テスト直前になると片付けたくなる理由とは?親ができるサポート法

米田まりな

テスト勉強に集中しようとすると、つい机周りの片付けを始めてしまう――。
そんな経験はありませんか? 実はこれ、単なる現実逃避ではなく、心理学的な理由があるのです。

さらに、散らかった環境が集中力を妨げることが研究で明らかになっています。
特に子どもたちには、学年や成長に応じて柔軟な片付けや環境づくりが必要です。

この記事では、親がどのように子どもの勉強空間を整え、集中しやすい環境をつくるサポートができるのか、具体的なヒントを紹介します!


※本稿は米田まりな著『東大卒収納コンサルタントが教える 子どもが自然と集中する学習空間のつくり方』(‎ 日本能率協会マネジメントセンター)から一部抜粋・編集したものです。

テスト前になると片付けたくなるのには、科学的根拠があった

テストの日が迫っているのに、直前の追い込み時期に限って、本棚を整理したり、机の周りの片付け・部屋の掃除がしたくなる……。
私たち大人も、一度や二度、そういった経験があるのではないかと思います。

実際、スタディサプリでの調査によると、高校生の7割が、「勉強をしなくてはならない時に掃除や整理整頓をしたくなる」と回答しているそうです。

ある程度成長した高校生ですらそうなのですから、小中学生がテスト前に机の荷物をいじったり、注意力散漫となって遊びだしてしまうのも、ある意味仕方のないことかもしれません。

こういった行動は心理学で「セルフ・ハンディキャッピング」といわれ、自分自身に不利な条件を与え、自尊心を守ろうとする心理状態を指します。
「自分は片付けで忙しかったから、テストの点が悪くてもしょうがない」と、言い訳しやすくなるのです。
この心理が働くと、高い目標に取り組む際、つい先送りをしてしまいます。

集めている雑貨や、学校からのお便り、読みかけのマンガ、さらには書きかけのお手紙や習い事のお知らせなど、「いつかやらなくては」と想起させる情報物……。
机の周りはとにかく「刺激物」が多いのです。

体系化されていない情報が視界の中に増えるほど、脳の集中力が低下する。
このことは、プリンストン大学の研究ですでに明らかになっています。

さらに、「いつかやらなきゃ」と思っていることは、目や耳に入るたびに潜在意識にすりこまれていきます。
つまり、普段から「片付けなさい!」と言っていればいるほど、そのことが潜在意識にすりこまれ、テスト前などの肝心な時に限って、片付け・掃除を始めてしまうのです。

誘惑物が散らばった机で、「ここぞ」という時に、優先順位を間違えずに集中力を発揮するのは、大人でも難しいですよね。
だからこそ、テスト・受験など大切なイベントの前には、具体的なやり方を示しながら、親も寄り添って伴走する形で、さりげなく刺激物を取り除いてあげる必要があるのです。

年齢や状況に応じて役割を変化させることで「集中しやすい環境」をつくる

それでは、どういった家であれば、子どもたちは学習に集中できるのでしょうか。
ここで一番重要なのが、年齢や状況に応じた「柔軟性」だと考えています。

年齢・時期によって、勉強の内容も、子どもの体格・内面も、常に変化をしていきます。
変化に対応するためには、家具やレイアウトをカチッとつくり込まず、適切な位置に動かせるよう、持ち物を整理しておくことが重要です。

小学校入学直後の1年生が持つ教科書の量と、中学受験直前の5年生が持つ教科書の量には、とてつもない差があります。
身長だって、6年間で30㎝ 以上も伸びるのです。

それなのに、小学校入学時のお祝いで買った学習机を、進級後も同じ状態で放置していませんか?
ランドセル置き場や、習い事の道具の定位置は、学年ごとに適切に定められているでしょうか。
忘れ物をしないよう、お子さんと荷物管理について十分話し合いはできていますか。

季節ごとに衣替えを行なうように、同じような頻度で子どもの勉強道具も、入れ替えが必要です。
通信教育で送られてきた教材、もう使わないけれど先生から「とっておくように」と言われたプリント、来期の教材が早めに送られてきたなど、子どもの手元にある教科書・プリントの種類は実にさまざま。
どれもいろいろな事情があって手元に置いておく必要があるものです。
ですから、荷物の定期的な見直しは、リビング学習が中心でも、子ども部屋学習が中心でも必要なのです。

東大卒収納コンサルタントが教える 子どもが自然と集中する学習空間のつくり方

東大卒収納コンサルタントが教える 子どもが自然と集中する学習空間のつくり方』(米田まりな著/日本能率協会マネジメントセンター)

子ども部屋の整理整頓は、多くのお母さんの悩みの一つである。散らかった部屋で過ごすのは、単に不衛生・健康に悪いというだけでなく、「テストの前日に限って掃除をし始める」「机の上にいろんなものがおいてあって勉強に集中できない」という問題もあり、特に中学受験・高校受験を控えた子どもを持つお母さんたちの悩みの種にもなっている。

本書の著者は、『集中できないのは、部屋のせい』を出版し、忙しいビジネスマンでも実践できる、在宅ワークでも集中できる環境の作り方を紹介したが、受験生にとっても「集中できる部屋づくり」は重要なキーワードと言えるだろう。
しかし、中学受験を考えている親向けの書籍は「声かけ」や「接し方」について説明したものが多く、環境の整え方について言及した書籍はほとんどないうえに、子ども部屋の整理整頓についての書籍にも「集中できる」「勉強ができる」という切り口のものは見当たらない。

本書では、「小学校に入学したら学習机」「東大生はリビング学習」など、従来言われているメソッドについてロジカルに切り込むとともに、東大卒100人に対するアンケートからわかった集中できる・主体的に勉強するようになる環境の整え方を10のポイントにわけて解説。さらに、子どもの持ち物をどのように整理するかも含め、独自の視点で解決策を提示する。