高校生発案の新規事業がすごい! リクルート主催「高校生Ring」で生まれたビジネスアイデア

小宮山利恵子

子どもたちが変化の時代を生き抜くためには、アントレプレナーシップ(変化の激しい時代を生き抜くためのマインド)が必要だと、教育専門家の小宮山利恵子さんは語ります。
人間にしかできない「問いを立てる力」や「自ら動く力」を伸ばすアントレ教育は、どのように実践されているのでしょうか?


高校生が斬新なビジネスプランを競い合う「高校生Ring」を、小宮山利恵子著『好奇心でゼロからイチを生み出す 「なぜ? どうして?」の伸ばし方』から紹介します。

※本稿は、『好奇心でゼロからイチを生み出す 「なぜ? どうして?」の伸ばし方』(小宮山利恵子/ディスカヴァー・トゥエンティワン)から一部抜粋・編集したものです。

「高校生Ring」で新しいビジネスプランを提案する10代たち

小学生が身近なテーマでビジネスを学ぶ一方で、高校生向けには、より本格的に社会課題の解決に取り組むプログラムも存在します。その1つが、「半径5メートルの問い」をきっかけにアントレプレナーシップを学ぶ機会を届ける、リクルート主催の「高校生Ring」です。

リクルートは、「新しい価値の創造」を経営理念の1つに掲げています。その一環として、1982年から新規事業提案制度「Ring」を実施してきました。この制度を利用して生まれたサービスが『ゼクシィ』や『スタディサプリ』で、「Ring」が40年以上続けてきたノウハウを高校生向けにアレンジして生まれたのが「高校生Ring」です。

「まだ、ここにない、出会い。」という言葉を大切にしているため、未来を生きる高校生一人ひとりの可能性を信じ、新たなチャンスと人との出会いをお手伝いしていきたい。そんな思いが込められた取り組みです。

ファイナリストに選ばれた5つの高等学校のチームが発表したプラン

2021年からスタートした「高校生Ring」は参加者が急増しており、2023年は前年度の4倍にあたる全国2万5827人のエントリーがありました。エントリー申込み受付後は、参加校内での審査を経て、リクルートによる2次審査を行い通過したのは30チームです。

この30チームには、現役のリクルート社員がメンターとして伴走し、ビジネスプランを練り上げて3次審査へと進みます。その中からファイナリストに選ばれた5つの高等学校のチームが発表したプランは次の内容です。

① 学校内購買のオンライン販売サービス「GET~より良い高校生活を~」(埼玉県立大宮南高等学校)

② 旅の記録をもとに最適な旅程をつくれる「旅のしおりをつくる・のこす『Bestrip』」(兵庫県西宮市立西宮東高等学校)

③ 生徒間でノートを共有する学習アプリ「みんスタ」(東京都千代田区大妻高等学校)

④ 外来魚の位置をマップ形式で提供するサービス「外来シュポット」(東京都立上野高等学校)

⑤ 患者やその家族をサポートする、ユニバーサルファッションに関する情報提供、アイデア企画・実施まで行うサービス「ユニバーサルクローゼット」(静岡県富士宮市星陵高等学校)

新たな価値は半径5メートルの小さな気づきから生まれる

審査の観点は、次の3つです。

「オリジナルな視点や切り口か?」
「ビジネスになりそうか?」
「圧倒的当事者意識があるか?」

この評価基準による審査でグランプリを受賞したのは星陵高等学校の「ユニバーサルクローゼット」でした。

このプランは、プレゼンテーションした生徒自身が持病のため自己注射をする際、「制服の裾で手元が見えづらく、打ちにくい」という課題に気づいたことがアイデアのきっかけだったそうです。

それから、ケガや病気がある人に向けた服を調べ、片手用のファスナーや襟元の広い服など、ユニバーサルファッションの事例を数多く発見。そこで「医療」と「衣料」の2つの「いりょう」をつなげ、クローゼットから服を取り出す感覚で気軽に情報にアクセスできるサービスを目指して発案したプランだと説明していました。

このプレゼンに対し審査員は、「自身の経験をきっかけにしたオリジナリティ、ビジネスとして幅広い形で発展していく可能性、パワフルなプレゼンテーションに込められた圧倒的当事者意識、すべてが非常に優れている。提案にとどまらず、実装して課題解決するまでをぜひ実現してほしい」と講評。「ユニバーサルクローゼット」が実現したら、病気やケガをしても誰もがおしゃれを楽しめる世界になるでしょう。

ファイナリストのプレゼンはどのチームも、「自分ごと」が起点になっていました。新たな価値は、半径5メートルの小さな気づきから生まれるのです。

まだ世界を知らない子どもでも、身の周りの「なぜ?」に気づけば、スティーブ・ジョブズがいうところの「ドット(点)」が増えていきます。その点と点がいつかつながれば線となり、面となって、世界を変えるきっかけになるかもしれません。

このプログラムの成果

✓身についた力
問題発見能力、ビジネスモデル設計力、プレゼンテーション力

✓子どもの変化
身近な「不便」を「解決策」に変換する思考プロセスを身につけた、当事者意識を持ってプロジェクトに取り組めるようになった

家庭でできるアイデア

お子さんとの会話で「ここが不便だよね」「こうだったらいいのに」という話題が出たらチャンスです! その場で終わらせず「じゃあどうすれば解決できるかな?」と問いかけてみましょう。

好奇心でゼロからイチを生み出す 「なぜ? どうして?」の伸ばし方

『好奇心でゼロからイチを生み出す 「なぜ? どうして?」の伸ばし方』(小宮山利恵子/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

スタディサプリ教育AI研究所所長が伝えたい、AIで何でもできる時代に「正解」よりも大切なこと
◎子どもの好奇心と可能性をぐんぐん伸ばす親の関わり方がわかる!
◎AI時代を生き抜くために必要な「ゼロイチ力」の育て方がわかる!
◎最先端アントレ教育プログラムを現地取材!豊富な実例と家庭での実践法がわかる!