子どもがリビングに来ない…を解決! 思春期でも会話が生まれる3つの工夫

しかまのりこ
2025.10.20 11:34 2025.10.21 11:50

親子の会話

思春期になると子どもが自室にこもりがちになり、「会話が減った」と悩む親御さんは多いでしょう。しかし、ちょっとした家具の配置や選び方の工夫で、思春期の子どもとの会話が生まれる空間を作ることができます。

一級建築士であり模様替え作家でもあるしかまのりこさんが、家族が集まるリビングダイニングにする3つのポイントを解説します。


※本稿は、『狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール』(しかまのりこ/彩図社)から一部抜粋・編集したものです。

子どもは、いつでも相談できるリビングが好き

子どもが成長し思春期以降になってくると、個室にこもる子どももちらほら出てきます。しかし、健全に育つ子どもは、自分の子ども部屋があっても、多くの時間をリビングで過ごす傾向があります。

筆者がある国立大学の医学部に通う学生に取ったアンケートでは、リビング好きの子どもが多くいました。

その理由も答えてもらったのが、次のものです。

「家族が集まって、話をしたりできる場所なので」(千葉県/女性/現役)
「家族がみんなでいられる場所だから」(群馬県/男性/現役)
「みんながいるから」(千葉県/女性/現役)
「家族と話せるから」(千葉県/女性/現役)
「自分も含めみんながくつろぐ場所だから」(東京都/男性/一浪)
「家族と話すときが一番落ち着くから」(神奈川県/女性/現役)
「家族とお話しするのはリビングだったから」(茨城県/女性/現役)

子どもたちは家族とのコミュニケーションを大切にしていることがわかります。何げない家族との会話の中で、自分なりに悩みを整理し、生きる勇気を身に付けているのではないでしょうか。

しかし、単純にソファやダイニングテーブルを置くだけでは、子どもや家族が集まるコミュニケーションの生まれるリビングになるわけではありません。

そこで、どうしたら家族が仲良く集まれるリビングにすることができるのか、見ていきましょう。

【相談例】思春期の子どもたちとの交流や会話を増やしたい

狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール
しかまのりこ著『狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール』(彩図社)より
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●家族構成
 夫婦+子ども2人(16歳・17歳)

●お悩みの間取り
 9畳のリビングダイニング

●相談内容とご希望
・子どもたちが帰宅後に自室にこもりがちなので、自然と家族が集まるリビングに変えたい。

【おもな家具のサイズ一覧:】リビングテーブル:幅110㎝×奥行53㎝/ラグ:幅160㎝×奥行160㎝/TV台収納:幅140㎝×奥行42㎝/リビング収納:幅140㎝×奥行33㎝/ダイニングテーブル:幅150㎝×奥行80㎝/ダイニングチェア:幅49㎝×奥行52㎝/ソファ:幅180㎝×奥行80㎝(高さ85㎝)

ご相談者は、夫婦と16歳、17歳の子どもの4人暮らし。お住まいのリビングダイニングはキッチンがつながったオープンキッチンの間取りです。

「最近、子どもたちとの会話が少なく、また子どもたちは帰宅したあと、そのまま子ども部屋にこもりやすいため、自然と子どもたちが集まりやすいリビングに変えたい」とのご希望でした。

ポイント1・動きやすい部屋

狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール
しかまのりこ著『狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール』(彩図社)より

家族が集まるリビングダイニングにするには、いくつかのポイントがあります。その1つ目は、動きやすい部屋にすることです。

ご相談者のリビングダイニングは、きちんと片づいていてきれいですが、幅180センチで高さが85センチのソファがリビングとダイニングを遮るように置かれています。

そのため、ダイニングでご飯を食べたあとにリビング空間へは、物理的にも心理的にも行きにくい状態になっています。

そこで、空間がつながるようにソファの向きを変えてみます。

上図をご覧ください。いかがでしょうか? これだけでも移動しやすく、くつろぎやすい部屋になりますね。

ポイント2・座り心地のよい椅子

狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール
しかまのりこ著『狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール』(彩図社)より

ポイントの2つ目は座り心地のよいダイニングチェアを置くことです。

一般的にダイニングチェアはダイニングテーブルと同じシリーズのものをまとめて4脚程度一緒に購入されると思います。

しかし、座高や脚の長さなど体格も違うのにすべて同じダイニングチェアでは、家族の誰かが座りにくいものです。

ダイニングチェアが座りにくいと居心地はよくないので、長居はしなくなるもの。そこで、ダイニングチェアを家族それぞれ好きなものに変えてみましょう。

ダイニングだからといって必ずしもダイニングチェアの中から選ぶ必要はありません。

座り心地やデザイン、色が自分好みで大きすぎなければ、オフィスチェアやゲーミングチェアでもよいのです。もしおしゃれにまとめたいのであれば、椅子の色やトーン・素材に統一感を持たせましょう。

