息子が精通を迎えたかも… 母親から声をかけるのはタブー? 【親子のための性教育(1)】

おさだしずこ
2026.03.31 11:50 2025.03.31 11:30

おさだしずこ 親子の性教育①

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思春期を迎えると、子どもたちの心と体には大きな変化が訪れます。その変化に戸惑うのは子ども本人はもちろん、親も同じこと。

「こんな時、どう対応すれば?」という切実な悩みについて、看護師であり性教育講師として活躍されているおさだしずこ先生に、専門家の立場からお答えいただきます。今回は、子どもが精通を迎えた際の適切な対応について解説していただきました。
(イラスト:おがたちえ)

※本記事の「男の子・男性」とは、男性器を持つ体の方を、「女性」とは女性器を持つ体の方を指しています。

こんな時どうすりゃいいの? 男の子の精通

「小学校高学年の息子が、汚れた下着をこっそり洗濯カゴに入れていました。直接何も言ってはこないけれど、どうやら精通を迎えた様子。

そっとしておくべきかなとは思うけど、下着は自分で洗ってから洗濯カゴに入れてほしい…。

やはり母親から声をかけるのはタブーなのでしょうか? 自分自身も戸惑いがあり、どう対応していいかわかりません!」

お母さんには理解しにくい男の子の身体の変化

「精通って何ですか?」
「射精とは違うのでしょうか?」

性教育の講演活動をしていると、こんな質問をくださるお母さんが意外といらっしゃいます。

正直に申し上げますと、性教育を学び始めるまでは、私もよくわかっていませんでした。
看護師で、かつ4人の男の子の母親なのに…。
変なプライドが邪魔をして、誰かに尋ねることができなかったり、そもそも誰に相談すれば良いのかわからなかったりもしました。
もしかすると、無意識のうちに問題に蓋をしていたのかもしれません。

「よく知らなかった」で済むこともありますが、性教育を学んだ今、「無知」はときに危険なこともあると強く実感しています。
だからこそ、タブー視されがちで、「誰も教えてくれない」「誰にも聞けない」「知らなかった」となりがちな性のことを、親御さんにも正しく知ってほしいと思っています。

性教育に関心を持ってくださる方のお悩みは、数年前の自分の悩みと重なるものが多いです。気持ちがわかるからこそ、自分自身が気軽に質問できる存在でありたいと思っています。

そもそも精通とは?

母親が「精通は正常な成長の証」だと理解ができていないと、いやらしいこと、けがらわしいこと、汚らしいものとして捉えてしまいがちです。
男の子には誰しもが起こる、正常で、かつ無意識のときにも起こる体の反応であることを、正しい知識としてすべての人が理解しておくことが大切だと思います。

小学校4年生の保健の教科書(株式会社学研教育みらい発行・みんなのほけん3・4年)には、精通について次のように説明されています。

「男子では、思春期になると、いんけいがしげきを受けたときやねむっている間に、白い液が出ることがあります。これを射精といい、初めての射精を精通といいます。この白い液は精液といい、その中には精子がまざっています。」

眠っている時に射精することを夢精といいますが、誰もが経験するわけではありません。夢精で精通を迎えることもありますが、マスターベーションで迎える男の子も少なくないようです。

また、自転車に載っているときやスポーツをしているときなどに思わず勃起、射精してしまうこともあります。

子どもの精通 親の正しい対応は? 

こどもが精通した時の親のベストな対応は、その親子の関係性によると思います。

・何もふれずにそっと見守る
・必要に応じて「体が確実に大人になってきたね」と安心感を与える声かけをする
・お子さんの年齢や理解度に合わせて、体の変化について具体的な説明をする
・まずは親御さんがご自身の気持ちと向き合い、その上でお子さんに伝えたいことがあれば、伝える

など、どれが正しいということはありません。
その親子の関係性によって、かける言葉も受け止め方も違うと思うので、対応も違って良いと思います。

お母さんの場合ですと、ご自身の初潮の時のことを思い出すとわかりやすいのではないかと思います。お赤飯を炊かれて嬉しかった方、反対に嫌だった方、お赤飯じゃなくてもわざわざ家族に知られるのは嫌だったという方、何もされなくて良かった方・悲しかった方、親には言えなかった方…と、さまざまだと思います。

前提として知っていただきたいことは、性に関することは、答えが1つとは限らないということです。これは精通に限ったことではありません。そして、正しい知識と親自身の覚悟があれば、家庭での性教育はどのタイミングからでも遅いということはありません。
大切なのは、精通が正常な体の成長の証であるということを、親子共に前向きに理解しておくことだと思います。

