なぜオランダの親は子どもの成績よりも遊びを重視するのか?

リナ・マエ・アコスタ(著), ミッシェル・ハッチソン(著), 吉見・ホフストラ・真紀子(訳)
2025.03.07 11:39 2025.03.06 11:50

野球をする子ども

「子ども幸福度世界一」のオランダでは、外で子どもを親の付き添いなく遊ばせ、徐々にその行動範囲を広げていくことを大切にしているそうです。なぜオランダの親は、子どもの成績を心配しないで遊ばせていられるのでしょうか?
子どもを幸せにするオランダメソッドを、リナ・マエ・アコスタ(著), ミッシェル・ハッチソン(著), 吉見・ホフストラ・真紀子(訳)『オランダ人のシンプルですごい子育て』から紹介します。

※本稿は、リナ・マエ・アコスタ(著), ミッシェル・ハッチソン(著), 吉見・ホフストラ・真紀子(訳)『オランダ人のシンプルですごい子育て』(日本経済新聞出版)から一部抜粋・編集したものです。

リナの家族とミッシェルの家族

オランダ人のシンプルですごい子育て

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オランダ人のシンプルですごい子育て

オランダの親が成績よりも大切にしていること

子どもは教室の中で自分たちの時間を楽しみ、学校が終わると外で元気に遊ぶ。子どもが楽しい時間を過ごすのはたしかに私たち親の望むことだ。しかし、そうは言ってもオランダの親はなぜこんなにも、子どもの成績を心配しないで遊ばせていられるのだろうか?

私はその答えを探るべく、まずは、毎月行われている読書会のメンバーにインタビューしてみた。読書会の中で私は唯一の外国人で、ほかの7名のお母さんは、ランダムに選ばれた人たちなので、リサーチ対象としてうってつけだった。彼女たちの子どもの年齢は6~12歳。私は自分が幸せな子ども時代についての本を執筆する仕事をしていることを説明し「オランダの子どもがなぜ幸せなのか」と聞かれて思い浮かぶことを話してもらった。

「幸せというのは、何かをたくさん持っていることではなく、自分の持っているものや自分の置かれている状態を受け入れることなんじゃないかしら。私たちの子どもは、自分が世界で最高のサッカー選手になれないことをちゃんと受け入れているの。きっと、立ち直りが早いんだわ」と1人のお母さんが言った。するともう1人が「オランダの子どもは会話に参加して自分の意見を発言できる場があるわ」と言った。

続いて3人目が、「親がパートタイムで働くから子どもと過ごせる時間がたくさんあるのよ」と言った。そしてほとんどのお母さんたちが迷うことなく、「オランダの子どもたちは外に出て、街中どこでも好きなように遊ぶことができるからね」と、口を揃えて言った。

ロンドンに住む私の友だちの生活は、こうしたのんびりとした生活とは根本的に違う。

私はここに住んだ当初から、オランダの子育ての方針に心を掴まれた。リナと違って文化の違いに悩まされることはなかったが、できるだけ自分のイギリス的な価値観を振り払い、オランダでの生活に溶け込もうと努力した。

オランダは子どもを育てるには完璧な場所だと思う。でもここを「楽園」と呼ぶことは間違っている。この国に溶け込むことはそんなに簡単なことではないし、それにここの天気はいつでもとても悪いからだ。

自分で考え、自分で行動できる子どもに育てよう

サッカーをする子ども

午後、家庭菜園で過ごした後、自転車での帰り道で公園の角にあるアイスクリーム屋に立ち寄った。ベンは遠くから妹のイナを見つけた。イナは同年代の子どもたちとサッカーをして遊んでいた。親友のタインも一緒。でも、もちろん彼の両親は付き添ってはいない。ベンはアイスクリームを食べ終わると、イナをビックリさせようとしたが、私と話をしている間に、彼女はどこかへ行ってしまった。家に向かって歩いていると、ジャケットを片手にイナがキックボードで追い抜いた。私たちは16時30分に家へ戻ってくるように約束していた。私とベンは彼女を追いかけるように走って戻り、ギリギリ間に合ってドアを開けた。彼女は疲れたふりをして頬をバラ色に染めながら「ふうー」とため息をついて「公園で4時間半も遊んでいたのよ!」と言った。

私は娘をとても誇りに思う。彼女は今朝、自分で友だちと遊ぶ約束をして午後の間はずっと公園で遊び、ちゃんと約束の時間に家へ戻ってきたからだ。

イナはおてんば娘で、ボールを渡せばうれしそうに何時間もそのボールを蹴っている、そんな女の子だ。けれど、そうは言っても私が何も言わなければ、ほかの多くの子どもと同じように何時間もiPadやWiiに釘づけになっていることだろう。

外で子どもを親の付き添いなく遊ばせ、徐々にその行動範囲を広げていく。そうした育て方をあるオランダ人の親が教えてくれた。

オランダでは、子どもが親から離れて自分で考えて行動する。親は子どもをずっと心配している必要はない。これは親にとっても子どもにとっても、健全で良いことだ。リナと同じように、これこそ私の子どもたちに過ごしてほしい子ども時代そのものだと思う。

ミッシェル・ハッチソン

編集者。イギリス・ミッドランズのソリフル市生まれ。東部リンカンシャーで育ち、イースト・アングリア大学、ケンブリッジ大学、リヨン大学で学ぶ。イギリスの出版社で勤務した後、2004年に妊娠後期でアムステルダムへ転居し、オランダ人の夫と2 人の子どもとオランダの伝統的な家屋に住む。

X:@M_Hutchison

Instagram:@michelehutchison

リナ・マエ・アコスタ

作家。カリフォルニア出身のアジア系アメリカ人で、現在はオランダ人の夫と2 人の息子とオランダで暮らす。カリフォルニア大学バークレー校、エラスムス・ロッテルダム大学で学位を取得。子育てブログ「Finding Dutchland」を運営。

Instagram:@rinamae

吉見・ホフストラ・真紀子

大学でフランス語文学言語学を専攻、インターネットを使ったコミュニケーションに興味を持ち、大手通信会社に入社。フランスでMBA取得後、フランス・オランダ・日本の国際企業でIT通信関連の商品開発マーケティング・ビジネス戦略に携わる。結婚を機に2003年オランダへ移住。現在は多岐にわたる企業通訳および翻訳を本業とするかたわら、難民に対するオランダ語支援やフェアトレードビジネスなどNGO団体でのボランティア活動にも従事し、育ち盛りの子どもの子育てに忙しい毎日を送っている。

オランダ人のシンプルですごい子育て

オランダ人のシンプルですごい子育て』(リナ・マエ・アコスタ(著), ミッシェル・ハッチソン(著), 吉見・ホフストラ・真紀子(訳)/日本経済新聞出版)

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