「赤ちゃんの背中スイッチ」実は存在しなかった? 夜泣きを減らすとっておきの方法

水野正司

授乳やミルクをあげ終えて、ようやく自分も休める…と赤ちゃんをベッドに寝かせたら、泣いて目覚めて寝かしつけのやり直し。夜泣きや”背中スイッチ”に悩まされているママやパパも多いはず。
YouTubeで日本各地の中学生・高校生に「赤ちゃん学」の授業を配信している元・教師の著者が、赤ちゃんの夜泣きに効果的なとっておきの方法をお伝えします。

※本稿は、水野正司(著)・間宮彩智(イラスト)『未来のために知っておきたい みんなの子育てスキル』(マイクロマガジン社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

水野正司
北海道教育大学函館校卒業後、北海道公立学校にて小学校教諭、中学校教頭、特別支援学級教諭を34年間にわたり歴任。現在、子育てクリエイターとして「子育てwin3計画」代表を務め、YouTube「学校Win3チャンネル」などを主宰。著書に『どの子も伸びる《ちょうどいい》叱り方』(学芸みらい社)など多数。

赤ちゃんの「夜泣き」がおさまりません。どうしたらいいでしょう?

赤ちゃんは一晩に7回くらい夢を見るといわれています。(大人は5回くらい)。
大人は睡眠が浅い時に夢を見ますが、赤ちゃんはもっと浅い――目を覚ますギリギリのレベルで夢を見ます。
この時に目を覚まして泣くのが「夜泣き」です。
でも、夜中の2時とか3時に泣き出されたら困りますよね。こういう時はどうすればよいのでしょうか?

夜泣きを減らす「基本セット」というのがあります。
(1)朝は部屋に朝日を入れる
(2)日中はたくさん活動する
(3)夜は刺激を減らす

この記事の画像(1枚)

<『未来のために知っておきたい みんなの子育てスキル』p.60より>

朝は部屋に朝日を入れてあげます。遮光カーテンを使っている場合は、カーテンを開けてあげましょう。

朝日を浴びることでメラトニンという睡眠ホルモンが夜に分泌されるように体内時計がリセットされます。

日中はハイハイをするなど、体を使った活動が大切になります。泣くのも運動ですから、泣き出した時に急いで駆け付けるのではなく、少しだけ泣く時間をとってあげることも大切です。

そして、夜は部屋の明かりを少し暗めにし、静かにしてあげると、眠る準備が整います。
しかし、それでも夜泣きを起こすことはあります。だっこしても泣きやみません!
そんな時はどうしたらいいのでしょうか?

実は、そういう時に赤ちゃんを泣きやませる《とっておきの方法》があります。それを使えば、ほとんどの赤ちゃんは泣きやみます。

赤ちゃんが泣きやむだっこのコツ

<『未来のために知っておきたい みんなの子育てスキル』P.61より>

その《とっておきの方法》とは、どんな方法だと思いますか?
ヒントは上の3枚の写真です。

この猫のお母さんも、ニホンザルのお母さんも、ライオンのお母さんも、その《とっておきの方法》を使っている瞬間の写真です。
以下のYouTubeで、赤ちゃんを泣きやませる《とっておきの方法》が紹介されています。

YouTube動画:「赤ちゃんの泣きやみと寝かしつけの科学」理化学研究所(2022)

【解説】
夜泣きで泣きやまない時の《とっておきの方法》は、だっこをするだけではなく、《だっこして移動する》という方法です。これを「輸送反応」といいます。

この「輸送反応」は、危険が迫っている時などに哺乳類のお母さんが赤ちゃんを運ぶ時に見られる反応です。

危険が迫って母親が移動を始めると、赤ちゃんは、お母さんの邪魔にならないように体を丸くしたりしながらおとなしくします。人間の赤ちゃんにもこの本能が残っていて、だっこされて移動すると、協力しておとなしくなるというわけです。

でも、ようやく眠った赤ちゃんをベッドに置こうとすると、目を覚ましてしまうことがよくあります。どのくらいよくあるかというと、3回に1回は失敗して(目を覚まして)しまいます。

これは「背中スイッチ」といわれる現象です。赤ちゃんの背中がベッドについた瞬間に目を覚ますので《赤ちゃんの背中にはスイッチがある》という考え方です。

しかし、研究(※1)の結果、実はベッドに背中がつく前の段階で赤ちゃんが反応してしまうことがわかりました。この反応は、だっこされている体(お腹)から赤ちゃんを離した瞬間に起こるのです。

「背中スイッチ」ではなく「おなかスイッチ」だった

「とっておきの方法」をまとめると、こうなります。
《だっこして(できるだけ止まらずに5分くらい)歩く》+《8分程度、だっこしたまま座って待つ》もちろん、その前に「夜泣きを減らす基本セット」が大切です。

それでも夜泣きを起こして、どうしても泣きやまない時には、「だっこして移動」と「おなかスイッチ」のことを思い出してください。

この「おなかスイッチ」の研究結果が発表されたのは2022年9月のことですから、それより前に子育てをされた方は、知らない方が多いと思います。

知り合いに赤ちゃんを育てている方がいらしたら、教えてあげると喜ばれるのではないでしょうか。

(※1)補足:東京工業大学の黒田公美さんが、理化学研究所に所属していた2013年4月に発表した研究成果です。


未来のために知っておきたい みんなの子育てスキル』(水野正司 (著)、間宮彩智 (イラスト)/マイクロマガジン社)

3千人以上の中高生に「赤ちゃん学」の授業をした著者が、いつか親になるかもしれない子どもたちに贈る子育ての大切な知識が詰まった一冊。もちろん、新米のパパ・ママにも役立つ情報が満載!