実は、思春期の子どもの心を傷つけている「親の4つのNG行動」

舩渡川智之(監修)
2024.12.16 13:28 2024.12.09 11:50

息子を見つめる母親

思春期の子どものうつ病が増加傾向にあります。そんな中で、抑うつ・不安が強い子を守るために、親が普段の会話で気を付けるべきポイントとは? 児童精神科医の舩渡川智之さん監修の書籍『思春期の子の「うつ」がわかる本 SOSサインの見極め方と適切な接し方』より解説します。

※本稿は、舩渡川智之著『思春期の子の「うつ」がわかる本 SOSサインの見極め方と適切な接し方』(大和出版)の一部を再編集したものです。

日常的な会話のやりとりはありますか?

悩みを抱える女の子

・ポジティブな言葉で関係性を変える
思春期は、親に対して距離を置きたがる時期です。でも、親がコミュニケーションを諦めてはいけません。子どもに無関心になったり、無視したりしたくなる気持ちは分かりますが、ポジティブな表現を心がけつつ声掛けを続けるようにしましょう。

・直接対話以外の声掛けも検討
直接の会話が減りがちなら、LINEなどを通じて声掛けをしてみるのもよい。親子の会話のチャンネルが増える。子どもにとってはかえって話しやすいことも。

ポジティブ声掛けリスト

空を見上げる高校生

家族でポジティブなひと言! 声掛けで家庭環境もよくなります。

・日常の声掛け
「おはよう」「いってらっしゃい」「気をつけて」「今日は~な日だね」「いってきます」「おかえり」「お疲れさま」「待っていたよ」「お茶いれたよ」「ごはん食べよう」「お風呂わいたよ」 など

・感謝の声掛け
「ありがとう」「うれしい」「楽しいね」「助かったよ」「いてくれるから安心だよ」など

・ほめの声掛け
「すごいね」「やったね」「さすがだね」「がんばったね」「上手だね」「あなたならではだね」「もうかなわないな」「うまくなったね」「えらいね」 など

親御さん自身が不平不満・不安を抱えていませんか?

落ち込む女子高校生

・否定的な言動には注意
子どもが周囲とうまくいかなかったり問題を抱えたりすると、親御さんもつい周囲に批判的になりがちです。子どもの目線を理解することは大切ですが、親御さんが学校や友だちを値踏みしたり、一緒に不平不満を言ったりするのはやめましょう。ネガティブな影響しかありません。

・親御さん自身の心のケアが大事
子どもにとって家庭はストレスを癒やし、安心して過ごせる場でなくてはなりません。親御さんがお子さんに同調したり、感情的になったりすると、ストレスを与えてしまいます。

親御さんはケアをする側です。ケアするご自身の心の安定が大切です。趣味や外出などで上手に気分転換することを心がけてください。また、心配ごとは家族だけで解決しようとせず、相談できるサポーターをつくっておきましょう。

――子どもの前でこんなことは避けて!――

●子どもの前で親自身が不平不満ばかり言っている
親のネガティブな言動を日常的に見せられると、自然と模倣し、ものごとをネガティブに捉えやすくなる。家庭内の雰囲気もわるくなり、緊張し、不安を抱きやすくなる。

●先生の批判ばかりしている
批判することは大切。だが、学校はサービス産業ではない。消費者的な視点でクレームをつけていると、子どもも学校に不信感を抱くようになる。学校生活や学習への態度が消極的になる。

●友だちや友だちの家庭を値踏みしている
思春期の子どもにとって、同世代の友だちは重要な存在。友だちや友だちの家庭にランクをつけて値踏みし、誰とつき合うべきかを選別するのは、子どもを傷つける行為。また子ども自身が差別的に人を値踏みするようになる恐れも。

●友だちをつくることを過度に促している
子どもは社交的であることに不必要なプレッシャーを感じる。孤立感を強めたり、無理に友だちをつくろうとしたりしてストレスを感じる。また、内向的な性格の子にとっては、自己否定の気持ちが強まってしまう。

舩渡川智之

栃木県出身。2004年山形大学医学部医学科卒業。2年間の初期臨床研修を経て、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室に入局。同医局の関連病院等での研修の後、東邦大学医学部精神神経医学講座の助教に就任。以来、東邦大学医療センター大森病院メンタルヘルスセンターにて一般精神科臨床の傍ら、児童精神科医として臨床、精神病の予防・回復のためのデイケアの診療にも携わる。児童精神医学、学校精神医学、予防精神医学、精神科リハビリテーションが専門。