落ちこぼれから上智へ合格した受験生の逆転劇 「失敗を力に変える子」は何が違うのか 

孫辰洋 (著)中山芳一(監修)
2026.03.18 13:18 2026.03.26 11:50

机に伏せる中学生

小学校の頃からテストは50点前後、中学では授業に全くついていけず、次第に学校からも足が遠のいていく……そんな「落ちこぼれ」のレッテルを貼られた一人の受験生が、なぜ上智大学の合格を勝ち取ることができたのでしょうか。

その分かれ道は、失敗や挫折を糧にして跳ね返す「逆境マインド」の有無にありました。 『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』より、逆境を武器に変える力の伸ばし方についてご紹介します。

※本稿は、孫辰洋 (著)中山芳一(監修)『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』(ダイヤモンド社)より一部抜粋、編集したものです。

逆境マインド 失敗や挫折を糧にして跳ね返す力

Q.お子さんは、ここ半年間で涙を流したことはありますか?

「テストでいい点数が取れなくてつらかった」「試合で負けて悔しかった」など、どんな状況でも構いません。涙を糧にして頑張る経験が逆境マインドにつながります。

逆境マインドとは?

勉強する男の子

逆境マインドとは、失敗・挫折・困難といったネガティブな経験を、むしろ成長の材料として捉える姿勢のことです。

ただ「我慢して耐える」だけではなく、「この経験があったからこそ、今の自分がある」と語れること、逆境を跳ね返すしなやかな強さと意味づけ力がこのマインドの核にあります。

フレキシビリティ(柔軟性)やレジリエンス(回復力)に近い概念ですが、逆境マインドではさらに一歩進んで、「苦しかった出来事を自分の物語として意味づけし、価値に変える」ことが求められます。

なぜ逆境マインドが必要なのか?

これからの社会は、何かに一度もつまずかずに成功し続けることよりも、つまずいた後にどう立ち直るか、どう立ち上がるかが問われる時代です。

推薦入試でも、「どんな努力をしたか」だけでなく、「どんな壁にぶつかり、どう乗り越えたのか」「そこから何を学び、どう行動を変えたのか」が高く評価されます。つまり、逆境そのものよりも、それをどう意味づけ、未来に活かしたかが問われているのです。

逆境マインドがある子は、どんな環境でも折れずに学び、経験を価値に変える力を持っています。一方でこのマインドが育っていないと、小さな失敗でも立ち直れず、長期的に行動を止めてしまう「精神的な脆さ」につながります。

大学の面接で、逆境マインドはこう問われる

・「今までで一番苦しかった経験は何ですか? そのとき、どう乗り越えましたか?」
・「失敗や挫折を経験したとき、どのように立ち直りましたか?」
・「その逆境を通して、どんな気づきや学びがありましたか?」
・「苦しかった経験が、今のあなたにどんな影響を与えていますか?」

これらの問いでは、「つらかった」「大変だった」で終わらず、その経験から自分がどう変わったか、どんな前向きな価値を得たのかを語れるかどうかが評価の鍵になります。

逆境マインドがある人の特徴

・失敗や苦難を「意味のある経験」として言語化できる
・落ち込むことはあっても、長く引きずらずに切り替えられる
・逆境を乗り越えた後に、視点や行動が変化している
・同じ状況にある他人にも共感し、支援しようとする姿勢がある
・困難があったことを隠さず、「それがあったから今がある」と語れる

逆境マインドがない人の特徴

・一度の失敗や批判で、自信を大きく喪失してしまう
・挫折経験を「なかったこと」にしようとする
・自分のつらさを言語化できず、内に溜め込みやすい
・問題の原因を外部に求め、「仕方ない」と諦めてしまう
・課題や壁にぶつかると、それ以上の行動を止めてしまう

逆境マインドを育てる経験・育て方

勉強する親子

1.「うまくいかなかった経験」をポジティブに扱う
失敗したとき、「なぜ失敗したか」よりも、「次にどう活かすか」「何に気づいたか」を一緒に考える。

2.努力の「前後」を記録・振り返りさせる
つらかったときの気持ち→乗り越えたときの変化→今どう思っているか、という「時系列の物語」として振り返らせる。

3.他人の逆境経験から学ばせる
漫画・ドキュメンタリー映画・講演などを通じて、「あの人はどう乗り越えたか? 自分だったらどうするか?」と考えさせる。

4.自分の変化を言葉にする場をつくる
日記・ジャーナル・発表・面接練習など、自己の回復や成長を意味づけて語る経験を重ねさせる。

逆境マインドを育てるための振り返り・コメントの方法

・「あのとき、本当はどんな気持ちだった?」
・「つらかった出来事のなかで、何か得たものってあるかな?」
・「あの経験を通じて、考えかたや行動は変わった?」
・「また同じような問題が起きたら、今のあなたならどうする?」
・「『失敗してよかった』って思える瞬間、あった?」
・「3年前のあの出来事、今のあなたにとってはどういう意味があると思う?」

子どもがつらかった経験を乗り越えて、振り返ることができたとき、逆境マインドは大きく育ちます。このマインドは、人生における精神的な基礎体力であり、試練を価値に変える力そのものなのです。

逆境マインドを育てたケース

考える小学生

Nさんは小学校の頃から暗記や計算が苦手で、授業についていくのが大変だった。テストは毎回50点前後で、バカにされることもあり徐々に学校教育の環境へ違和感が募っていった。

