「スマホ授業」が集中できない理由は? オンライン学習の思わぬ弱点

西岡壱誠

今では当たり前になっている教育のデジタル化。学校では生徒1人につき1台のタブレット端末やパソコンが配布され、生徒一人ひとりの理解度に応じた学習を進められるようになり、個別最適な学習が実現しているそうです。しかし、著作家の西岡壱誠氏は、オンラインの授業動画だけで成績が上がる人は少ないといいます。

なぜ、オンラインでの勉強だけでは学習効果が上がらないのでしょうか? 西岡壱誠著『オンライン教育で日本はどう変わるのか?』から紹介します。


※本稿は、『オンライン教育で日本はどう変わるのか?』(西岡壱誠/講談社)から一部抜粋・編集したものです。

「幻想振動症候群(ファントム・バイブレーション・シンドローム)」とは

スマホを使った学習であれば全てにあてはまるかもしれませんが、オンラインでの勉強は集中力が切れやすいという面があります。

みなさんは「幻想振動症候群(ファントム・バイブレーション・シンドローム)」という現象を知っていますか?

なんだかかっこいい名前ですが、おそらく多くの人が体感したことのある現象だと思います。

例えばスマホをポケットに入れて歩いているときに、スマホが振動した気がして、「LINEか何かの通知が来たのかな?」と感じてスマホを確認したのに、実はなんの通知も来ていなかった、という経験はありませんか?

このように、「何も来ていないのに、スマホから何か通知が来たように感じること」を「ファントム・バイブレーション・シンドローム」と呼ぶのです。かっこいい名前の割に普通のことなのでネタにされやすい現象です。

スマホ学習は学習効果が下がる?

実は最近の研究で、「スマホをポケットに入れたまま勉強すると、何もスマホをいじっていなくても学習効果が低くなる」ということがわかりました。勉強中に1秒たりともスマホをいじっていない場合であっても、スマホをポケットに入れて勉強していると、「もしかしたら○○君から連絡が来るかもしれない」という意識が集中力を阻害してしまうのです。これこそがファントム・バイブレーション・シンドロームの恐ろしいところです。

授業動画をスマホで観ている場合、この現象が発生する可能性があります。なんとなくSNSの連絡が気になってしまうとか、別のアプリケーションからの通知でそっちに気がいってしまうとか、そんなことで集中力が落ちてしまいがちなのです。

オンラインの授業動画だけでは成績は上がらない?

総じて、授業動画で勉強する方がいつでもどこでも学べて、かつ一時停止したり早送りしたり、わからないところをもう一度見たりと、勉強の形を自分で自由に操ることができるという点で大きな利点があります。しかし、受動的な動画の見方になってしまう場合は学習効果が落ち、自分でコントロールできるからこそ、自己認識が間違っている場合は成績を上げにくいということになります。

実際、オンラインの授業動画だけですごく成績が上がったという話はあまり聞きません。そういう人がいないわけではないんですが、参考書や教科書などと組み合わせて授業動画を使って勉強することで成績が上がる、というケースの方が多いようです。うまく動画を活用できる人にとってはプラスになるのでしょうが、動画だけをメインにして成績を上げられるのかというと、なかなか難しいのかな、という所感を持っています。

オンライン教育で日本はどう変わるのか?

オンライン教育で日本はどう変わるのか?』(西岡壱誠/講談社)

コロナ禍を機に広まった「オンライン教育」は現在、中高・予備校・大学での学びを革新しつつあります。既に全国290万人の高校生のうち30万人が通信制高校に通ってオンライン主体の学習を行っており、近い将来には3人に1人がオンライン通学する社会が訪れると予想されています。しかし、そんなオンライン教育革命の実態は関係者以外にあまり知られていません。そこで、多数の学校に携わる教育ベンチャーを経営する著者が、通信制高校の仕組みから動画授業やオンラインコーチングのメリットとデメリット、オンライン教育時代の社会変化まで包括的に論じた、オンライン教育のすすめが本書です。