中学受験で問われる「本当のかしこさ」とは? 親が知っておきたい入試の新常識
中学受験といえば、「知識の詰め込み」というイメージを持つ親は少なくありません。しかし、近年の首都圏中学入試を分析すると、その常識は大きく変わりつつあります。入試問題の変化から見えてきた、これからの時代に求められる「本当のかしこさ」とは?プロ家庭教師「名門指導会」の西村則康先生、辻義夫先生の著書よりご紹介します。
※本稿は、西村則康、辻義夫(著)『本当にかしこい子になる!勉強メンタルの育て方』(ウェッジブックス)より一部抜粋、編集したものです。
難関中入試から見えてくる「本当のかしこさ」とは
近年、首都圏では中学受験が過熱しています。増加の背景には、変化している教育の中身への不安が反映されているように感じます。
中学受験をするメリットは、「小学生のうちから学習習慣が身につく」「高校受験がないぶん、中高の6年間をのびのびと過ごせる」「学力勝負の一般選抜であっても、学びへの目的意識を見る総合型選抜であっても、その対策をしっかりしてくれるため大学受験に有利」などいろいろあります。
ただ一つ懸念されるのは、中学受験は当日の学力テスト一発勝負で合否が決まってしまうため、ハードな受験勉強になりやすい点です。実際、中学受験で求められる学習内容は、小学校の授業で習う内容の応用問題や発展問題が中心になるため、そのための対策が必要になります。
そう言うと、中学受験はできるだけたくさんの知識を覚えさせ、たくさんの問題をくり返し解かなければ、志望校には入れないと思い込んでしまう親御さんがいます。たしかに以前は、そのような傾向がありました。実際、そのやり方で合格した子も多く、それが正しい勉強法だと思い込んでいる人は少なくないのです。
しかし、いまは中学入試の中身も大きく変わってきています。
変化している中学受験
東京・神奈川を中心とする首都圏の中学入試は、2月1日をピークに5日ごろまで続きます。その後、私たちが代表を務めている中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」では、現場で指導や親子のサポートにあたっている講師たちと一緒に、その年の入試問題を解き、各学校でどのような問題が出題され、どんな力が求められているかを分析します。
そこから見えてきた近年の入試傾向は次の2つ。一つは全体的に、必要とされる知識は以前より易しくなっていること。もう一つは知識そのものではなく、いまある知識を活用しながら、自分なりに考え、自分の言葉を使って答えるといった「思考力」や「表現力」を問う問題が増えていることです。
ひと昔前までは、難関校の算数や理科の入試では、重箱の隅をつつくような難問・奇問がよく出題されていました。中学受験で難関校を目指す子は、小さいころから一生懸命勉強をしてきた子が多く、問題集や過去問で徹底的に対策もしてきています。そういう子たちを振るい落とすには、それ以上に鍛え上げてこなければ解けないような難問・奇問を出す必要があったからです。
しかしそれが、できるだけたくさんの知識を詰め込み、たくさんの問題をくり返し解くという「間違った勉強法」を増進させてしまうことになりました。「中学受験の勉強は大変」といわれているのは、そのころからの勉強法がいまだ見直されていないからです。
ところが、昨今の入試は、必要とされる知識自体はそれほど高度なものは見当たりません。なぜなら、これらの知識や技能は、大人になればいずれAIが代用してくれるからです。そんなことに小学生の大事な時間を潰してほしくない。それよりも、うちの学校はこういう学習意欲や姿勢を持った子に来てほしいという「求める生徒像」を明確に打ち出すような問題へと変わりつつあるのです。
具体的にどのような変化が見られるようになったかというと、その場で考えさせる問題が多く出題されるようになりました。小学生が読むには苦戦するような非常に長い問題文から始まり、複数の図や資料を読み解きながら状況や条件を判断し、自分の持っている知識やこれまでの経験を総動員させて、自分なりに試行錯誤したり、創意工夫したりしながら、その場で考えながら答えを見つけていく問題があちこちの学校で見られるようになったのです。以前から難関校ではこのような問題を出題する学校はありましたが、いまは中堅レベルの学校でもその傾向が高まっています。
つまり、これまでの「丸暗記」や「大量演習」といった古典的な受験勉強は通用しなくなっているということです。
入試という制限時間があるなかで、複数ページにもわたる長い文章を読む。そして、複数の資料を読み解き、状況を把握する。こうしたことは、小学生の子どもにはなかなか高度です。そういう点では、近年の中学入試はむずかしいと感じるかもしれません。ですが、問われている知識そのものはとびきりむずかしいものではなく、きちんと最後まで問題文を読めば解けるものも多い。
ところが、2025年度入試の結果を見ると、不思議なことに合格者平均点がそこまで上がっていないのです。そして、合格者平均点と受験者平均点の差は大きく広がっています。勝敗のポイントはどこにあったのでしょうか?
