子どもの「非認知能力」を高めるほめ方・叱り方 自制心、協調性を伸ばす働きかけ

中山芳一
2024.10.29 15:09 2024.11.21 11:50

積み木で遊ぶ幼い男の子

忍耐力や自制心、協調性など、数値で表せない能力を「非認知能力」と呼びます。この「非認知能力」と切っても切り離せないのが、本人が生まれ持った気質です。

子どもの力を伸ばすために親が知っておきたいことを、中山芳一先生の著書『マンガでやさしくわかる非認知能力の伸ばし方』よりご紹介します。

※本稿は、中山芳一著『マンガでやさしくわかる非認知能力の伸ばし方』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部抜粋・編集したものです。

非認知能力の育て方について


次の図をご覧ください。

マンガでやさしくわかる非認知能力の伸ばし方

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たくさんの非認知能力を3つに分類した「自分と向き合う力」「自分を高める力」「他者とつながる力」をさまざまな場面で意識して発揮できるようになれたらよいのですが、私たちはそれ以前に「気質」というものを持ち合わせて生まれてきています。

この気質は、一人ひとりが持ち合わせている(先天的な)内面の特徴といわれるものです。そのため、どうしても小学校低学年ぐらいまでは、この気質に影響を受けまくった非認知能力になってしまいます。

たとえば、人に対して外向的な気質だと他者とつながる力が発揮されやすくなりますよね。このように、気質にともなった非認知能力の発揮のし方をする子ども時代を経て、小学校中学年以降になってくると、今度は自分の意識によって気質とは異なった非認知能力の発揮のし方ができるようになり始めます。

そうなってくると、仮に人に対して内向的な気質であったとしても、その気質に引っ張られるだけでなく、自分の意識によって他者とつながる力を伸ばそうとすることができるようになるわけです。

ということで、この先天的な気質がピラミッドの底辺に位置する「生まれながらに持っているもの」になります。

言い換えれば、それぞれの「タイプ」みたいなものですよね。ここは、先天的であるために変えることが難しいので、お子さんがどんなタイプかを知っておいていただければよいと思います。

そして、このタイプを無理に変えていく必要はないため、リフレーミングなどをしながらできるだけこのタイプを肯定してあげてくださいね(もちろん、周囲の迷惑になるような行動については、注意してストップをかける必要がありますが……)。

この底辺から上になると、先天的なものではなく、後天的なものになります。つまり、お子さんの育ちの中で変えられるものです。

たとえば、「大切にしたい考え方」は、いわゆる価値観や信念に該当するものです。
みなさんにもきっとなんらかの「大切にしたい考え方」がありますよね。

そして、この大切にしたい考え方(価値観・信念)は、生まれながらに持ち合わせているものではなく、育っていく(経験していく)中で自分以外のだれかから影響を受けて身につけていくものです。

「あきらめずに努力するべし」「何事も挑戦あるのみ」「友達を大切にしよう」などの価値観・信念を持つことで、私たちはさまざまな局面でこれらを大事にしようとする意識が働き始めます。

そのため、ここは意識のベースになっているといってもよいでしょう。だからこそ、みなさんには、ぜひお子さんへ「大切にしたい考え方」を伝えていっていただきたいと思います。

この意識のベースとなる価値観・信念のところを踏まえると、今度は今の自分と、価値観・信念から思い描く自分とを比べることができます。

つまり、自分のことを客観的に観察して、今の自分に足りないところ(足りているところ)は何か、これから何を具体的に意識すればよいのかをはっきりさせられるようになるのです。

マンガでやさしくわかる非認知能力の伸ばし方

たとえば、大らかで寛容な自分になりたいのに、今の自分はすぐにイライラしてキレやすかったら、いったい何を意識したらよいでしょうか?

