マンガで読書の効果は得られる? 研究者の回答「読み手と作品による」

猪原敬介

読書効果の本質とは何でしょうか。そして、マンガやライトノベルといった比較的ライトな読書でも、その効果は得られるのでしょうか。本稿では、書籍『科学的根拠(エビデンス)が教える 子どもの「すごい読書」』より、読書がもたらす本質的な効用について、科学的知見に基づいて解説します。

※本稿は、猪原敬介著『科学的根拠(エビデンス)が教える 子どもの「すごい読書」』(日経BP)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

読書効果の本質

読書効果の本質、あるいは、メカニズムとは何なのでしょうか。

前著『読書効果の科学』では、
● 読書は本来的にはポジティブでもネガティブでもない、中性の刺激にすぎない
● それが読者と相互作用することでプラス効果になったり、マイナス効果になったり、プラスマイナスゼロになったりする
● プラス効果を享受する人もマイナス効果となっている人もいるが、世の中全体で平均すれば、ややプラスとなっているために「読書をするとよい効果がある」ということになっている
という意味のことを書きました。

例えば、いかに名作の古典文学であっても、それを読む読解力を持たない子どもや成人にとっては、プラス効果を生じさせえないでしょう。「読めなかった」「面白く感じなかった」という挫折体験は、マイナス効果にさえなるかもしれません。一方で、人間心理の巧みな表現や格調高い文体や語彙選択は、それを受け入れる高い読解力を持った読み手にはプラス効果を生みます。

反対に、まだ社会的地位が高いとはいえないマンガやライトノベルといった「軽読書」でも、それらを読むのに釣り合った読解力の子どもや成人には十分にプラス効果を生む刺激となるでしょう。一方で、大学受験のための学力向上を至上命題とする高校生などには効果が薄いと考えられるので、近年話題の新書や古典を読むことが有効かもしれません。

このうち、究極的なプラス効果の例が、この本を読んで人生が変わった、この本があったからこれまでやってこられた、という「一生ものの本」との出合いです。その本質は、「どこまでも読み手次第な、読み手と本との相互作用」といったところです。

「マンガやライトノベルは読書に含まれるのか」問題

マンガやライトノベルの話題が出てきたので、これらの「軽読書」が読書に含まれるのか、という点について、簡単に私見を述べておきたいと思います。

私は読書を「文字中心の媒体を通して、物語や、ある程度の分量を持つ整理された情報を取り込む」行為のことだと考えています(※1)。その点からいえば、絵が中心であるマンガは読書ではなく、ライトノベルは読書である、といえます。

しかし、「読書であるか否か」がそれほど重要でしょうか。

おそらくそうではないでしょう。きっと本当に問いたいのは「いわゆる『読書』と同じような効果がマンガやライトノベルからでも得られるのか」ということだと思います。

この問いへの答えは「YES。ただし読み手と作品による」です。

読書効果としてエビデンス(科学的根拠)が示されている言葉の力・知能・学力・共感力・思考力の向上といった現象自体は、マンガでもライトノベルでも起きうるはずです。

これは先ほど書いたように、「個々の作品の中身から読み手が得るものがあるか」という点が重要だからです。

マンガやライトノベルを含めたすべての本の中に、ある時点で、その読み手に読書効果を起こしやすいものとそうでないものがある、というイメージです。読書効果を起こしやすい本がたまたま「マンガ」に多いか、たまたま「文学作品」に多いか。「マンガだからダメ、文学作品だからよい」というジャンルの問題ではなく、「その作品が素晴らしいかどうか」という個々の作品の出来の問題……でさえありません。

そのとき、その読み手が読んで、その作品から得られるものがあるかどうか。それだけが問題です。先ほどの繰り返しになりますが、「どこまでも読み手次第な、読み手と本との相互作用」が読書効果の本質だと思います。

(※1)猪原敬介(2024)読書効果の科学:読書の”穏やかな”力を活かす3原則. 京都大学学術出版会.

科学的根拠(エビデンス)が教える子どもの「すごい読書」
猪原敬介著『科学的根拠(エビデンス)が教える 子どもの「すごい読書」』
本が好きな子にも、ちょっと苦手な子にも。
本を読めば、将来、直面する「壁」や「迷い」を乗り越えやすくなる。

本の効果は、「頭がよくなる」だけではありません。
探究心・知的好奇心・思いやり・友達や周囲の大人とのコミュニケーション力...読書の効果を無理なくいいとこ取りするための、科学的根拠が教える読書法!!