「おうむ返し」に落ち込んでしまう…自閉症児の親御さんに専門家が伝えたいこと

今川ホルン
2024.11.11 15:04 2024.11.25 11:50

頭を抱える母親

自閉症のお子さんの特徴として、よく例に挙げられるおうむ返し。しかし、おうむ返しはれっきとしたコミュニケーションであると、発達科学コミュニケーションマスタートレーナーの今川ホルンさんは語ります。

自身も自閉症児の母である今川ホルンさんが、子どものおうむ返しに落ち込むママ・パパに伝えたいこととは?著書より抜粋してご紹介します。


※本記事は、今川ホルン著『脳を育てれば会話力がみるみる伸びる! ことばが遅い自閉症児のおうち療育』(パステル出版)より、一部を抜粋編集したものです

子どものおうむ返しに困っています

手をつなぐ親子

NG対応…おうむ返しに一喜一憂する

おうむ返し=自閉症というイメージが強いせいか、わが子がおうむ返しをするたびに落ち込んでしまう親御さんがよくいらっしゃいます。しかし、本当に困っているのは、お子さんのおうむ返しなのでしょうか?

確かに、表に見えるお悩みは、子どもがおうむ返しばかりで会話が成立しないことです。しかし本当の問題は、親がわが子に「自閉症の〇〇君」というレッテルを貼ってしまっていることかもしれません。

想像してみてください。もし、あなたががんを患い、周囲から「がん患者の〇〇さん」と呼ばれたら、あなたやご家族はどう思うでしょう。たまたま患った病気の名前を代名詞にされるなんて、あまりにも悲しくて寂しいことです。自閉症も同じです。決してお子さんの代名詞ではありません。ありのままのお子さんを受けとめてあげましょう。

OK対応…肯定的に受けとめる

おうむ返しはれっきとしたコミュニケーションです。

ママの「プール入ったの?」という声かけに「プール入ったの?」とことばで反応するのは、実はすごいことなのです。ママやパパのことばを聞いて、ことばを返す―、これは子どもがコミュニケーションをとろうとしていることに他ならないからです。

自閉症の子は、約80%が知的障害を併発するとされています。おうむ返しをするお子さんは、脳が未熟で質問の内容や、場合によっては質問されていること自体わからず、ただことばを繰り返しているだけかもしれません。

「おうむ返しは自閉症っぽくて嫌だ!」と落ち込まず、まずお子さんが大人と同等のことばを聞き、覚え、正確にことばを再現して発していることを褒めてあげてください。褒めると会話力が伸びます。

おうむ返しをする子に「ことばを話してくれてありがとう」と言いましょう。これは嘘でもおだてでもありません。いまは返すことばが思いつかなくても、褒めてことばのキャッチボールを繰り返すことで、子どもは自然と会話の練習をしているのだと理解しておきましょう。

今川ホルン

発達科学コミュニケーションマスタートレーナー。
帝京大学大学院修了。臨床心理学修士。公認心理師。株式会社ここから発達らぼ代表。
自閉症の長女を含む3児の母。埼玉県の病院で臨床心理士として働く中で長女を出産し、長女の自閉症の診断をきっかけに児童発達支援事業所に勤務する。その後、発達科学コミュニケーションに出会い「家での親の声かけ」が自閉症の子を伸ばしていくと確信。発達科学コミュニケーションのマスタートレーナーとして活動する。
わが子のことばの遅れに悩むママやパパに対し、子どものことばを伸ばすおうち療育『自閉症専用3カ月おしゃべり上達メソッド』を教えるとともに、トレーナーを育成している。

Instagram:@horn.imakawa

脳を育てれば会話力がみるみる伸びる! ことばが遅い自閉症児のおうち療育

脳を育てれば会話力がみるみる伸びる! ことばが遅い自閉症児のおうち療育』(今川ホルン著,パステル出版)

「うちの子もうしゃべれないのかな…」と諦めているママやパパへ
7組の親子のお悩み解決ストーリーと本当に効果のあった声かけを紹介!