「不登校だけどアイドルになりたい」その夢、応援してOK? 坂上忍の答えにしびれた理由

石井しこう
2025.05.27 14:36 2025.06.10 11:50

女の子のイラスト「不登校だけどアイドルになりたい」そんな10代の心に、大人はどう向き合えばいいのでしょうか。ヒントとなったのは、俳優・坂上忍さんの言葉でした。不登校ジャーナリストの石井しこうさんの著書より、「地に足の着いた大人の回答」をご紹介します。

※本稿は、石井しこう著『学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること 』(大和書房)より一部抜粋、編集したものです。

不登校だけどアイドルになりたい。非現実的な夢を考えたらダメ?

同じような悩みを持った人がいました。17歳の女性で、彼女は病気も相まって引きこもっていました。「私はひきこもっているけど女優になりたい。女優になりたいなんて考えるのすら、おかしいのだろうか」と悩んでいました。

彼女の悩みに対する回答に私も悩みました。励ますつもりで「あなたも女優になれる」と言えば聞こえはいいですが、無責任です。私には「女優」と「ひきこもり」のあいだに、どれほどの距離があるのかわからないからです。

悩みに応えてくれたのが俳優の坂上忍さんです。俳優の養成も手がけている「坂上さんに聞きたい」と彼女が言ったのがきっかけでした。

坂上さんは彼女の悩みを真剣に聞き入ったあと、こう答えてくれました。

「あなたが女優になりたいって強く思っているなら、あきらめる必要はまったくないです。

でも、ずっと家にこもって悩んでいるだけならば、時間がもったいないとは思います。

今できることを考えて、具体的な行動をとったほうがいい。そうしたら気持ちは不安なままでも、目の前のことをやっているあいだは不安を忘れられるでしょう。1つ言えるのは、苦しい時期を価値のあるものにできるのは、ほかの誰かでもなく自分しかいないということです」

となりで聞いていた私も、これにはしびれました。なんて地に足の着いた大人の回答なんだろうと。

坂上さんの案に、私からも1つだけ追加させてください。夢を持つのはすばらしいことです。が、「なぜアイドルなのか」を深く考えるといいかもしれません。

たとえば「みんなを笑顔にしたい」ということが目的であれば、料理人や公務員にもできます。一歩踏みこんで、なぜアイドルになりたいのか、その問いに深く向き合うことで、夢の実現にぐっと近づきます。また行きづまったときにこそ光を与えてくれるでしょう。

しこうポイント!:夢を持つのはすばらしいこと

石井しこう

1982年東京生まれ。不登校ジャーナリスト。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校に。同年、フリースクールへ入会。19歳からはNPO法人で、不登校の子どもや若者、親など400名以上に取材を行なうほか、樹木希林氏や社会学者・小熊英二氏など幅広いジャンルの識者にも不登校をテーマに取材を重ねてきた。
現在はNPOを退社し不登校ジャーナリストとして講演や取材、「不登校生動画甲子園」の開催などイベント運営などでも活動中。【Yahoo!ニュース 個人】月間MVAを二度受賞。著書に『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ社)、『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社)など。

学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること

石井しこう著『学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること 』(大和書房)

ヨシタケシンスケ氏 推薦!

“ここに君の先輩がいる。
君と同じだった先輩は、たくさんいる。
先輩たちは、何が大事かを知っている。

学校に行っても行かなくても、するべきことは一つだけ。
大事なものを、大事にするだけ。“


「不登校の自分は、この先どうなるんだろう?」
経験者だからわかる事がある。

将来が不安でもやもやする日々、トンネルの中にいる君に届けたいメッセージ。