「くやしい」「ドキドキ」「助けて」…子どもの心を守る“感情を言葉にする力”の育て方

丘山亜未

泣いたり笑ったり怒ったり…子どもも大人と同じように、毎日たくさんの感情を経験しています。しかし、「うれしい」「かなしい」だけでは表しきれない気持ちを、どう言葉にすればいいのかはまだ難しいもの。

子どもが自分の気持ちを言葉にする力を伸ばし、自分を守る言葉を身につけるにはどうしたら良いのでしょうか? モンテッソーリ教師の丘山亜未さんの著書から、モンテッソーリ流・子育てのヒントをご紹介します。


※本稿は、『1分だけ子どもを待ってみる モンテッソーリ流 子どもの才能を伸ばす100の小さなこと』(丘山亜未/青春出版社)から一部抜粋・編集したものです。

「気持ちを言葉にする」手助けをする

感情をそのまま感じて言葉にすることは、実はとても難しいことです。
緊張しているのに笑ってしまったり、悲しいのに「平気だよ」と言ってしまったり、寂しいのに怒ってしまったり──。そんなふうに自分の本当の気持ちに気づけないことは、大人にもありますよね。

子どもも同じです。泣いたり笑ったり怒ったりしながら、毎日たくさんの気持ちを経験していますが、その気持ちに名前をつける言葉は、まだまだ限られています。
「うれしい」「かなしい」だけでなく、「ほっとした」「くやしい」「ドキドキする」など、感情の言葉が増えるほど、子どもは自分の気持ちを整理できるようになります。

「今はしょんぼりなんだね」「ちょっとプンプンしてるね」と気持ちに名前をつけてもらえると、子どもは安心します。
さらに、大人が「今、緊張しているから深呼吸するね」と、自分の気持ちを扱う姿を見せることで、子どもは「感情はコントロールできるものなんだ」と学んでいきます。

感情の言葉を増やすことは、自己理解や他者理解、ストレスへの対処力、そして表現力の土台になります。絵本や歌から感情の言葉を拾ったり、色や顔で“気持ちのカード”をつくったりするのもおすすめです。
感情の言葉が少しずつ増えていくたびに、子どもの心は整理され、人への思いやりや表現力が育ちます。

自分を守る言葉の使い方を教える

おもちゃを取られて何も言えないままでいる子。
言葉が出てこなくて、思わずお友達を押してしまう子。
「やめて」と言えずに、友達と一緒にいることが負担になってしまう子。
そんな姿を見て、どう関わればいいか悩む親御さんは少なくありません。

子どもに「困ったら『やめて』『助けて』って言っていいんだよ」と伝えることは、とても大切なことです。誰にも頼らずに我慢するのではなく、必要なときに声を出し、助けを求められることこそ、本当の自立につながります。

「やだよ」「やめて」という短い言葉は、相手を傷つけるためではなく、自分を守るための大事なお守りです。
「一緒に言ってみようか」と実際声に出してみることで、次の日には小さな声で「やめて」と言えるようになることもあります。

大人がそばで受け止めながら、安心の中で練習することで、子どもは少しずつ言葉を自分のものにしていきます。

本当にやさしい人は、相手を受け入れる言葉だけでなく、境界線を示す言葉もきちんと伝えられる人。自分を守れる安心感があるからこそ、相手にもやさしくできるのです。

「わからないから教えて」「今はやめてほしい」「近いからもう少し下がってね」など、具体的なフレーズを教えてあげると、伝えやすくなります。

自分を守る言葉で、子どもの心に安心をベースとした人間関係を育てていきましょう。

1分だけ子どもを待ってみる モンテッソーリ流 子どもの才能を伸ばす100の小さなこと

1分だけ子どもを待ってみる モンテッソーリ流 子どもの才能を伸ばす100の小さなこと』(丘山亜未/青春出版社)

本書では「モンテッソーリ流・子育てのヒント」を100個紹介。
忙しい方でもできるように、最短10秒でできるような「簡単でシンプルなことだけ」を厳選してまとめました。
どこから読んでいただいても構いません。空いた時間に、1日たったひとつでいい。そのひとつで、子どもとの暮らしがガラリと変わります。
気になったものから、試してみてください。