“感情が幼児期のまま”の中高生も 不登校や依存症の背景にある「愛着障害」はなぜ自然に治らないのか
不登校、ひきこもり、スマホ依存、激しい暴言……その背景には、特定の人との心の絆が十分に築けていない「愛着障害」が隠れていることがあります。
愛着障害は、単なる性格の問題ではありません。それは「関係性の障害」であり、一生を左右しかねない「感情発達の障害」でもあります。本稿では、愛着障害がなぜ「見守るだけ」では改善しないのか、そして現代の深刻な社会問題とどう繋がっているのか、そのメカニズムと大人がすべき介入について、米澤好史先生の著書より解説を抜粋します。
※本稿は、米澤好史 (著)『愛着障害スペクトラム こどもの気持ち&支援スキル大全』(講談社)より一部抜粋、編集したものです。
「関係性の障害」であり「感情発達の障害」
愛着とは「特定の人と情緒、感情、気持ちで結ばれるこころの絆」です。情緒、感情、気持ちでつながるという点がポイントです。
気持ちをわかり、認めてくれる人がいる─そう感じることで人は、相手(愛着対象)とつながります。そして愛着対象との関係のなかで自分の感情を認識し、コントロールし、自立行動ができるようになっていきます。
大人でも、自分の気持ちをわかってくれる人がいたら、その人と「つながった」という実感を持てるでしょう。そして、その人との関係のなかであらためて自分というものに気づき、成長していきます。
愛着をこのように理解できると、今度は愛着障害とは何かがわかってきます。愛着障害とは、愛着が十分に形成されていない状態と捉えるべきなのです。
愛着という絆は人と人との間、すなわち関係のなかで結ばれるものです。したがって愛着障害とは、人との関係がうまくいっていない「関係性の障害」であると言えます。
また同時に、「感情発達の障害」であるとも言えます。愛着形成が十分でないから、愛着を基盤として発達する感情、そのコントロール、そしてその先にある自立する力などがきちんと育っていない状態です。
「関係性の障害」であり「感情発達の障害」でもある─この2つの大切なポイントを押さえておくと、愛着障害がある人(こどもだけでなく、大人も)が不適切行動を起こしてしまう原因が見えてきます。
不適切行動の原因は、実は本人の感情にあります。感情が十分に発達していないから、こどもは周囲を困らせる行動に出てしまうのです。このことは、支援の方法に関係する重要なポイントなので、必ず覚えておいてください。
と同時に、注意していただきたいことがあります。〈不適切行動の原因が感情にあるなら、歳を重ね人として成熟するにつれ、愛着障害は自然に治るのではないか〉─そう期待する方がおられるかもしれませんが、残念ながら自然に治ることはまずありません。
年齢と感情の発達は無相関です。中学生、高校生であっても、感情の発達は幼児程度というこどもも現実にいます。ですから「自然な成長に期待して見守る」のは適切な対応と言えません。愛着障害が疑われるときは、大人が適切に介入し支援をする必要があります。
さまざまな社会問題にもつながっている
愛着の対象となる人(愛着対象)がいて絆が結ばれているからこそ、ネガティブな感情を減らしポジティブな感情を増やすことができます。愛着の問題を抱えたこどものネガティブ感情は、減ったりなくなったりしません。愛着障害では、それが不適切行動の原因になります。
たとえば、ネガティブな感情がなくならないことは、ネガティブな感情を生じさせた場所の「忌避」(避けること)につながります。こどもの場合は幼稚園、保育園、学校への不登校(不登園)、大人なら出社拒否、職場忌避、あるいは就労逃避として、さらには「ひきこもり」としてそれがあらわれます。
登園しぶり、登校しぶりにはじまり、登園・登校しても親から離れるのを極端に嫌がる「母子分離不安」も、愛着の形成不全から起きています。親と離れることで生じる不安がなくならないから、泣いたり喚わめいたりしてでも離れまいとするわけです。これは幼児に特有の現象でしたが、近年では小学生、中学生、高校生と、高年齢化する傾向が顕著に見られます。
