眼科医が教える「赤ちゃんの視力の発達のために親にできること」

吉澤恵理

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赤ちゃんの目は生まれてから1歳までに急速に成長します。この時期の赤ちゃんは、周囲の世界をどのように見ているのでしょうか?また、視力や脳の発達を助けるために、保護者が知っておくべきポイントとは?今回は、ルクスアイクリニック代々木上原院長、河本立徳先生にお話を伺い、赤ちゃんの目の発達について詳しく教えていただきました。(取材・文/吉澤恵理)

赤ちゃんが好きな色で発達をうながす

――生後間もない赤ちゃんは、どの程度視覚的な刺激に反応し、どれくらい見えているのでしょうか?

河本先生: 生まれたばかりの赤ちゃんの視力は0.01〜0.02程度と、とても低いです。この段階では、見える色は黒・白・グレーだけで、まだはっきりとした形は認識できません。ただし、光を感じる能力はお腹の中にいる間に発達しているため、光に反応したり、目の前で物が動くと暗く感じて目を閉じることはできます。これは視覚の基本的な反応で、外の世界を感じ取る赤ちゃんの最初のステップです。

赤ちゃんの顔に優しく話しかけたり、明るい窓辺で抱っこしたりして、光や音の変化を体験させましょう。

――赤ちゃんが「追視」を始める時期とその重要性について教えてください。

河本先生: 「追視」とは、目の前で動くものを目で追いかける行動のことです。生まれてすぐに始まりますが、最初は視力がまだ低いため、動きはゆっくりです。生後2ヶ月頃になると視力と脳の発達が進み、目の動きがスムーズになり、はっきり追いかけているのがわかるようになります。追視は、赤ちゃんが周りの情報を積極的に取り込もうとする成長の証と言えます。

おもちゃをゆっくりと動かして見せたり、顔を左右に動かして赤ちゃんが目で追う練習をするのがおすすめです。

――赤ちゃんが特定の色や形に興味を持つのはなぜでしょうか?

河本先生: 新生児は、特定のパターンやコントラストのはっきりしたものを好む傾向があります。例えば、縞模様や濃い色の境目などがその例です。これは1960年代に発達心理学者ファンツが研究で発見したもので、赤ちゃんが外の世界に興味を持ち始めているサインと考えられます。また、生まれてすぐの赤ちゃんでも人の顔を他のものと区別して特別に認識しています。これらは赤ちゃんが生き抜くために備わった本能的な性質ともいえるでしょう。

白黒の模様やコントラストの強い絵本を見せて、視覚的な刺激を与えましょう。顔を近づけて話しかけることも効果的です。

子どもと目が合わないことが気になったら

――「目が合わない」「視線が定まらない」といった場合、どのような影響がありますか?

河本先生: 赤ちゃんは生後3ヶ月くらいで目で物を追ったり、親の顔を見つめたりするようになります。視線がなかなか定まらない場合、斜視や先天性の白内障などの可能性があります。特に瞳が白っぽく見える場合は、重大な病気のサインかもしれません。早めに専門医に相談してください。

生後3ヶ月以降、目が合うように呼びかけたり、おもちゃを使って視線を誘導してあげましょう。異変を感じたら医師に相談を。

――赤ちゃんが目をこする、まぶしそうにする場合、何が考えられますか?

河本先生: 赤ちゃんは大人に比べて光に敏感なので、特に問題がなくても眩しそうにすることがあります。ただし、頻繁に目をこする場合、先天性緑内障や逆さまつ毛で目に傷がついている可能性もあります。気になる場合は、早めに眼科で診てもらうことをお勧めします。

強い光を避け、室内の照明を優しくして赤ちゃんが安心できる環境を整えましょう。異変が続く場合は早めに受診を。

――赤ちゃんが特定の方向を好んで見る、または首を傾ける仕草を見せる場合、どうすればよいですか?

河本先生: 新生児期は首の筋力が弱く、自然と頭が左右どちらかに傾いていることが多いです。成長とともに首の動きがスムーズになり、生後4ヶ月頃には顔の向きも左右均等になっていきます。ただし、特定の方向ばかりを見る場合、斜頚や視力の問題が隠れていることがあります。気になる場合は、早めに医師に相談してください。


左右均等に向くよう、赤ちゃんの視線に合わせて話しかけたり、おもちゃを動かして視線を誘導してみましょう。

新生児の笑顔にはどういう意味がある?

――赤ちゃんが鏡に映った自分の姿に反応するのはなぜですか?

河本先生: 生後2〜3ヶ月頃の赤ちゃんは、自分の手をじっと見つめることがあります。これは、自分自身を認識し始める最初の行動です。鏡を見たときも同じで、鏡に映る動きを「別の誰か」として認識しながら、自分との違いを学んでいきます。鏡に映る姿が自分自身だと気づくのは、一般的に2歳頃です。このような行動を通じて、赤ちゃんは「自分」という存在を理解していきます。

鏡を使って一緒に遊んだり、赤ちゃんの動きに合わせて声をかけることで、自己認識を促しましょう。

――視覚的な刺激に対する赤ちゃんの笑顔は、どのような発達を示しているのでしょうか?

河本先生: 新生児の頃に見られる笑顔は、眠いときなどに自然に起こる「新生児微笑」と呼ばれるものです。生後1〜2ヶ月になると、周りの人の顔や声に反応して笑う「外発的微笑」が見られるようになります。そして、生後7〜8ヶ月頃には親の顔を認識して笑う「社会的微笑」に発展します。赤ちゃんとたくさん笑顔で接することは、信頼関係を築くためにもとても大切です。

赤ちゃんにたくさん話しかけ、笑いかけてください。笑顔のやりとりは信頼感を育みます。

赤ちゃんの視力の発達をサポートするためにできること

――赤ちゃんの視力発達を妨げる要因にはどんなものがありますか?

河本先生: スマートフォンやタブレットを長時間見せると、赤ちゃんの脳や目の発達に悪影響を与える可能性があります。また、夜寝るときに明るい部屋で過ごすと、将来的に近視になりやすいという研究もあります。赤ちゃんの目には、暗い環境で十分な休息を取らせることが大切です。

スマホやタブレットの使用は避け、暗めの照明環境で夜はしっかり休ませるよう工夫しましょう。

――視力や脳の発達をサポートするために、保護者ができることは何ですか?

河本先生: 母乳育児は赤ちゃんの健康だけでなく、視力や脳の発達にも良い影響を与えることがわかっています。また、コントラストのはっきりした絵本やおもちゃを使って、赤ちゃんの視覚を刺激するのも効果的です。赤ちゃんとの積極的な交流が、健やかな成長を支えるカギとなります。

絵本やおもちゃで視覚を刺激し、優しく話しかけながら親子の時間を大切にしてください。赤ちゃんの目の発達について理解を深め、成長を促す寄り添いができるといいですね。