思春期の難しい親子関係を変えた「赤ちゃんへのタッチケア」
赤ちゃんにとって、親や養育者との肌と肌とのふれあいは、心と体の健やかな発達に欠かせない大切な要素です。その中でも「タッチケア」は、愛情と安心感を伝える手段として、近年ますます注目されています。タッチケアとは、単なるスキンシップを超えた、目的をもってやさしく触れる行為のことを指し、赤ちゃんの情緒の安定、身体の成長、親子関係の強化に多くの効果が期待されています。
本記事では、東京都で長年にわたりタッチケアの講座を開く『見えない学力が身につく勉強よりもお手伝い』(セルバ出版)の著者・粂井優子さんにお話を聞きました。(聞き手・文/一般社団法人Raise)
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赤ちゃんの情緒を安定させるためのコミュニケーション
幼い我が子との愛情コミュニケーションに繋がるタッチケア。その最大の効果は、赤ちゃんの「安心感」を高めることにあると言われています。
出生直後の赤ちゃんは、視覚や聴覚よりも触覚が最も発達しているため、優しく触れられることは、赤ちゃんにとって「ここは安全な場所」「自分は愛されている」というメッセージとなるのです。こうした感覚が、赤ちゃんの情緒を安定させ、泣きやむ、よく眠る、母乳やミルクの飲みが良くなるといった変化をもたらします。
また、タッチケアは赤ちゃんの脳や神経系の発達を促進するとも。やさしくなでたり、一定のリズムで触れることで、オキシトシンという「幸せホルモン」が分泌され、ストレスホルモンであるコルチゾールの量を減らす効果も確認されています。これにより免疫力が高まり、発達全般にも良い影響を与えると考えられているのです。
親子関係を深めるタッチケア
タッチケアは赤ちゃんだけでなく、親にとっても大きな恩恵があります。赤ちゃんに触れることで、親自身の緊張がほぐれ、オキシトシンが分泌されることで育児への肯定感が高まるという効果も報告されています。
実際、3人の子育てにおいてタッチケアを実践し、幸せ家族を築いてきた粂井さんも、同じようなことを感じていたと言います。
「子どもがまだ幼い頃のことですが、子どもたちはいつも私にしがみついて寝ていました。多くの親御さんがされるように、抱き上げてあやしたり、背中をさすってあげたり、自分の背におんぶしてあやしながら寝かしつけていました。
初めは、こうして子どもに触れることで私は自分の愛情を子どもに届けているのだと思っていました。ところが、タッチケアの私の師匠、中島直子さんが『子どもを産む、ということは、自分を無条件に愛してくれる人をこの世に誕生させること』と言われていたのを聞いて、子どもたちに触れられる時間は、子どもたちから無条件の愛をこちらが受け取っている時間でもあるなと思うようになりました。
そして、乳幼児期にかわしたタッチケアによる愛情の相互送信は、思春期親子の難しい関係を乗り越える時にも力を発揮してくれました。」と粂井さん。特に息子さんの思春期にタッチケアが有効だったといわれます。
粂井家が直面した息子の思春期