子どもの夢を親はどこまでサポートするべき? 過干渉にならず上手に手助けするには

シム・ファルギョン
2024.12.27 15:39 2025.01.14 11:50

見つめあう親子

子どもの夢や進む道について、親がどこまでサポートするべきかは悩むところ。3人の娘全員をハーバードに進学させたシム・ファルギョンさんは「親の役割は、子どもの夢を実現するための過程を調べ、子どもたちがさまざまな経験を積むための手助けをすることだ」といいます。

そんな彼女が行ってきたサポート方法について紹介します。

※本稿は、シム・ファルギョン著『3人の娘をハーバードに合格させた 子どもが自ら学びだす育て方』(かんき出版)から一部抜粋・編集したものです。

子どもの夢を制限しない

母親と娘

子どもたちは、自分だけの夢を見る。まだ現実のなかで叶えられていないからこそ、見ることができるのが夢だ。子どもが夢を持ったら、それが何であれ受け入れてあげよう。親だって、自分が幼かった頃はさまざまな夢を見ただろう。誰だって一度は、「大きくなったら何になりたい?」と質問されただろう。

この質問に対する答えは、大統領、裁判官、検事、医師、芸能人、先生、スポーツ選手……といったところだろうか。だが、最近の子どもに将来の夢を聞いたら、ビルのオーナーと答えた、という話を聞いた。これがどうか冗談であってほしい。

幼い頃に夢見ることは、極めて正常なことだ。夢と想像の翼を広げられるということは、それだけ自発的で、創意的で、意欲にあふれているということだ。

そんなふうに夢に満ちていた子どもが思春期になって急に「将来何をしたらいいかわからない」と言ってきたら、親のほうも戸惑ってしまう。心配になって、本当にやりたいことがないのか、それとも他の理由があるのか、子どもの内心が気になるものだ。

もしかしたら、思春期に入って自分の能力には限界があるという、現実的な考え方をするようになったのかもしれない。だとすれば、これまでの夢をあきらめたり、夢が変わったりする時期を迎えているのかもしれない。

子どもがそう考えるようになったとき、親は「子どものうちの夢はどうせ適当だから」などと言っては、絶対にいけない。現実がどうであれ、それに照らして未来の夢を制限してはならない。子どもの意欲を削ぐような言動は、断じてしてはならないということだ。

それよりもさらによくない、最悪の言葉は、「それはお金にならない」だ。夢は億万の大金があっても買えないものだ。そんな貴重なものとお金という現実的な価値とを比べたら、子どもは夢を捨てて現実のなかに留まるしかなくなる。

夢を捨てた子どもが、どれだけ幸せになれるだろうか? 夢に見た自分になろうと生きるのではなく、ただお金を稼ぐために生きることは、どれほど悲惨なことだろうか。

子どものなかの巨人は、親の期待を食べて育つものだ。親の期待が大きく、深く、広いほど、子どもはより大きく成長するのだ。

子どもの夢は経験によって明確になる

電車に乗る子ども

実際、子どもが夢を育てる過程を見守っていると、ぼんやりしているところも多い。では、どうすれば子どもがあきらめずに夢を育て、叶えるように手助けできるのだろうか?

子どもの夢は、一朝一夕に叶ったりはしない。夢を叶えるには、具体的な計画を立て、それを達成するための現実的な努力が必要とされる。この過程を1つずつこなしていけば、夢が叶う。

ここで夢の解説者である親の役割は、子どもの夢を実現するための過程を調べ、その過程をうまくこなせるように手助けすることだ。自分の夢のために何をすべきかを解説してあげると、子どもの大きな力になる。夢の解説者である親は、子どもが夢を実現できるよう、今できることのリストアップに手を貸すべきだ。

私は教会と地域コミュニティーの教育ボランティアをしてきたおかげで、多くの子どもと親御さんたちに出会った。うちの娘たちの成功をよく知っている方たちは、しばしば私に教育に関するアドバイスを求めてくる。「うちの子は医者になるのが夢なんですが、今何をするべきでしょうか」「子どもがデザイナーになりたがっているのですが、どうすればいいでしょうか」というように、子どもの夢に合わせて今何をすべきかと尋ねる質問が一番多かった。

低学年の場合、すべての分野で満遍なく力を持てるように、一般的なアドバイスをした。一方、高校生くらいなら現実的な計画と実現可能なアイデアを考えることが役に立つ。私はこういう会話をするのが楽しかった。子どもを通じていろいろな夢を見られるからだ。そんな会話から、記憶に残っているものをいくつか紹介しよう。

これから美術を学んで芸術家になりたいというその子は、韓国人学校で補助教師のボランティアをしていた。私はその子の現在の状況に合わせて、初めて韓国語を学ぶ子どもがより簡単に理解できるよう、絵を描いて副教材を作ってみることを提案した。

また別の子は、コンピューター工学と音楽を同時に専攻したいという希望を持っていた。その子は国内外の音楽関連の大会での受賞歴があった。私はこの子に、今自分がやっている音楽関連の活動や受賞歴などを写真とともに紹介するウェブサイトを作ってみたらどうかと勧めた。そうすれば、音楽関連のボランティアが必要な団体などとつながりを持てるかもしれないからだ。同時に、新型コロナウイルス感染症関連のデータ分析をしている教授を探して、そこでインターンシップをしてみることも提案した。

医療機関で働きたいという子もいた。これまでその子はメキシコの短期宣教で子ども聖書学校のボランティアをやっていたのだが、病人を思いやる気持ちが強かったので、救急処置ボックスを作るプロジェクトを始めてみるよう促した。その子は実際に地域住民に衛生教育を施し、軟膏、消毒薬、絆創膏(ばんそうこう)などの常備薬を集めて自分で救急箱を作って配布した。この試みはその後、毎回の短期宣教の固定プロジェクトとなった。

ここで紹介したような子どもたちは、夢への階段を一段ずつ上る途中で、非常に多くの経験を積む。そのとき親は、子どもが夢に向かって進めるよう具体的なサポートをし、さまざまな経験を積むための手助けをしてあげよう。

そうして一段ずつ階段を上りきった子どもは、自分の夢は叶わない幻ではなく、現実になるのだという達成感の喜びとともに、人助けもできるというもう1つの喜びも同時に味わうことができるのだ。

シム・ファルギョン

シム・ファルギョン

韓国でキリスト教教育で修士学位を取得した後、同じ大学で神学を学んでいた夫と結婚。夫の留学を機にアメリカに移住。アジア人移民は社会的にはマイノリティーであり、さらに牧師の家庭だったため経済的にも苦しかったが、入試コンサルティングはもちろん、塾にも行かせず、一般の公立学校に通った3人の娘全員をハーバード大学に入学させた。