中学に入ると状況はさらに悪化した。「何をやっているのか全く分からない」状態になり、授業についていけなくなった。周りの友達とも話が合わなくなり、「自分は場違いなのでは?」と感じて輪から外れるようになった。朝起きると気持ちが沈み、遅刻や欠席が増え、学校を休むことも増えていった。

しかし、このつらい時期に、Nさんの心の中にはある疑問が芽生えた。

「なぜ自分に合った学び方がないのか?」

学校を休みがちになるなかで、「学校に馴染めず、苦しんでいる子は他にもいるのでは?」「どうすれば、もっと多様な学び方を実現できるのか?」と考えるようになった。

そんなNさんを、家族は温かく支えた。無理に学校に行かせるのではなく、「教育学」という道があることを提案し、本人の疑問を大切にした。「あなたの感じている違和感は、間違っていない」と声をかけ続けた。この家族の姿勢が、Nさんの人生を大きく変えることになる。

高校進学後、レベルの高い高校に通えたわけではないが、その環境でも腐らずNさんは「誰もが自分に合った学びを得られる環境をつくる」という目標を持ち、上智大学総合人間科学部教育学科を目指すことを決意した。毎日3時間の勉強を続け、授業後すぐに先生に質問し、その日のうちに復習した。諦めずに努力を続けた結果、評定4・7を確保した。

こうした経験を通じて、Nさんは「国際化する教育現場において多様な個性や背景が輝ける学校現場を構築したい」という志望動機を明確に語れるようになり、見事上智大学総合人間科学部教育学科に合格を果たした。

①学校に馴染めなかった経験に立ち向かい、社会問題と結びつけて考えている
②異なる環境で逆境にいる人たちのことも考えている

逆境マインドを育てるために親ができること

外を見る中学生

Nさんの事例が示すのは、学校になじめないという辛い経験そのものが、将来の強みになりえるということです。

Nさんのケースは、「失敗や挫折は避けるべきもの」という思い込みをくつがえす好例です。多くの親御さんは、子供が学校になじめない出来事に強い恐怖を抱き、「なんとか元のレールに戻さなくては」と考えがちです。しかし実際には、その脱線こそが、子どもを大きく成長させるきっかけになることがあります。

Nさんのお母さんは、息子が感じた学校教育への苦手意識を「取り返しのつかない失敗」とは捉えませんでした。むしろ海外に連れ出し、異文化に触れる機会をつくり、「マイナスな経験がある分、人に優しくなれる」と前向きに伝え続けました。その姿勢が、Nさんに「自分の経験を他者のために使う」という確かな軸を与え、結果として大学合格にもつながりました。

失敗や逆境には、大きな意味があります。ときには親が意図的に安全な失敗を経験させるくらいでちょうどいいのです。挫折を避けるのではなく、そこから何を学び、どう跳ね返すかを一緒に考える。そうした関わりが、子どもの逆境マインドを育て、どんな環境でも前を向ける強さを与えてくれます。ぜひ意識してみてください!

孫辰洋

リザプロ株式会社 代表取締役。
2000年、埼玉県生まれ。2023年、早稲田大学政治経済学部卒業。
中国系日本人の両親のもとに生まれ、何度か日本と中国を行き来しつつ、中学校の途中から本格的に日本に住む。受験生時代、中国の名門・清華大学と早稲田大学に総合型選抜入試(AO入試)で合格。この時中国で出会った現地の受験生と日本の同世代の人たちとの大学や勉強に対する考え方の違いに直面し、日本の教育業界に携わることを決意する。2019年、早稲田大学政治経済学部に入学、同時に起業。自らの総合型選抜入試での経験を活かし、オンライン家庭教師を開始し、人気を博す。2020年6月にリザプロ株式会社を設立し代表取締役に就任。総合型選抜入試(AO入試)に特化した塾として、東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学など、多くの名門大学に合格者を輩出。2025年6月から、大学の推薦入試情報を掲載する「推薦入試データベース」を同社の推薦入試専門メディア「未来図」より無料公開。応募条件や日程などの入試情報、過去の合格者の志望理由書が閲覧できる。早稲田大学のビジネスコンテスト「WASEDA EDGE」最年少審査員、日本ITビジネスカレッジ客員講師。著書に『小学生が90日で英検2級に合格する!』(新流舎、2024年10月)がある。
リザプロ:https://rizapuro.net/

12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた

孫辰洋 (著)『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』(ダイヤモンド社)

「勉強が苦手」「学校に行きたくない」「塾にはもう行きたくない」
「勉強よりも好きなことがある」「中学受験にうまくいかなかった…」
こうした悩みを抱えていた子どもたちが、実は推薦入試で名門大学に進学していることをご存じでしょうか。

本書では、東大・京大・早稲田・慶應・旧帝大・GMARCHなどに推薦入試で合格した学生の1万件以上の志望理由書を分析。
その結果、彼らに共通する「子どもを伸ばす10の力」が明らかになりました。

12歳は、小学生から中学生へと環境も価値観も大きく変わる時期。この時期に差がつくのは、勉強の得意・不得意ではなく、自分で考え、選び、続けられる力です。
本書では、「自分の力で課題を見つけ、解決し、社会の中で生き抜いていける子」を「本当に頭のいい子」と定義します。

そして、推薦で名門大学へ進んだ子どもたちは、例外なく、この10の力を12歳ごろから育てていたのです。

本書では、その10の力をどのように家庭で育てていけるのかを、実際の体験談とともに、無理なく実践できる形でわかりやすく解説します。

「うちの子はこのままで大丈夫?」
そんな不安に寄り添いながら、子どもの将来の選択肢を広げるための一冊です。