「相手の気持ちを考えて」ができるのは7歳から! シュタイナーに学ぶ3つの成長の段階

赤川幸子

小さな子ども同士がけんかをした際、大人は「◯◯君が悲しんでいるよ」というように相手の気持ちを考えるよう促すことが多いかもしれません。ですが、近年注目されているシュタイナー教育では、小学生以下の子どもにはそのような感情に働きかける伝え方をしないといいます。それはなぜなのか、シュタイナーこども園園長を務める赤川幸子さんの著書『「個性」と「才能」が伸びる シュタイナー式子育て』よりお届けします。

※本稿は、赤川幸子 (著)『「個性」と「才能」が伸びる シュタイナー式子育て』(かんき出版)から一部抜粋・編集したものです。

幼児期に取り組むのは「意志を育む」こと

幼児期はまさに「意志」を育む時期でもあります。

「意志」はもともと、子どもの奥深くに眠っています。幼児期を通じて、それを育てていきます。

「選択すること」が幼児期に難しいのは、まだこの「意志」が育っていないからです。

シュタイナー教育では、「7年のサイクル」で子どもの育ちを考えています。0歳から21歳までを、次の3つの期間に分けて考えます。

(1)0歳〜7歳 「動いてからだが育つ」→「意志」を育む
(2)7歳〜14歳 「感じてこころが育つ」→「感情」を育む 
(3)14歳〜21歳 「知ってあたまが育つ」→「思考」を育む

(1)0歳〜7歳 「動いてからだが育つ」→「意志」を育む

「意志」は、わがままとは違います。意志は、「『自分』が何をしたいのか」を感じる力です。

ポイントは「自分」。

「意志がない人」を「自分がない人」ということがあるのは、そのことを示しています。

赤ちゃんはそもそも、「自分」という存在がわかっていません。鏡を見て、びっくりしている微笑ましい姿を目にすることがありますよね。その時、赤ちゃんは、鏡に映っているのが自分とは思っていないわけです。だから一生懸命触ろうとするのですね。

自分の手をじーっと見つめたり、足を舐めてみたり……。赤ちゃんは自分の身体を、とても熱心に確かめています。そんなふうにまず、自分の身体を知覚し、自分という個別の存在にだんだん気づいていくのです。

抱っこをされたり、なでられたりすることも、必要です。なぜなら触ってもらうことによって、外側の刺激から「自分がここにいる」と気づくようになるからです。

幼児期はまず、身体を通じて「自分」を認識する。

「自分」に気づけば、「意志」は自然と芽生えるようになります。

0歳から7歳の時期に、シュタイナー教育で幼児期に身体を動かすことを特に大切にしているのは、個を認識し、「意志」を育むためでもあるのです。

(2)7歳〜14歳 「感じてこころが育つ」→「感情」を育む 

小学校時代と、中学時代のスタートに当たる次の7年間。

この時期には、美しい経験をたくさんさせましょう。それが「感情」を育むことにつながります。

幼児期に育てた「意志」は、このベースとなります。「意志」と「感情」の相乗効果で、「こんなことをしたい!」「これが好き!」といったように、「意志」の幅も広がっていきます。

「意志」の力が土台にあり、ここに自分の「感情」が乗ることで、好き嫌いをはじめとした判断ができるようになるのもこの頃です。

ただし、まだ自分の「感情」によることが多く、主観的な判断になりがちです。しかし、決してわがままを言っているわけではありません。これは「意志」と「感情」がきちんと育っている証拠です。

(3)14歳〜21歳 「知ってあたまが育つ」→「思考」を育む

思考の力が目覚め、抽象的な概念が捉えられるようになるのは、おおよそ中学校2年生以降です。

ですから、自分の好き嫌いではなく、客観的に判断できるようになるのもこの頃からです。

中学生活も半ばを過ぎると、本格的に知的世界へと入っていくようになります。知的教育が最適な時期というのは、実はこの頃から。

この時期に、これまでの「意志」と「感情」の土台をもとに、「思考」を育てることができれば、その先、自分の人生を切り開くことができるようになります。

そういった意味で、詰め込み型の早期教育には、疑問符もつきます。

0歳から7歳くらいまでというのは、確かに「教えたら、すぐに覚える」時期です。親としてはつい、知的な刺激を与えたくなります。しかし、そのような瞬間的な賢さは、「感情」や「思考」の土台にはなりません。

