なぜオランダの親は子どもの成績よりも遊びを重視するのか?

リナ・マエ・アコスタ(著), ミッシェル・ハッチソン(著), 吉見・ホフストラ・真紀子(訳)

「子ども幸福度世界一」のオランダでは、外で子どもを親の付き添いなく遊ばせ、徐々にその行動範囲を広げていくことを大切にしているそうです。なぜオランダの親は、子どもの成績を心配しないで遊ばせていられるのでしょうか?
子どもを幸せにするオランダメソッドを、リナ・マエ・アコスタ(著), ミッシェル・ハッチソン(著), 吉見・ホフストラ・真紀子(訳)『オランダ人のシンプルですごい子育て』から紹介します。

※本稿は、リナ・マエ・アコスタ(著), ミッシェル・ハッチソン(著), 吉見・ホフストラ・真紀子(訳)『オランダ人のシンプルですごい子育て』(日本経済新聞出版)から一部抜粋・編集したものです。

リナの家族とミッシェルの家族

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オランダの親が成績よりも大切にしていること

子どもは教室の中で自分たちの時間を楽しみ、学校が終わると外で元気に遊ぶ。子どもが楽しい時間を過ごすのはたしかに私たち親の望むことだ。しかし、そうは言ってもオランダの親はなぜこんなにも、子どもの成績を心配しないで遊ばせていられるのだろうか?

私はその答えを探るべく、まずは、毎月行われている読書会のメンバーにインタビューしてみた。読書会の中で私は唯一の外国人で、ほかの7名のお母さんは、ランダムに選ばれた人たちなので、リサーチ対象としてうってつけだった。彼女たちの子どもの年齢は6~12歳。私は自分が幸せな子ども時代についての本を執筆する仕事をしていることを説明し「オランダの子どもがなぜ幸せなのか」と聞かれて思い浮かぶことを話してもらった。

「幸せというのは、何かをたくさん持っていることではなく、自分の持っているものや自分の置かれている状態を受け入れることなんじゃないかしら。私たちの子どもは、自分が世界で最高のサッカー選手になれないことをちゃんと受け入れているの。きっと、立ち直りが早いんだわ」と1人のお母さんが言った。するともう1人が「オランダの子どもは会話に参加して自分の意見を発言できる場があるわ」と言った。

続いて3人目が、「親がパートタイムで働くから子どもと過ごせる時間がたくさんあるのよ」と言った。そしてほとんどのお母さんたちが迷うことなく、「オランダの子どもたちは外に出て、街中どこでも好きなように遊ぶことができるからね」と、口を揃えて言った。

ロンドンに住む私の友だちの生活は、こうしたのんびりとした生活とは根本的に違う。

私はここに住んだ当初から、オランダの子育ての方針に心を掴まれた。リナと違って文化の違いに悩まされることはなかったが、できるだけ自分のイギリス的な価値観を振り払い、オランダでの生活に溶け込もうと努力した。

オランダは子どもを育てるには完璧な場所だと思う。でもここを「楽園」と呼ぶことは間違っている。この国に溶け込むことはそんなに簡単なことではないし、それにここの天気はいつでもとても悪いからだ。

自分で考え、自分で行動できる子どもに育てよう

午後、家庭菜園で過ごした後、自転車での帰り道で公園の角にあるアイスクリーム屋に立ち寄った。ベンは遠くから妹のイナを見つけた。イナは同年代の子どもたちとサッカーをして遊んでいた。親友のタインも一緒。でも、もちろん彼の両親は付き添ってはいない。ベンはアイスクリームを食べ終わると、イナをビックリさせようとしたが、私と話をしている間に、彼女はどこかへ行ってしまった。家に向かって歩いていると、ジャケットを片手にイナがキックボードで追い抜いた。私たちは16時30分に家へ戻ってくるように約束していた。私とベンは彼女を追いかけるように走って戻り、ギリギリ間に合ってドアを開けた。彼女は疲れたふりをして頬をバラ色に染めながら「ふうー」とため息をついて「公園で4時間半も遊んでいたのよ!」と言った。

私は娘をとても誇りに思う。彼女は今朝、自分で友だちと遊ぶ約束をして午後の間はずっと公園で遊び、ちゃんと約束の時間に家へ戻ってきたからだ。

イナはおてんば娘で、ボールを渡せばうれしそうに何時間もそのボールを蹴っている、そんな女の子だ。けれど、そうは言っても私が何も言わなければ、ほかの多くの子どもと同じように何時間もiPadやWiiに釘づけになっていることだろう。

外で子どもを親の付き添いなく遊ばせ、徐々にその行動範囲を広げていく。そうした育て方をあるオランダ人の親が教えてくれた。

オランダでは、子どもが親から離れて自分で考えて行動する。親は子どもをずっと心配している必要はない。これは親にとっても子どもにとっても、健全で良いことだ。リナと同じように、これこそ私の子どもたちに過ごしてほしい子ども時代そのものだと思う。

オランダ人のシンプルですごい子育て

オランダ人のシンプルですごい子育て』(リナ・マエ・アコスタ(著), ミッシェル・ハッチソン(著), 吉見・ホフストラ・真紀子(訳)/日本経済新聞出版)

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