低学年の子は要注意のランドセル症候群 整形外科医がすすめる「負担の少ないランドセルの背負い方」

亀田和利

春、新入学や新学期の季節を迎え、体よりも大きなランドセルを背負って歩く子どもたちの姿は微笑ましいものです。一方で、高学年になると、成長した子どもの背中にすっかり小さく見えるランドセルが、また違った感慨を呼びます。

どちらの姿も、子どもの成長を実感させてくれるものですが、その一方で、近年「ランドセル症候群」という問題が注目されていることをご存じでしょうか?

今回は、ランドセル症候群とは何か、またその予防策について札幌中央整形外科クリニック院長の亀田和利先生に詳しく聞きました。(取材・文/吉澤恵理)

重すぎるランドセルが子どもの体に及ぼす影響

――最近”ランドセル症候群”という言葉を耳にしますが、具体的にはどのような状態を指すのでしょうか?

亀田医師: 「ランドセル症候群」という言葉は、医学的な診断名ではなく、通俗的な表現です。これは、重いランドセルを長時間背負うことで、肩こりや腰痛、猫背などの姿勢の悪化を引き起こす状態です。特に体の小さい低学年の子どもは、ランドセルの重量が体重の15%以上になることもあり、身体的な負担が大きくなります。

――ランドセルは日本の小学生にとって当たり前の存在ですが、そもそもどのようにして広まったのでしょうか?

亀田医師: ランドセルは日本独自のもので、明治20年頃から使用され、その歴史は100年以上にもなります。もともとは軍隊の背嚢(はいのう)を参考にしたもので、当時の学習院が採用したことをきっかけに全国へ広がりました。

現在も小学生の通学用バッグとして定着していますが、近年はその重さが問題視されるようになっています。近年、教科書や教材、タブレットなど子どもがランドセルで持ち運ぶもの増えたことで、以前より重くなっているとも指摘されています。

――しかしながら、明治から100年以上もランドセルが受け継がれているというのは、メリットも大きいということでしょうか?

亀田医師: ランドセルは両肩に均等に荷重がかかる設計になっており、片掛けバッグよりもバランスが取りやすいというメリットがあります。また、耐久性が高く、6年間使い続けられること、さらに反射材や防犯ブザー用の金具がついているなど、安全面にも配慮された作りになっています。

――しかし、ランドセル症候群が問題視されているのは、使い方によってはデメリットもあるのですね?

亀田医師: そうです。間違った背負い方をすると、重心が崩れて姿勢が悪くなり、成長期の骨格や筋肉に悪影響を及ぼす可能性があります。また、ランドセルが重すぎると、肩や首、腰への負担が増し、慢性的な痛みにつながることもあります。

整形外科医がすすめる「負担の少ないランドセルの背負い方」

――正しいランドセルの背負い方には、どのようなポイントがありますか?

亀田医師: まず、肩ベルトの長さを適切に調節し、ランドセルが背中に密着するようにすることが大切です。ベルトが長すぎると重心が後ろにずれ、前傾姿勢になりやすくなります。逆に短すぎると肩に圧力がかかり、痛みの原因になります。また、荷物の詰め方も重要で、重いものはできるだけ背中側に配置することで負担を軽減できます。

――ランドセルの負担を軽減する工夫として、他にどのような方法がありますか?

亀田医師: 背中のクッション性が高いランドセルを選ぶことで、背負ったときの負担を軽減できます。また、チェストストラップ(胸の前で固定するベルト)を使うと、肩ベルトがずれにくくなり、安定感が増します。さらに、学校と相談して”置き勉”を許可してもらうことで、毎日の荷物を減らすのも有効な対策です。

――近年のランドセル事情についても教えてください。

亀田医師: 最近は軽量化が進み、1kg以下のランドセルも登場しています。また、リュック型の通学カバンを採用する学校も増えつつあります。

さらに、ランドセル自体も背負いやすさを考慮し、肩ベルトが立ち上がる構造や、負担を軽減するクッション素材を採用したモデルが開発されています。

――ランドセルの重さについて、適切な基準はあるのでしょうか?

亀田医師: アメリカ整形外科学会(AAOS)では、バックパックの重量は体重の10%以内が望ましいとされています。例えば、小学1年生の平均体重は約21kgで、その場合、ランドセルを含めた荷物の適正重量は2.1kgほどになります。

しかし、日本で行われたある調査報告によると、小学1~3年生のランドセルの荷物重量の平均は3.97kgで、中には10kg以上の荷物を背負っている児童がいることも判明しています。実に多くの子どもが適正重量を大きく超える荷物を背負っており、身体に大きな負担をかけていることが懸念されています。

――最後に、親御さんがランドセルを選ぶ際のポイントを教えてください。

亀田医師: まず、お子さんの体格に合ったサイズと重さのランドセルを選ぶことが大切です。軽さだけでなく、背中へのフィット感や肩ベルトの調整のしやすさ、クッション性なども考慮すると良いでしょう。また、購入前に実際に背負わせて、違和感がないか確認することをおすすめします

――子どもの健康を守るために、ランドセルの使い方や選び方に気を配ることが大切ですね。