友達にケガをさせてしまうことも…子どもの引っかきグセや叩きグセにはどう対処するべき?

藤平公平

保育園など、子どもの周囲に友達がいる環境になると出てくる子育て中の悩みが、“友達を引っかいてしまう”あるいは“叩いてしまう”といったケース。やめさせたいのに、どうやって注意すべきなのかわからないという人も多いでしょう。そこで今回は、子どもに引っかきグセや叩きグセがついてしまう原因と適切な対処法について、保育士歴10年の子育て講師・でんちゃんさんとともにまとめてみました。

相手を引っかいてしまうのはコミュニケーション能力が発達途中だから

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小さな子どもに引っかきグセ・叩きグセが見られる場合は、「攻撃したい」「傷つけたい」といった気持ちからではなく、他の理由であることがほとんど。そのひとつとしてまず挙げられるのが、うまくコミュニケーションをとれないストレスです。

特に5歳くらいまでの子どもは、言語能力がまだまだ発達途中。「あのおもちゃで遊びたい」「それはやめてほしい」などの自分の要求を言葉でうまく説明できずに、つい攻撃的な手段を用いてしまうのです。

加えて、幼い子どもは感情のコントロール面で未熟な部分が多いのも事実。感情の高ぶりから思わず“引っかく”“叩く”といった行動をとってしまうこともあります。

でんちゃんさん「子どもの言語能力の発達は年齢ごとに異なり、1歳~1歳半くらいでようやく一語文を話せるようになります。3~4歳ほどまでに2つ以上の述語を合わせた複文を使うようになりますが、伝えたいことを物語として相手に伝えられるようになるのは、5~6歳になってから。もちろん個人差もありますが、一般的に女の子の方が早く言葉を身に着けると言われています。

自分の思いが伝えられず思わぬ行動に出てしまうのは、何も友達相手に限ったことではありません。たとえばショッピングセンターなどで、小さな男の子が親相手に駄々をこねる場面に遭遇した経験はないでしょうか。これは友達相手に手が出てしまうのと同じこと。自分の気持ちを理解してほしいという、言葉では伝えきれない感情の表れです。」

保護者からの関心を引きたくて攻撃的になるケースも

感情表現およびコミュニケーション能力の未熟さが引っかきグセや叩きグセにつながる一方で、「保護者の注意を引きたい」という気持ちからつい乱暴な行動をとるケースも。「友達を叩くと親が反応してすぐに来てくれる」と考え、周囲へ攻撃的になってしまうことがあるようです。

また子どもが生後数ヶ月~1歳程度なら、相手への興味が引っかくという行動に表れる場合も。もともと、「大好きなものに触りたい」と親の顔へ手を伸ばす子どもは少なくありません。しかしまだ力の加減がわからない年齢の子どもは、スキンシップのつもりが結果的に相手を攻撃してしまうこともしばしば。成長するにつれて友達など親以外の人間にも興味がわくと、同様のコミュニケーション方法をとって意図せず相手を傷つけてしまいます。

でんちゃんさん「小さな子どもには、周囲の反応をうかがうために起こす『試し行動』が見られます。多くは親の関心を向けさせるためだったり、自分の行動がどこまで許容されるか探る意味合いがあり、対応を間違えると味をしめた子どもが同じ行為を繰り返すことも。言語能力が成長段階にあるため、どうしても言葉ではなく行動として表れてしまうようです。

スキンシップについても、人間相手だけでなくペットや動物のいる環境では要注意。小さな子どもにとって動物とのスキンシップは、未知のものに触れるという学習でもあります。関心を持つことは大切ですが、力加減がわからないと同時に対象が感じる『痛み』もまだ理解できていません。他の子どもと一緒になる場面や動物とふれあう際は、できるだけ子どもから目を離さないようにしましょう。」

感情的にならず、丁寧に対処しよう

もしも自分の子どもが周りの人を引っかいたり叩いたりしてしまった際には、どのように対処するべきなのでしょうか?

子どもがある程度言葉を使える年齢の場合は、まず親自身が相手の子どもと保護者に対して冷静に謝ります。そのうえで自分の子どもに、「本当はどうしたかったのか」「なんで叩いてしまったのか」と理由をやさしく聞いてあげることが大切。

そして子どもの気持ちを理解し共感する姿勢を示しつつ、「どうすればよかったのか」を一緒に考えたり、解決策を提案したりできると子どもの学習に繋がります。

まだ話がうまくできない子どもには、「こうやって触ってね」とやさしく手をとりながら正しいスキンシップの方法を教えてあげましょう。

でんちゃんさん「幼稚園や保育園、公園など、子どもの社交の場は親にとっても他の家族とコミュニケーションを取る大切な場。後々トラブルにならないよう、まずは保護者が責任ある行動を取りましょう。また、子どもと話し合って暴力的な行動からの改善が見られたら、しっかり褒めてあげてください。小さな子どもはさまざまな面において、脳の発達段階にあります。やってはいけないことを認識させ、行動を変えていくことで成長にもつながるはずです。」

子育て中の親にとって悩みの種になってしまいやすい、子どもの引っかきグセや叩きグセ。周囲を守り子どもの成長にもつなげられるよう、落ち着いて丁寧に対処する意識が重要なようです。