愛着障害の子にまず必要なのは「ポジティブな感情」 “安全基地より安心基地”を目指す関わり方のコツ

米澤好史

この記事の画像(4枚)

特定の大人との間に安心感や信頼感が育っていない「愛着障害」にある子どもは、自分の感情をどう扱えばいいのか分からず、不安を抱えています。

そんな子どもの支援において、大人がまず目指すべきなのは、子どもの「安心基地」になることだと、米澤好史先生は解説します。

愛着障害を抱える子どもには「守ってくれる存在=安全基地」が必要だとよく言われます。しかし、まずは「自分をいい気持ちにしてくれる存在=安心基地」を与えてあげるところから始める必要があると言います。その理由は何でしょうか?

米澤好史先生の著書より、心理的メカニズムと、具体的な関わり方のスキルをご紹介します。

※本稿は、米澤 好史 (著)『愛着障害スペクトラム こどもの気持ち&支援スキル大全』(講談社)より一部抜粋、編集したものです。

まず、こどもの「安心基地」になることを目指す

定型発達では、「安全基地」と「安心基地」がほぼ同時につくられていくとも言え、どちらからでもつくれそうな気もします。また、どの基地からつくってもよさそうに見えます。しかし、支援ではこれは間違いです。

キーパーソンはまず、安心基地になるところから始めます。言い換えると、こどもが〈この人は自分をいい気持ちにしてくれる〉と思える、そんなかかわりを心がけます。

安全基地とは、こどもが〈私はこの人に守られている〉と、そう感じられる人のことでした。しかし、感情が十分に育っていない愛着障害のこどもに、いきなりそのように感じさせることはできません。大人が〈守ってあげる〉という思いでかかわっても、こどもが〈守られている〉と捉えない―そういう「すれ違い」が起こり得るからです。

ですが、こどもを〈嬉しい/楽しい/清々しい〉といったポジティブな気持ちにする―すなわち安心基地になる―ことは、誰にでもできます。まず安心基地となり関係性をつくったうえで安全基地、そして最後に探索基地を目指す、というつもりでかかわるようにします。

感情に名前をつけて明確化

愛着障害を抱えたこどもは、愛情を注がれても受け止め方を知らず、一瞬の快さは感じても、わいてきた気持ちが何であるかはわかっていません。この支援では、キーパーソンとのかかわりのなかでわいた感情を、こどもに代わって大人が言語化して教えます。そのようにして「感情学習」を進め、愛情を受け止める器をつくるのです。

キーパーソンは、こどもがいま感じた気持ちを見抜き、即座に言語化します。これは普段のあらゆる生活場面で心がけたいかかわりですが、必ず「いい気持ち」をラベリングしてください。

とくに支援の初期には、嫌な気持ちをラベリングすると、その気持ちが膨れ上がり不適切行動を誘発します。ですので、嫌な気持ちはラベリングしません。あるいは、支援が進み、こどもの成長が見られた頃にごく軽くラベリングする程度にとどめます。

ポイント:いつも「同じ」伝え方でくり返し提示する

相手に的確に気持ちを代弁されると、誰でも〈この人は自分をわかってくれている〉と感じます。「いい気持ち」を言い当てる人には、他の人にはない特別な「つながり」すら感じるはずです。こどもも同じように感じます。だから根気強くラベリングを続けることで、キーパーソンは安心基地、ひいては安全基地になれるのです。

大切なのは毎回同じ表現で伝えることで、そのようにして「気持ち」と「名称」がぴったり一致するように導いてあげてください。また、高学年や愛着障害が強いこどもは、はっきりと言いすぎると受け入れないケースが多いので、たとえば「いまの気持ちはいい感じかな~」などと、やんわり・さりげなく伝えます。

キーパーソンを意識させる

単にラベリングするだけでなく、さらに一歩進んで「誰」と「何」をした結果その「感情」が生じたのかを、一連のものとしてこどもに意識させます。これによってキーパーソンの存在を、よりいっそうこどもに意識づけられます。

具体的に何をするかというと、キーパーソンとこどもが、一対一で一緒の活動をします。そのうえで感情のラベリングを行うことで、

行動……キーパーソンがこどもと同じ作業をし、
認知……それによって同じことが起こったと確認し、
感情……同じいい気持ちになったことを確認する。

と「行動―認知―感情」を連ねて(=連合)ひとつのセットにしていきます。これを何度もくり返すと、こどもは次のようにパターン学習します。

〈この人と一緒にAするとBといういいことが起こり、Cという「いい気持ち」になる〉さらにそれは、〈嬉しい気持ちになりたいから、またこの人と一緒にAしよう〉という「意欲」へとつながっていきます。

また、キーパーソンとの一緒の活動を通じて〈自分もやればできる〉という真っ当な効力感を味わえば自己評価は上がっていき、不適切行動の多くは自然に消滅します。

ポイント:「誰と」が必ず明確になるように

「誰」にあたる要素、つまりキーパーソンと一緒にその活動をしていることまで言語化するのがポイントです。言葉にすることで、初めてこどもは、キーパーソンがいるからこそポジティブな気持ちになれると意識できます。そのような意識づけを地道に続けることで、キーパーソンは愛着対象という「特定の人」になっていけます。

誰と一緒ならこのいい気持ちになるかを確認しておくことがいちばん大事なことで、感情発達の支援と関係性の支援を結びつけることができるのです。

愛着障害スペクトラム

米澤 好史 (著)『愛着障害スペクトラム こどもの気持ち&支援スキル大全』(講談社)

発達障害の支援では解決しなかった「こども」をめぐる課題に効果的な策を提案!
約40年のキャリアを誇る支援者が知見のすべてを集めてつくった決定版がここに!!

●大声や奇声を発する ●親や先生から逃げる
●大人にまとわりつく ●要求がエスカレート
●自分の非を認めない ●危険行為をくり返す
●急に暴力的になる ●物騒なモノを好む

家庭や学校を揺るがしかねない、手ごわい「不適切行動」……。
こどもがそんな言動に及んでしまう原因は「愛着障害」にあった!

不適切行動の引き金となる「こどもの気持ち」をマンガでわかりやすく解説。
さらに、その「気持ち」を変えて不適切行動を減らすことのできる「愛着修復支援」の基本的なスキルを図解。愛着障害支援の第一人者が、家庭でもできる効果的な対応法を提案します。

これまで虐待やネグレクトと安易に結びつけられていた「愛着」の問題をより広い視点からとらえ直し、数々の誤解を解くコラムも多数収録。
家庭で、学校で、それ以外の支援の現場で必携となる1冊です!!!