忍耐力などの自分と向き合う力であったり、キレる日を少なくしていくことであったり、キレそうになったときに深呼吸をしたりを意識できるようになれるとよいですね。

このように、自分に必要な意識は、自分のことを客観的に観察でき始めているお子さんであれば自分で気づけるかもしれませんし、まだ自分だけでは難しいお子さんには、こちらから教えてあげる必要があります。

また、自分のことを客観的に観察できるようになるためには、振り返り(日記など)が効果的なのでおすすめします。

こうして、自分に必要な意識を持つことができれば、その意識を行動へ移していけるようになります。

たとえば、みんなの前であいさつが上手にできなかった子どもが、もっと気持ちのいいあいさつをしようと意識することで、あいさつを変えられるわけです。

ここで大切な点は、その行動の変化を周りにいる人たちが受け止めていることです。
だから、「最近、あの子は成長したよね」と評価されるようになります。

マンガでやさしくわかる非認知能力の伸ばし方

そのためには、頭の中にある意識だけが変わってもわからないため、そこから行動が変わっていく必要があるのです。

さらに、その行動がたった1回変わっただけでは信用に欠けてしまいます。

だからこそ、意識によって変わり始めた行動が、次第に当たり前になるぐらい続けて、習慣にしていくことが求められるのです。

もし、お子さんの行動が習慣にまで変わっていけば、その行動は周りにいる人たちからもきっと信用されることでしょう。

結果として、「最近あの子は成長したよね」と評価されるようになってくるわけです。
そのためにも、ぜひお子さんの習慣にしてほしい「よい行動」を見取ってほめてあげてください。その一方で、お子さんの習慣にしてほしくない「よくない行動」については注意してあげてください。

これこそが、ほめポイントと注意ポイントでしたよね。

このように、ピラミッド状に構造化して非認知能力の育て方についてお伝えしましたが、結局のところ、みなさんがお子さんへ働きかけたいところは、「大切にしたい考え方(価値観・信念)」「必要な意識」「習慣」になります。

みなさんが、これら3つへ働きかけることで、お子さんの意識や行動が変化し、なんらかの非認知能力を伸ばしていくことが期待できるでしょう。

中山芳一

1976 年1月、岡山県岡山市生まれ、All HEROs 合同会社 代表、IPU 環太平洋大学 特命教授、元岡山大学 准教授(教育方法学)



岡山大学教育学部卒業後、1999 年当時は岡山県内でたった一人といわれた男性の学童保育指導員として9年間従事。そこから学童保育の研究の必要性を確信して、教育方法学研究へ方向転換をする。以降は、幼児教育から学校教育まで、さまざまな教育現場で実践研究を進めるとともに、大学ではキャリア教育を中心に実践してきた。こうした経験から、「非認知能力」の大切さと育成のあり方について全国各地で提唱するようになる。2024 年8月には岡山大学を退職。日本の教育や保育を元気にしていくためのAll HEROs 合同会社の代表として、ますます精力的に活動の幅を拡げている。

マンガでやさしくわかる非認知能力の伸ばし方

マンガでやさしくわかる非認知能力の伸ばし方』(中山芳一著/日本能率協会マネジメントセンター)

2000年にノーベル賞経済学賞を受賞した、シカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授の幼児教育の研究がきっかけで注目され、日本でも2020年の教育改革の核として盛り込まれた「非認知能力」。

IQや学校のテストのように数値化できる認知能力に対し、非認知能力とは、「目標を達成するための勤勉さ」「意欲」「知的好奇心」「協調性」「自己肯定感」「表現力」など、数値では測定しにくい総合的な人間力を指します。健やかな心を育み、将来の幸せと成功につながることから、「あと伸びする力」とも言われています。

先行きが見えない現代社会では、約8割の親が「失敗しても立ち直れて成長できること」「自分の力で道を切り開けること」といった「非認知能力」の高い子に育ってほしいと願っているといます。

本書では、非認知能力について解説するとともに、マンガも交えながらわかりやすく家庭教育の中で非認知能力を高める方法を紹介します。