぼれたとみられています。

香川県では、8月下旬に堤防に釣りをしにきていた4歳の男の子が海に転落、助けようと飛び込んだ60代祖父が、男の子を助けたあとおぼれて死亡する事故が起きています。2023年に起きた海のレジャー中の事故による死亡・行方不明者は218人(大人を含む)。そのうち、釣りをしている最中の事故による死亡・行方不明者は90人で、全体の約40%を占めています(※1)。また、12歳未満の釣りの際中の事故の92%が海への転落で、そのうち82%がライフジャケット未着用でした(死亡事故以外も含む2012~2021年海上保安庁の累計※2)。

死なないためには

釣りのときは全員がライフジャケットを

海で釣りをする女の子

※写真はイメージです

海では遊びの種類や個人の泳力、経験によって、ライフジャケットの着用をおすすめします。とくに海に転落する事故の多い釣りの場合は、たとえ通いなれた自宅近くの堤防であっても、同行者全員のライフジャケット着用が必須です。体格に合ったものを正しく装着しましょう。ライフジャケットは浮力になるほか、海に落ちたときの衝撃をやわらげ、冷たい海の中で体を保温する役割もあります。

浮き具として使えるものを確認しておく

助けようと海に飛び込むのは、泳ぎに自信がある人でも、二次災害を招くリスクが大きいので禁物です。万一、海に転落してしまった人がいたら、ペットボトル、バケツ、クーラーボックスなど浮くのを助ける補助的なものを投げ入れる方法があります。ペットボトルは中身を少し残しておくと、より遠くに飛ばすことができます。釣りざおなど長いものを差し出して助ける方法では、救助者は腹ばいになったり、固定されたものに捕まったりして、海に落ちないように気をつけます。

【著者・監修者紹介(順不同)】

大武美緒子

フリーライター・編集者。山と溪谷社で登山専門誌、ガイドブック編集に携わったのちフリーに。二児の子育て中、親子でアウトドアを楽しむ。

山中龍宏

1974年東京大学医学部卒業。1987年同大学医学部小児科講師。1989年焼津市立総合病院小児科科長。1995年こどもの城小児保健部長を経て、1999年緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。1985年、プールの排水口に吸い込まれた中学2年生女児を看取ったことから事故予防に取り組み始めた。現在、NPO法人Safe Kids Japan理事長。

松本貴行

横浜国立大学大学院教育学研究科修了。成城学園中学校高等学校保健体育科専任教諭。公益財団法人日本ライフセービング協会副理事長、教育本部長。溺水事故はレスキューよりも、いかに事故を未然に防ぐか?が最重要であると、日本で初めて水辺の安全を誰もが学べるICT教材「e-Lifesaving」を開発。内閣府消費者庁消費者安全調査委員会専門委員。

羽根田治

フリーライター、長野県山岳遭難防止アドバイザー、日本山岳会会員。山岳遭難や登山技術の記事を、山岳雑誌や書籍で発表する一方、沖縄、自然、人物などをテーマに執筆活動を続けている。

藤原尚雄

1958年大阪府出身。大雪山系の麓で、大自然に囲まれた生活を謳歌している。雑誌『Outdoor』(山と溪谷社)の編集、専門誌『カヌーライフ』の創刊編集長を務めたのち、フリーランスとしてアウトドア関連および防災関連の雑誌、書籍のライターとして活動する傍ら、消防士、海上保安官、警察機動隊員などに急流救助やロープレスキュー技術を教授するインストラクターとしても活躍中。

子ども版 これで死ぬ

『子ども版 これで死ぬ 』羽根田治(監修),藤原 尚雄(監修),松本 貴行(監修),山中 龍宏(監修),大武 美緒子(文)/山と渓谷社

ベストセラー『これで死ぬ』シリーズの第2弾!

毎年、川や海など外遊びでの子どもの事故はあとを絶ちません。
しかし、外遊び中に出会う危険は、知っていれば避けられるものが多くあります。

本書では、「お菓子を拾おうとしておぼれる」「高波にさらわれる」「ランドセルが遊具に引っかかる」 など川・海・山・身近な公園で実際に起きた子どもの事故事例28を紹介。
それぞれの場所で事故防止策・安全啓発を発信しているプロの監修のもと、どうしたら事故を防ぎ、安全に楽しむことができるかを徹底的に解説しました。

また、各章の最後には、最も重要な安全の話がつまっている漫画解説付き。 子どもと一緒に、外で安全に遊ぶ方法について学ぶことができます。