もっと二人を楽しみたい! 会話でつくる「夫婦力」

汐見稔幸(臨床育児・保育研究会代表)
2023.10.06 13:26 2023.02.01 16:30

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結婚して何年も経った今も「この人と結婚してよかった!」と思えますか? 迷わず「はい!」と答えられない人は、夫婦の会話が不足しているのかもしれません。夫とのコミュニケーションを見直して、夫婦を楽しむ力、「夫婦力」をアップさせましょう。

※本稿は『PHPくらしラク~る♪』2014年3月号に掲載されたものを一部抜粋・編集したものです

会話不足が見えない溝を作る

妻、母、嫁といくつもの役割を担う主婦は、日々いろいろな問題にぶつかります。特に子育て期はちょっとしたことが気になり、悩みも多くなりがち。夫に相談しようとしても「ちっとも話を聞いてくれない」「すぐ面倒くさそうな顔をする」「テレビを見ながら生返事ばっかり」と、その対応に不満を抱えている人は多いようです。

ひと昔前と違い、今は家庭のことにもできるだけ関わりたいと考える男性は増えています。けれども、実際の暮らしでは妻は夫に不満を持ち、夫はそれに気づかないという昔のままのパターンが続いています。

夫が外で働き、妻は家を守るという夫婦のスタイルが定着した高度成長期以降、夫婦が共に過ごす時間は一気に減り、会話も少なくなりました。その上、携帯電話の普及で、今は社会全体に「無言化」が進んでいます。外で働く妻も増え、「今日は家でご飯食べるの?」。そんな日常のやりとりさえメールで済ませる夫婦も少なくないといいます。こうしたコミュニケーション不足が、夫婦の間に見えない溝を作り出しているのです。

言葉で変わる夫と妻の関係

もちろん、メールでも用件は伝わります。でも、人は直に顔を合わせて言葉を交わすことで心を通わせていくもの。それは夫婦も同じです。会話を通して相手のことをよりよく知り、自分のことを伝えながら、互いに認め合い、影響しあうことで夫婦関係は密になっていきます。

たとえば、妻の手料理を食べながら「お! これイケるよ。腕あげたね」「ほんと? うれしいわ。最近、ちょっとスパイスに凝ってるの」「そうだったのか。君の料理、ますます楽しみになるな」と、目の前のちょっとしたことを話題にして会話を楽しめれば、幸せな時間が共有できます。それが「夫婦を楽しむ」ということ。夫婦の会話が「夫婦力」を高め、絆を深めていくのです。

会話を増やすために妻も努力を

「収入が少ない」「子どもが反抗期」など、何かしらの不満や不安があっても、コミュニケーションが十分とれている夫婦は、結婚生活への満足度が高いと言われています。

今は先が見えない不安定な時代です。「こうすれば幸せになれる」という生き方のモデルもありません。だからこそ、何でも夫婦でしっかり話し合っていくことが大切です。たくさん会話をし、喜びも悲しみも共有している二人なら、この先何か問題にぶつかったとしても、力を合わせて乗り越えていけます。

もともと男性は女性に比べて会話が苦手。話すこと自体に関心が薄い傾向があります。だからといって、「どうせ言ってもムダだから」と妻も話すことを諦めては、ますますコミュニケーション不足に陥ります。リラックスできる雰囲気づくりをするなど、夫が会話に参加しやすくなる工夫をしてみましょう。

夫婦で「いい時間」を過ごすコツ

夫婦を楽しんでいる人は、一緒に行動する中でたくさんの言葉を交わし、2人の時間を積み重ねています。会話は、同じ時間を共有することで自然と生まれてくるもの。ここでは、会話が弾む「夫婦にとっていい時間」を持つ秘訣を紹介します。

2人だけで出かける

結婚記念日や誕生日に食事に出かけるなど、たまには子どもを預けてでも夫婦でデートをする時間を持ちましょう。リフレッシュでき、会話も弾みます。感動を共有したり批評しあったりできる映画やコンサートへいくのがオススメ。また、子どもが寝てから2人で気軽に出かけられるような店を、近所で何軒か見つけておくのもいいですね。

家のことを一緒にする

料理や部屋の模様替え、庭造りなどの作業は、やり始めると意外に男性の方が夢中になったりするもの。夫が興味を持ちそうなことを選んで誘ってみましょう。家具の移動などを「力を貸して」とお願いするのも手です。一緒に作業をしていれば、「昨日こんなことがあってね……」と、話し出すきっかけも生まれます。

夫・妻の友人を家に招く

夫婦共通の知人が増えると、「この前、アイツがさ……」「今度、○○さんがね……」と、話題も増えます。家族ぐるみのホームパーティーは夫をうまく巻き込みやすいのでオススメです。また、夫の仕事仲間や友人を招くと、夫の仕事や外での様子を知ることができます。意外な一面が発見できれば、新鮮な気持ちで夫に向き合えるという効果も。

子どもの行事に揃って参加

運動会や授業参観だけでなく、最近は土曜日などにいろいろな行事を行なう学校が増えています。仕事が休みの時はできるだけ夫も駆り出し、夫婦で参加しましょう。子どもが学ぶ場を見ることで、夫も子育てにいっそう関心を持ち、積極的に関わってくれるようになるはず。子どものことを夫婦で話し合う機会も増えるでしょう。

2人でマッサージし合う

ちょっと疲れている時は2人でマッサージを。スキンシップもコミュニケーションの1つ。肩や腰、足裏などを揉むうちに、「こんなに凝っている。疲れているんだな」と相手をいたわる気持ちが湧いてきます。体がほぐれてくると、気持ちもリラックスでき、普段なかなか話せないようなことも素直に言い合えるようになるものです。

会話はあらゆる人間関係の基本

夫婦といっても元は他人。言葉がなくても何でもわかりあえるわけではありません。子育て期は子どものことだけで手いっぱいで、夫婦の関係作りにまで労力を割く余裕はないという方も多いと思いますが、会話を増やす努力は惜しまないでください。これから先何十年という長いスパンで見れば、それをするかしないかでは、「夫婦力」に必ず大きな差がつきます。

また、夫婦のコミュニケーションのよしあしは子育てにも影響します。会話が多い家庭で育った子どもは精神的に安定すると言われています。何でも話し合い、お互いを思いやりながら暮らす両親の姿を見れば、子どもは自分も大切に扱われていると感じます。親を信頼し、自分も何でも話すようになるので、いい親子関係が作られていきます。

このように夫婦の関係は、すべての人間関係の基本になります。夫婦の会話を通してコミュニケーションそのものが上手くなれば、職場や地域、学校関係の人とも、いい関係が築けるようになっていきます。

ぜひ夫婦の会話を見つめ直し、円満な家庭作り、さらにはさまざまな人間関係に役立ててください。

汐見稔幸

汐見稔幸

2018年3月まで白梅学園大学・同短期大学学長を務める。東京大学名誉教授、日本保育学会会長、全国保育士養成協議会会長、白梅学園大学名誉学長、社会保障審議会児童部会保育専門委員会委員長、一般社団法人家族・保育デザイン研究所代表理事。