上の子が下の子にキレてしまう…親が知っておきたい向き合い方

原田謙
2025.03.03 12:41 2025.03.06 11:50

キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本

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上の子が下の子に意地悪をする理由は何でしょうか? 実はその行動の裏には、上の子ならではの不満が隠れているかもしれません。
児童精神医学の専門医・原田謙先生が解説する「きょうだいゲンカとの向き合い方」をご紹介します。

※本稿は原田謙(著)『キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本』(講談社)から一部抜粋・編集したものです。

きょうだいゲンカで下の子に怒りをぶつける子

キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本

兄が弟に怒りをぶつけてしまう

子どもの怒りは多くの場合、弱いものに向かいます。「親は怖いけれど、学校の先生は優しい」という場合には、先生にキレることがあります。マンガでは、小学5年生のGくんが幼い弟に強く当たっています。怒りの矛先が、年下のきょうだいに向いてしまっているのです。

Gくんは、弟と仲が悪いわけではありません。基本的には弟に優しく接していて、仲良くゲームで遊ぶこともあります。ただ、対戦ゲームで弟に負けたときなどに、突然怒りを爆発させ、弟に対して攻撃的な言動を取ることがあります。

マンガの場面では、Gくんがゲームに負けただけで怒って、突然、弟を突き飛ばしてしまいました。弟は「いじめられた」と感じて母親に泣きつき、結果としてGくんは母親から𠮟られました。

上の子は我慢している場合が多い

 きょうだいゲンカが起きると、マンガのように親が「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから」と言って、年上の子を諭そうとすることがあります。しかし、それでは上の子を我慢させることになります。下の子の言い分ばかり聞いていて、上の子の気持ちにフタをしたような状態になることがあるのです。マンガでも、Gくんは「やだよ」「なんでオレばっかり」と言って、不満を示していました。

親がいつも上の子を𠮟っていると、上の子が大人のいないところで、こっそり下の子をいじめるようになりがちです。親には逆らえないけれど、怒りの行き場もないということで、隠れて下の子に強く当たるようになってしまうのです。

上の子がきょうだい間のいさかいでキレる場合には、ケンカが激しくならないように、早めに対処する必要があります。「きょうだいは多少ケンカをするもの」と考えて様子を見ている家庭もありますが、暴力が出てしまっている場合や、暴言が度を過ぎると感じる場合には、なんらかの対応を始めましょう。

キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本

 

「不満があるのでは」と考えてみる

キレる行動の背後には、さまざまな思いがあります。「これだけケンカが続くということは、上の子にも何か不満があるのでは?」と考えてみることが大切です。暴力や暴言は、気持ちをわかってほしいゆえの行動です。下の子の気持ちだけではなく、キレてしまう上の子の思いも汲み取りましょう。きょうだいゲンカが続いているときには、必ず両者の言い分を聞いてください。話を聞くのは、どちらが正しいのかを判定するためではありません。どちらの気持ちも受け止めるためです。

気持ちを受け止めたうえで、必要に応じて、上の子にも下の子にも「相手がどう思っていたのか」を伝えましょう。ケンカをするとお互いに嫌な思いをすることも伝えます。ケンカ両成敗ということで、どちらに対しても、𠮟るべきところは𠮟りましょう。そして仲直りができたら、子どもたちをほめてください。

日々の会話などを通じて子どもの思いを受け止めながら、キレにくい親子関係を築いていくための方法を解説します。その方法は親だけでなく、学校の先生にも参考になるものです。

【ポイント】
信頼関係をつくっていく

…キレる行動には対応する。でも子どもの思いも受け止める。それが信頼関係を築くコツです

週に1回「シェアタイム」を実施する

子どもと何気ない時間を分かち合う

暴力や暴言への対応も重要ですが、子どもがキレていないときの支援も同じように重要です。落ち着いているときの日常的な取り組みは、いわば「土台づくり」のようなものです。日常生活のなかで子どもの話を聞いたり、子どもをほめたりすることによって、信頼関係の土台を築いていく、あるいは築き直していくのです。

土台づくりのために、週に1回「シェアタイム」を実施しましょう。子どもと何気ない時間を分かち合うという方法です。親が子どもと一対一で、 20〜30分程度の時間を過ごします。この時間の目的は一緒に楽しむことです。子どもに主導権を与え、子どもの望むことをします。指示や命令は出さないでください。本人の希望にそって、絵を描いたりボードゲームで遊んだりします。料理やドライブもよいでしょう。基本的には何をしてもよいのですが、テレビゲームや動画視聴のように並んで画面を見続けることは適度な交流にならないので、できれば避けたいものです。

シェアタイム中に好ましい行動があったらほめてください。一方、暴力や暴言が出た場合には、シェアタイムを中止してクールダウンなどを実行します。中止になる可能性を、事前に説明しておくとよいでしょう。

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思春期の場合:一緒に遊ばなくてもよい

小学生くらいまでは、親子で一緒に遊ぶことが「シェアタイム」になるのですが、中学生以降は本人が親と遊ぶことを好まなくなったり、塾や部活動で忙しくなったりして、シェアタイムを設定しにくくなる場合もあります。

その場合には「塾への送迎のときに話を聞く」「メッセージアプリで何気ないやりとりをする」といった交流をするのもよいでしょう。何気ないやりとりが、親子関係をほぐすことにつながり、シェアタイムの代わりになります。

原田謙

長野県立こころの医療センター駒ケ根副院長・精神科研修研究センター長・子どものこころ診療センター長。信州大学医学部臨床教授。1962年東京都生まれ。1987年信州大学医学部卒業。神奈川県立子ども医療センター、国立精神神経センター国府台病院、信州大学医学部附属病院などを経て、2014年から現職。専門は児童精神医学。特に発達障害の二次障害、反抗挑発症、素行症。

キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本

キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本』(原田謙 著/講談社)

第一人者の児童精神科医による、子どもの暴力・暴言への対応方法をマンガを使ってわかりやすく解説。声かけ、伝え方がわかる!