過去のいじめが許せない…捉われる自分から抜け出すには?

石井しこう
2025.05.27 14:35 2025.05.30 11:50

男の子のイラスト

いじめは人の心に大きな傷を残すもの。「今でもいじめた人が許せない」という切実な悩みに、不登校ジャーナリストの石井しこうさんが返した意外な回答とは?
しこうさんの著書より抜粋して紹介します。

※本稿は、石井しこう著『学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること 』(大和書房)より一部抜粋、編集したものです。

過去にとらわれすぎ? 今でもいじめた人が許せません

許さなくてもいいんです。誰だって、つらいことや苦しいことがあれば、他人に話したくなります。ましてや、いじめを受けたらなおさらです。しかし人に話して傷つくこともあります。

中学生のころ、クラスの女子グループから無視されていたある女性の話です。廊下ですれ違っても目をそらされ、話しかけても聞こえないふり。毎日が孤独で、教室に行くのが怖くてたまりませんでした。勇気を出して友人に相談したときに「気にしすぎだよ」「あの子たち、本当は悪い子じゃない」。そう言われてさらに傷ついたそうです。私が気にしすぎているのが悪いんだ、と思ったからです。

文科省の統計によると、小・中・高におけるいじめの認知件数は73万件を超え、過去最多を更新しました。

いじめは直接的な被害だけでなく「まちがったアドバイス」によって、さらに深い傷を負うこともあります。

人気作家・辻村深月さんは、いじめた人を許せないという10代の悩みに、こう答えています。

「あなたは許さなくていいんです。傷つけてきた人の事情を、あなたが推し量ったり、背負う必要はありません。大人になってわかったことがあります。年齢に関係なく『くだらない人はいます』と。『大人』だから立派なんてことはなく、理解し合えないのは、大人も子どもも同じです。あなたが大切にしたい人を大切にするだけでいいんです」

私は不登校で悩んでいた時期がありました。苦しい経験をすると「乗り越えなきゃ」「前に進まなきゃ」と感じてしまうかもしれません。

でも、立ち止まって悩んでいたからこそ、家族やまわりの人の支えに気づき、不登校を社会問題としてとらえ、ライフワークにすることができました。過去と向き合えたのがよかったんです。

過去は変えられませんが、過去と向き合って、過去のとらえ方を変えることはできます。

許せなくても大丈夫。焦らず、自分のペースで進んでいきましょう。

しこうポイント!:許さなくてもいいんです

石井しこう

1982年東京生まれ。不登校ジャーナリスト。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校に。同年、フリースクールへ入会。19歳からはNPO法人で、不登校の子どもや若者、親など400名以上に取材を行なうほか、樹木希林氏や社会学者・小熊英二氏など幅広いジャンルの識者にも不登校をテーマに取材を重ねてきた。
現在はNPOを退社し不登校ジャーナリストとして講演や取材、「不登校生動画甲子園」の開催などイベント運営などでも活動中。【Yahoo!ニュース 個人】月間MVAを二度受賞。著書に『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ社)、『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社)など。

学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること

石井しこう著『学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること 』(大和書房)

ヨシタケシンスケ氏 推薦!

“ここに君の先輩がいる。
君と同じだった先輩は、たくさんいる。
先輩たちは、何が大事かを知っている。

学校に行っても行かなくても、するべきことは一つだけ。
大事なものを、大事にするだけ。“


「不登校の自分は、この先どうなるんだろう?」
経験者だからわかる事がある。

将来が不安でもやもやする日々、トンネルの中にいる君に届けたいメッセージ。