現時点での学力よりも「学ぶ意欲」を見る入試問題に
入試問題には、その学校の個性が表れます。首都圏の学校の場合、受験に必要な科目は、国語・算数・理科・社会の4教科が主流ですが、どの教科においても「こういう知識を持っている子に来てほしい」「こういうことに関心が向けられる子を育てていきたい」など、学校が求める学力レベルや生徒像があり、それを入試問題で見極めています。以前の入試はどちらかというと「学力」を重視するところがありましたが、近年はいまある学力よりも、これまで「どのように勉強をしてきたか」「どのような生活を送ってきたか」といった学習履歴や生活履歴を見たいという学校がえてきているように感じます。それはすなわち、「正しさ」よりも「学ぶ意欲」、「結果」よりも「過程」を見ているともいえます。
なぜ学校側がその部分に目を向けるようになったのかというと、机に向かって勉強ばかりしていては、その後、大きく伸びていかないことを実感するようになったからです。「与えられた勉強はできても、自分で考えようとする子が以前より少なくなった」。危機感を覚えた学校は、難問や奇問で入学者を選別するのではなく、「どのように考えて、この問題を解こうとしたのか」が見てとれる問題にシフトチェンジし、 11歳、12歳の子どもなりにその子がどのように考えながら、いままで過ごしてきたかを見るようになったのです。それが、近年多くの学校で見られるようになった思考力や表現力を求める問題なのです。
西村 則康、辻義夫(著)『本当にかしこい子になる!勉強メンタルの育て方』(ウェッジブックス)
◎ほんとうの意味で頭のいい子=勉強メンタルが育っている子!
「頭がいい」とはどういうことかを徹底的に言語化!
かしこさの新機軸=「勉強メンタル」を育むために親ができること
これまでプロ家庭教師として、たくさんの子どもたちと接して気づいたのは、頭のいい子には、ある共通点があるということ。
授業を聞くときも、問題を解くときも、
「なぜそうなのだろう?」
「そういうことか!」
「ということは、こういうときにも使える知識かもしれない」
「大丈夫、自分なら解ける。絶対解いてみせる!」
と常にこころの動きが伴っているのです。
このこころのベクトルを、私たちは「勉強メンタル」と呼ぶことにしました。
「頭がよくなる」とうたった書籍は数多く存在しますが、本書ではうわべのノウハウではなく、「頭がいい」とはどういうことなのか、その本質を考え、「勉強メンタル」という一生ものの力を育む方法を提案します。
・「勉強メンタル」とは「学びに向かう姿勢」
・すべての学びの土台は「好奇心」
・自分に引き寄せて考える力
・「自由な勉強」と「覚えて、鍛える勉強」
・「当たり前」のハードルを下げてみよう
「メンタル」と聞くと、「やはり勉強には強い精神力」が必要なのでは…と思うかもしれません。しかしそうではなく、すべての学びの土台である好奇心、「学びに向かう姿勢」が、勉強メンタルでもっとも大切なこころの動きです。