愛着障害は、ゲーム依存、ネット依存などの依存症(アディクション)にもつながります。特定の人と愛着が形成されていれば、そこから離れてゲーム、スマホに熱中することがあっても、人はまた愛着対象へと戻ってきます。愛着がしっかり形成されていて、探索基地があるからです。
依存症の人は、この戻る動線が生じていないのであり、探索基地が機能していないのです。スマホ依存、アルコール依存、ギャンブル依存、薬物依存など、思春期以降の青少年や大人が陥る依存症にも、同じ探索基地の欠如が関係しています。
また、ここ最近、私が相談にあずかることが急速に増えてきた、
・お迎え逃避(園にお迎えに来た親とすんなり帰らず逃げ回る)
・部屋とび出し(授業中に教室をとび出し、追いかけるとさらに喜んで逃げる)
・家出・徘徊(たとえば友達の家を渡り歩き、溜まり場にたむろする)
なども愛着の問題から起こっています。とくに最後に書いた家出・徘徊が都市部で深刻な課題となっているのは、誰もが知るところでしょう。東京の「トー横」、大阪の「グリ下」のように社会問題化すること自体が、愛着障害が増え続けている証拠です。
以上、愛着障害を背景とするさまざまな行動や現象を説明しましたが、それらを示すこどもたちは、いずれも感情の問題を抱えています。
愛着の絆が不十分で、誰もネガティブな感情を減らし、なくしてくれないと、感情のコントロールができなくなります。愛着障害の人は絆のなかで不安や恐怖などのネガティブな感情を減らす・なくすことができないので、何かにぶつけることでその不安・恐怖などを解消しようとします。それが暴言や、ときに攻撃行動・破壊行為としてあらわれます。
わかりやすいのが、虐待を経験したこどもたちの例です。家庭で被害者となった彼ら・彼女らは、学校など「外」において、家でされたようなことをしてしまいます。大人の仕打ちを一身に受け止めるのがしんどく、発散しなければ生きていけないので、そうせざるを得ないのです(反応的攻撃性)。
さらにその際、家で大人に浴びせられた罵声・暴言を、〈こうすれば人はいうことを聞くだろう〉と考えてそのまま使う被害児もいます(道具的攻撃性)。
ここで、攻撃行動は発達障害からきているのではないか、と疑問に思った読者がいるかもしれません。確かに発達障害のこどもも攻撃行動を示す場合がありますが、発達障害そのものは攻撃行動の原因ではありません。発達障害がある人はその特性ゆえに愛着障害を抱えやすく、その愛着障害が攻撃行動につながっているのです。
言い換えると、愛着障害を二次障害として抱えているから攻撃行動に及んでしまうと捉えるべきです。
米澤 好史 (著)『愛着障害スペクトラム こどもの気持ち&支援スキル大全』(講談社)
発達障害の支援では解決しなかった「こども」をめぐる課題に効果的な策を提案!
約40年のキャリアを誇る支援者が知見のすべてを集めてつくった決定版がここに!!
●大声や奇声を発する ●親や先生から逃げる
●大人にまとわりつく ●要求がエスカレート
●自分の非を認めない ●危険行為をくり返す
●急に暴力的になる ●物騒なモノを好む
家庭や学校を揺るがしかねない、手ごわい「不適切行動」……。
こどもがそんな言動に及んでしまう原因は「愛着障害」にあった!
不適切行動の引き金となる「こどもの気持ち」をマンガでわかりやすく解説。
さらに、その「気持ち」を変えて不適切行動を減らすことのできる「愛着修復支援」の基本的なスキルを図解。愛着障害支援の第一人者が、家庭でもできる効果的な対応法を提案します。
これまで虐待やネグレクトと安易に結びつけられていた「愛着」の問題をより広い視点からとらえ直し、数々の誤解を解くコラムも多数収録。
家庭で、学校で、それ以外の支援の現場で必携となる1冊です!!!