できれば体の変化が起こる前に伝えたい

精通について事前の知識がない子どもは、突然の体の変化に戸惑い、自分の体に何か異常があるのではないかと不安を感じることがあります。

精通・射精については、小学校4年生と中学校1年生の保健の授業で習いますが、多くの学校はそれぞれ一回の授業なので、知識として定着するのが難しい場合もあります。

子どもたちが不安や悩みを抱えたとき、親や先生等に話せる関係が理想的ですが、スマートフォンが普及した現代では、SNSを情報源として頼る子も多くなっています。
しかし、SNSには危険も潜んでいます。間違った情報に惑わされたり、見知らぬ人との会話がきっかけで性的な被害に遭うケースも考えられます。
このようなリスクを考えると、 体に変化が起こる前まで、あくまでも目安として10歳頃までには、成長に伴う体の変化について子どもと話をしておくことをお勧めします。
「突然のことでびっくりするかもしれないけど、病気じゃないし、大人に向かって成長してる証拠だよ。もしも何か不安なことがあったらいつでもなんでも話してね」と声をかけてあげるのもよいと思います。

仮に10歳を過ぎていたとしても、「うちはもう遅い」と諦めないでください。何歳であっても、気づいた今が1番小さく若い日です。私が性教育をゼロから学び始めたのは、1番上の子が19歳の時でした。それでも遅くはなかったと感じています。

とはいえ、反抗期になると、日常の中で性について話題に出すことが難しいのが現実です。
親として伝えたいことがあるときは、誠意を持って「話したいことがある」と素直に伝えたり、スマートフォンを上手く使い、メッセージを送るのも良いと思います。

どんな正論も、頭ごなしで一方的な言い方だと、誰も耳を傾けてくれません。反抗期のお子さんならなおさらです。
しかし、反抗期のお子さんでも、親が真剣に向き合ってくれてることは伝わります。無反応だったり、聞いていなさそうに見えても大丈夫です。自分のためを思って話してくれていることを、子どもは必ず覚えていてくれます。
話をした後は、「時間をつくってくれてありがとう」「きいてくれてありがとう」の一言も、忘れずに伝えていきましょう。

気になるパンツの洗濯は?

多くのお母さんが気になるのが、精液のついたパンツ問題のようなので、そこについて。

オススメは、精通を迎える前の、幼い頃からの声かけです。お風呂の時間などを活用し、体の部位の名前や働き、洗い方などを日常的に教えていくことで、親子ともに性に関する話題に慣れていくことができます。これにより、成長に伴う体の変化についても、構えることなく自然に会話ができるようになります。

子どもがなんでも自分でやりたがる時期、特にトイレットトレーニングが完了する前後の時期には、おしっこで汚れたパンツや、お砂場で泥だらけになった靴下等を、お風呂のときに、まずは一緒に洗うところから始めましょう。

小さな頃から親子で続けることで「汚れたものは自分で洗ってから洗濯機に入れる」という習慣が身につき、「自分のことは自分でする」と言う自立にも繋がります。

「精液のついたパンツ」というと特別なものと捉えがちですが、下着が汚れることは、年齢や性別に関係なく誰にでも起こり得ることです。女性であれば、おりものや経血、尿など、男性であれば尿や精液などが原因として考られます。精液を特別なものとして扱うのではなく、成長に伴う体の変化や清潔という観点から捉えれば、親子共に落ち着いて対応できるようになります。

すでに精通を迎えた子に初めて話す場合は、前述の関係性や反抗期の場合の対応を参考にしていただきながら、
「どんな理由でも、もしパンツが汚れた場合は、お風呂で自分で手洗いをしてから、洗濯機にパンツを入れてね。お父さん・お母さんも同じ。それが大人のマナーだよ。」
と、自立への習慣が身につくよう、伝えてあげるのも良いと思います。
ご家庭によってお洗濯のルールに違いがあるかと思いますので、それぞれの家の事情にあわせて声掛けを工夫してみてください。

参考文献:
1.北村邦夫(監修), 三浦絵莉子(監修)『もっと知ってほしいからだのこと性のこと』NPO法人キャンサーネットジャパン
2.岩室紳也(監修), 中村光宏(絵)『男の子が大人になるとき』株式会社少年写真新聞社

おさだしずこ

看護師・性教育講師
思春期学会性教育認定講師。現役婦人科看護師。慢性期・急性期混合病棟臨床経験あり。現在は、「こころとからだが幸せになるための性教育」をテーマに、学校での性教育授業、PTA講演会、地域での絵本を活用した性教育など、幅広い活動を展開している。5児の母。

Instagram:@shizuko_osada_seikyouiku