小学校入学で乱れる子どもの自律神経 「家に帰れば大丈夫」と思える安全基地を築くには?

吉田美智子

小学校での生活は、低学年の子どもにとって新しい挑戦の連続。授業や友達関係、行事などで知らず知らず緊張し、自律神経が乱れてしまうことも。

そんな学校でのストレスから心と体を回復させるためには、家庭という「充電ステーション」の存在が欠かせません。子どもが「家に帰れば大丈夫」と思える安全基地の築き方について、臨床心理士の吉田美智子先生の著書よりご紹介します。

※本稿は、吉田美智子 (著)『すぐ怒る わがまま 言うことをきかない 子育ての「うまくいかない」は自律神経を育てると解決する』(高橋書店)より一部抜粋、編集したものです。

家庭は、子どもの自律神経を整える充電基地

小学生になると、学校という社会のなかに自分の居場所をつくり始めます。

学校は、授業や発表、友だちとの関わり、先生からの評価など、毎日が新しい挑戦の連続です。多くの子は新しい世界にワクワクしますが、「友だちとうまくいかない」「学校に行きたくない」と感じる子もいます。こうした不調の背景には、自律神経の乱れが関係していることが少なくありません。

学校生活は緊張や競争が多く、交感神経が優位になりやすい場所です。

テストや発表で「失敗したらどうしよう」と不安になったり、「友だちに嫌われたくない」と感じると、心拍が上がって呼吸が浅くなり身体がこわばります。これが続くと、イライラ・不安・頭痛・腹痛・疲れやすさといった症状が現れます。

または、がんばっても報われない経験が続くと、自分を守るために心身に休息のブレーキをかける背側迷走神経が働き、「何もしたくない」「どうでもいい」と感じて気力や意欲を失うことがあります。

そして、この時期の友人関係は、大きな支えでありながらストレスにもなります。

仲間外れやトラブルが起きると、社会的つながりをつくる腹側迷走神経が不安定になり、感情の波が激しくなったり自己否定感が強まったりします。安心できる友だちや理解ある先生との関係があると、神経が落ち着き、信頼と勇気を取り戻せます。

こうした学校での緊張から回復していくために欠かせないのが、家庭という安全基地です。

家庭は、子どもの自律神経を整える充電ステーションのような場所。学校で交感神経が高ぶったぶん、家では社会的なつながりと安心をつくる腹側迷走神経が働く時間が必要です。 親がおだやかに子どもの話を聞き、失敗を受けとめる。その関わりが子どもの神経を落ち着かせ、次の日にまた外の世界でがんばる力をつくります。

完璧な家庭である必要はありません。ただ、子どもが「家に帰れば大丈夫」と感じられることは大切です。そうした安心の感覚が、交感神経と副交感神経のバランスを整え、ストレスに耐えられる心身を育てます。

次からは、より詳しく、各学年でどのような自律神経の状態になりやすいかを説明していきます。

1年生:前向きな気持ちだけど自律神経がゆれやすい

1年生は、何でもやりたい気持ちにあふれています。学校でたくさん勉強したい、新しい友だちと遊びたい。そんな前向きな気持ちでいっぱいです。

けれども、初めての学校生活は子どもにとって大きな挑戦です。広い校舎や大きな上級生に圧倒され、「ちゃんとできるかな」と不安や緊張で胸がいっぱいになります。

すると、交感神経が過剰に働いてイライラしやすい状態になる過覚醒の子や、心身を守るために休息のブレーキをかける背側迷走神経が働き、無気力状態になる低覚醒の子がいるでしょう。

それでも先生がわかりやすく教えてくれたり、お友だちができたり、上級生がやさしく助けてくれたりすると、「大丈夫なんだ」と安心を取り戻すことができます。

これは安心をつくる腹側迷走神経が働き、こころが落ち着く経験です。

1年生のうちは、何もかもが初めて。不安や緊張で自律神経がゆれやすい時期ですから、家庭では安心してゆっくり休める時間を意識してつくってあげましょう。

習いごとを詰め込みすぎずにごろごろしたり、自分の好きな遊びを楽しんだり、親にくっついて甘えたりする時間を大切にしてください。

2年生:ひとりで安心へ戻る道すじをつくる準備期間

2年生になると、学校生活にも慣れてきて自分のペースで力を発揮できるようになります。「2年生になったね」「もう先輩だね」と、子どもの成長を喜ぶ気持ちを伝えてあげましょう。親が自分のことを誇りに思ってくれていると感じることは、親子一緒に安心を感じる最高の共同調整になります。共同調整とは、誰かと一緒に気持ちを整え、落ち着きを取り戻すことです。

3年生以降になると、子どもは親よりも友だちとのつながりや外部からの評価が大切になり、少しずつ親から離れ始めます。学校で困ったことがあっても、自分で対処しようとしますし、実際にできるようになっていきます。

たとえば、意地悪されて嫌な気持ちになったり、失敗して不安になったとき、ため息をつくことで呼吸を整えたり、少し周りを見渡して冷静さを取り戻したり、手をぎゅっと握って緊張をほぐしたりして、不安定になった自律神経を子ども自身で整えることができるようになります。

しかし、この方法では対処できない場面もでてきます。

そういったとき、子どもは親が自分を受け入れて助けてくれた記憶を無意識にたどります。「自分はひとりではない、必ず味方がいて家に帰れば大丈夫」という安心の信頼をもとに、危機に対処するようになるのです。

3年生以降、自然と自分で気持ちを落ち着かせられるようになるのは、親子関係のなかでくり返し体験した、安心とつながりの記憶がもとになります。

そのためには、2年生までに、子どもが家に帰れば安心だと思える経験をなるべく多くさせてあげましょう。困ったときに「大丈夫だよ」と声をかけてもらったこと、不安なときに抱きしめてもらって落ち着いた体験。こうした2年生までの積み重ねが、子どもの神経系に安心へ戻る道すじとして刻まれ、確かなサポートシステムとなって自然に働くようになるのです。

すぐ怒る わがまま 言うことをきかない 子育ての「うまくいかない」は自律神経を育てると解決する

吉田 美智子 (著)『すぐ怒る わがまま 言うことをきかない 子育ての「うまくいかない」は自律神経を育てると解決する』(高橋書店)

「すぐ泣いて手がつけられない」「何度叱っても効果なし」「落ち着きがない」、じつは、これらは子どもの「わがまま」や「性格」が原因ではありません。
自律神経が未発達なため、脳が危険モードに入っているだけなのです。

【本書は、こんなお悩みのある保護者におすすめです】
・子どものかんしゃくが頻繁で困っている
・イライラ怒りっぽい子どもの反応にびくびくしながら接している
・落ち着きがなく、うちの子だけウロウロしている
・学校、保育園、幼稚園に行きしぶる
・引っ込み思案で挑戦できない
・人前に立って発表するのが苦手

臨床心理士・公認心理師の著者は、18年間で2000組以上の親子のお悩みに向きってきました。
そして、上記のようなお悩みの解決方法として行き着いたのが、自律神経を育む子育てです。
本書は、自律神経の最新理論である「ポリヴェーガル理論」をベースに、子育てのお悩みを解きほぐしていきます。