受験勉強のような形の知的刺激が、子どもの「思考」に影響を与えるのは、高校受験くらいからと考えるのが適当です。小学校入学前のお子さんを育てる親御さんがまず育てなければならないのは、子どもの「意志」であって「思考」ではありません。

この順番を間違えてはいけません。

人は20年かけて育つということを、ぜひ覚えておいてください。

幼児期に感情や思考に踏み込まない

感情が育ち、相手の感情がわかるようになるのは、小学校時代と、中学校時代のスタートに当たる次の7年間です。

ですから、けんかになったときには、お互いを物理的に離すことはしますが、「そんなことをして、◯◯ちゃんすごく辛かったよ」というような叱り方はしません。

感情には踏み込まないのです。

園ではまず、攻撃した子とされた子を離して、攻撃をした子に対しては、攻撃した手などが収まるまで先生のそばに座らせておきます。

子どもの感情に訴えるのではなく、「相手をたたいてしまう手がよくなかったね」というふうに対応します。

身体を意識して注意をします。「◯◯君が悲しんでいるよ」というような感情に働きかける伝え方は、小学生になってからでないと子どもには響きません。

早期教育で詰め込んだ知識は不安定

7歳までに身体をしっかり動かして「意志」を育み、小学生から中学生の間で「感情」を育てることができれば、「思考」は自然と育っていきます。意志がある感性豊かな子どもは、さまざまなことに興味を持ち、挑戦するようになるでしょう。

行動の幅だけでなく、興味、関心の幅が広がれば、それは「思考」の豊かさにつながっていきます。

「意志」や「感情」はこのように、思考の強力な土台となるのです。

ですから、まだ「意志」も「感情」も育っていないうちに、「思考」を重ねても意味はありません。建て物が地盤が緩いと倒れてしまうように、早期教育で詰め込んだ知識は、グラグラの地盤に立てたビルのように不安定なものです。

幼児期はなんでも吸収する時期のため、親はつい「今のうちに知識を詰め込んでおこう」という誘惑にかられてしまいます。しかし、うまくいくことはありません。

やりたいことが明確になっていない段階で、社会で生きていくための武器を渡しても使いこなすことはできないのです。

小さい頃の一瞬の賢さのために、焦って順番を間違えてはいけません。

まずは身体を使って「意志」を育むこと。

すべてはそれからです。 

「個性」と「才能」が伸びる シュタイナー式子育て

赤川幸子 (著)『「個性」と「才能」が伸びる シュタイナー式子育て』(かんき出版)

齊藤工さん、坂東龍汰さんらも受けた!! シュタイナー教育の本。

ー実際に、園に通っていた親御さんからの感想!ー
「必要なものは自然それだけ。シンプルで非認知能力を上げる子育てです」S.K さん
「どこでもできるので助かりました」H.Wさん

シュタイナー教育…オーストリア出身の思想家・哲学者ルドルフ・シュタイナーによって提唱された教育法です。

◎シュタイナー教育は、子ども 1 人ひとりの個性を尊重するとともに、潜在的な能力を引き出すことに重きを置いています。

◎シュタイナー教育は、クラス単位で平等的な教育を施す一般教育とは対照的な教育法。
人は約 20 年をかけて一人前になるという前提で、その 20 年を約 7 年ごとの段階に分け、それぞれの発達段階に適した教育をすることが最も重要と考えるもの。
子どもの学年や年齢、発達の段階なども加味し、最適な授業を行うのがシュタイナー教育の特徴です。

◎シュタイナー教育を受けた有名人
斎藤工さん(俳優)、坂東龍汰さん(俳優)、村上虹郎さん(俳優)、ミヒャエル・エンデ(作家)代表作『モモ』、サンドラ・ブロック(俳優)

◎「子どもの気持ちになってみよう」「子どものやりたいことを推測してみよう」「子どもの気持ちを尊重して、嫌だと言われたらやるべきことでもさせない」などと書かれている本は多いですが、これらは結果的にうまくいきません。

◎子どもの「意思」を尊重しすぎて何でも好きなことをやらせようとする行為は、子どもが自制心をはぐくむ機会を奪っていることになります。

◎この本では、子どもは大人とは異なる認識力の持ち主であることを改めて伝え、子どもがわかる「ことば」や「習慣」を具体的にお伝えしていきます。

◎園で実践していることばかりですので、その効果は実証済み。
親の意図が子どもにスムーズに伝わることで、親は子育ての大変さが大幅に軽減され、子どもは主体性が現れるようになり、親子の信頼関係に好循環が生まれてきます。