そこで、次女はナチュラルカラーのウインザーチェアを、長女は形の違うウインザーチェアで色はクールなブラックを選びました。お父さんは座面が軟らかいものが好きとのことで、ライトグレーのファブリックの椅子を、そしてお母さんは今の椅子を引き続き使うことにしました。(図12-2)

いかがでしょうか? 家族それぞれが好きなダイニングチェアを置くことで、居心地のよいリビングになったと思います。また、あえてデザインが違う椅子を置くことで、とてもおしゃれな部屋になりましたね。

ポイント3・家族のお気に入りのスペース

狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール
しかまのりこ著『狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール』(彩図社)より

家族が集まるリビングダイニング、ポイントの3つ目は、子どもたちのお気に入りのスペースを作ることです。先ほどのダイニングチェアもお気に入りのスペースの1つになりますが、ソファについても作ってあげられればベストです。

現在置いている3人掛けのソファは、横並びにしか座ることができません。会話も弾みませんよね。

そこでユニット(モジュール)ソファに変えて、対面になるよう配置してみました。ユニットソファとは、一人掛けタイプ・二人掛けタイプ・カウチタイプ・オットマンなど形状の異なる複数のソファを自由に組み合わせて、好きなように配置ができるものです。配置の自由度も高く、模様替えしやすい商品になります。

今回は数種類のユニットソファを置きます。

またリビングに置くテーブルも大きいものを1つ置くのではなく、軽くて移動のしやすい直径35センチの円形テーブルを2つ置きました。

TVを置く台はスタンド式に変えて、自由な角度で見られるようにします。(図12-3)

いかがでしょうか?

対面にソファが配置されたことで、家族が自由に座ることができます。

自由度が上がると、子どもたちもお気に入りのスペースを見つけやすいですね。自然と家族の会話も弾みます。

思春期のダイニングは横並びも検討

狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール
しかまのりこ著『狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール』(彩図社)より

しかまのりこ著『狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール』(彩図社)より

ここで思春期を迎えた子どもがいる場合のダイニングテーブルについても考えてみましょう。

子どもが中学生~高校生になり、塾や部活など家族全員がそろうことが少ない場合は、狭いスペースでも設置が可能な横並びで食事をするスタイルがオススメです。

横並びスタイルは思春期など衝突の多い時期にもぴったりです。というのは、思春期などに対面で食事をするとどうしても親から子どもへの過干渉が多くなりがちだからです。

心理的にも、人は対面すると緊張や対立が生まれやすいといわれており、横に座る場合は親愛や同調が生まれるという報告があります。

そこで奥行45センチ×幅120センチのフリースタイルデスクを2つ、キッチンカウンターに沿わせて置いてみます。幅240センチの簡易なカウンターテーブルができましたね。ダイニングの変化に合わせて、ユニットソファも少しレイアウトを変えてみました。(図12-4)

このフリースタイルデスクは意外と万能です。スチール製なのでマグネット式コンセントや小物を下げるフックも付けることができます。

またフリースタイルデスクを突き合わせて置けば、幅120センチ×奥行90センチの簡易なダイニングテーブルに変身します。テーブルクロスやテーブルマットを敷けば、普通のダイニングテーブルと全く変わらないですよね。(図12-5、図12-6)

狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール
しかまのりこ著『狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール』(彩図社)より
狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール
しかまのりこ著『狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール』(彩図社)より

ユニットソファも、子どもたちが好きな場所を見つけられるように配置を変えてみました。

いかがでしょうか? 動きやすさや居心地の良さが、家族が集まるリビングダイニングのポイントになります。

また思春期の過干渉など直接的な衝突を避けながらも、子どもがリビングに安全な居場所を見つけられる仕組みを考えることが大切です。

しかまのりこ

模様替えアドバイザー/一級建築士/建築基準適合判定資格者
一級建築士として延べ5,000件以上の住戸の設計・検査・審査に携わる。また、これまで500軒以上のリビング・子ども部屋の模様替えを行った実績から、模様替えのスペシャリストとして、日本テレビ、テレビ東京、TBSテレビ、FM横浜、扶桑社、朝日新聞出版社、ダイヤモンド社などTV・ラジオ・雑誌でも活躍中。著書に『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社)

狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール

狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール』(しかまのりこ/彩図社)

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