子どもの国語力を左右する「遺伝より大切なもの」 苦手意識は解消できる

中本順也
2024.12.10 09:56 2024.12.17 11:50

鉛筆を手に勉強する男の子

「国語が苦手」と思っている人は多いかもしれません。「国語の点数が低い」、「読書をしない」…「国語が苦手」にもいろいろありますが、国語力を身につけるにはどうしたらいいのでしょうか。

どんなことを意識すれば国語力が伸びていくのか、すばる進学セミナー代表/かまくら国語塾主宰の中本順也著『おうちでできる子どもの国語力の伸ばし方』から紹介します。

※本稿は、中本順也著『おうちでできる子どもの国語力の伸ばし方』(かんき出版)から一部抜粋・編集したものです。

成長と共に国語力は身につく

読書をする小学生

この本を読んでくださっている方の中には、「うちの子は国語が苦手だから……」と思っている方もいらっしゃると思います。

でも、「国語が苦手」にもいろいろとありますよね。

私自身、生徒や保護者によく相談されますので、ちょっと挙げてみます。

・ほかの教科に比べて国語の点数が低い
・語彙が少ない
・読解力がない
・読書をしない
・文章を書くのが下手
・漢字が書けない、読めない
・話していることが回りくどかったり、長かったりしてよくわからない
・話が通じない

いくつか当てはまりますでしょうか?

こういった不安があるからこそ、本書を手に取っていただいているかと思います。すでにいろいろな取り組みや勉強法を試されている方もいらっしゃるでしょう。

でも、ご心配は無用です。

小学校のときは点数が取れなかった学校や塾の国語のテスト、大人になってから見たらさすがに簡単に思えませんか。

もちろん、入試問題などでは大人もうなるような難しい出題もありますが、少なくとも子どもだったときよりは、今のほうが解けるはずです。

誰しもが成長と共に国語力を身につけていくのだということがわかります。

経験値が増えれば伸び率も上がる

生きるという経験の中でも自然と国語力は高まっていくわけですから、意識的に経験値を増やせば、それだけ国語力は伸びていくということです。

家庭での取り組みは、子どもの経験値を増やすことにつながります。

今は苦手でも、これまで国語力を伸ばそうと取り組んできたことのすべては、少なからず子どもの国語力を伸ばすことにつながっています。

もっと言えば、「うちの子は国語が苦手」という意識をお持ちいただくだけでも、国語力向上の第一歩を踏み出しています。

本書でも、子ども1人ひとりにフィットする“国語力を高める取り組み“を発見するお手伝いができればと思います。

一方で、「入試」というタイムリミットがあるものに関しては、いかに早回しで、それでいて深い国語力を身につけていくかということが必要になってきます。

中学受験の国語は、人の気持ちを理解することや相手の言いたいことをつかむ力が重要になりますから、経験の数とペースを早めてあげることが必要です。

「聞く・話す・読む・書く」に触れる環境を家庭でどう作っていくか、また、それを中学受験に当てはめて考えたとしたら、どのレベルまでやっていくとよさそうかについてもお伝えします。

国語力は「遺伝」より「環境」

勉強する親子

この章の最後にもうひとつ。

「お母さんもずっと国語が苦手だったから、あなたも国語が苦手なのね」そう思われたこと、言ってしまったことはありませんか。

我が子が過去の自分と同じような間違いをしていたり、似たようなつまずきをしているところを目にしたりすると、ついそう思ってしまいます。

たしかに、人間が持っているさまざまな能力や資質は遺伝することがあります。

「お母さんは文系だから」「お父さんは理系だから」という言葉もよく耳にします。

でも、ご安心ください。国語力はほとんど遺伝しません。

双子を比較して環境と遺伝を研究する行動遺伝学で有名な慶應義塾大学の安藤寿康教授によると、言語性知能(言葉を使った思考力や表現力国語力)に関しては、遺伝の影響がわずか15%程度。それに対して、家庭環境の影響は60%弱と非常に大きくなっていると説明されています。

また、学校などの環境よりも家庭環境のほうがより影響力があるというデータも紹介されています。

※安藤寿康『遺伝マインド –遺伝子が織り成す行動と文化』有斐閣Insight

数的処理の能力や音楽的センスの90%が遺伝によって決まるというデータと比べると、いかに言語(言葉)の力が環境によって左右されているかがわかります。

逆に言えば、国語力は環境によって向上する可能性が十分にあるということです。

遺伝ではなく、環境。

言語(言葉)のを整えていけば、「国語が苦手」の遺伝を乗り越えることができるのです。

ただ、「はじめに」でも書いたように、「家庭で育む国語力がすべてを決める」と背負い込む必要はありません。

まずは、肩の力を抜いて国語力についてなんとなく知っておくこと。

そして、本書の中に記されているような取り組み方が、ひとつの選択肢としてあることをわかっていただくだけで、家庭環境づくりの第一歩はクリアです。

中本順也

1981年生まれ。すばる進学セミナー代表/かまくら国語塾主宰。3児の父。
慶應義塾大学文学部国文学科を卒業後、メーカーでマーケティングや営業に従事。その後、神奈川県鎌倉市にある「すばる進学セミナー」で子どもたちの中学受験・高校受験の進学指導や国語学習をサポートしながら、2020年には小学生のための小説創作教室「かまくら国語塾」も設立。小説家を招いたり、オリジナル作品集を作成したりするなど、言葉を編む楽しみを一緒に探していく空間を提供している。
幼少期をオランダ・アムステルダムで過ごし、サッカーのとりこに。自身もプレーを続けながら、地元逗子市の少年サッカークラブではカメラマン兼コーチも務めている。大事にしている言葉は、「柳は緑、花は紅」「アイデアいっぱいの人は深刻化しない」。

X:@nkmt0418

おうちでできる子どもの国語力の伸ばし方

おうちでできる子どもの国語力の伸ばし方』(中本順也著/かんき出版)

「うちの子は国語力がない……」
そんなふうにお悩みの保護者の方へ。
本書は、未就学~小学生を対象とした、おうちで国語力を伸ばすための本です。