「手がかかって仕方ない」「ほめているのにやる気を出さない」 そんな子に悩むあなたは、愛情をかける方向が少し偏っているのかもしれません。

 

いま、心の不安定な子が増えている

 

最近、思い通りにならないとすぐに泣いたり怒ったりする子、うまくできないとすぐに諦める子、叱られるとひどく落ち込む子が増えています。「ほめて育てる」ということが歪んで広まったせいか、心を鍛えるということが疎かになっているようです。

 

私は、大阪市からの委託で市内の全幼稚園の園児の母親や教諭を母集団とした意識調査を行ないました。その結果、今の子どもたちを見て気になることとして、最も多くの幼稚園教諭があげたのは、「忍耐力のない子」が目立つことでした。一方、親子関係を見ていて特に気になるのは、「過度に世話を焼く親」と「甘やかす親」が目立つことでした。子どもの忍耐力の欠如は、親の過保護や甘やかしとセットになっているようです。
 

人生は思い通りにならないことの連続です。そこをタフに生き抜く力が必要です。今、求められるのは、「諦めない心」や「我慢する心」を育てることではないでしょうか。

 


 

「生き抜く力」をつける3つの条件

子どもが社会で力強く生きていくために、親はどのようなことを心がければよいのでしょう。


1)楽観的なものの見方を身につける

ものごとがうまくいく人は、根拠なく楽観的なものです。実際、楽観的な人のほうが学校の成績もよいし、就職してからも仕事で成果を出していることが、心理学の研究データからも実証されています。では、楽観的な姿勢はどうして身につくのかというと、親をモデルとして、親のものの見方を自然に取り入れるのです。それを「モデリング」と言います。そこで重要なのは、親自身が楽観的なものの見方を身につけることです。親があれこれ心配すると、子どもも不安の強いタイプになっていきます。
 

人生上起こることの多くは、吉と出るか凶と出るか、まったく予想がつきません。ものごとのよい面に目を向けることが積極的な行動につながり、悪い面に目を向けることが消極的な姿勢につながります。それによって可能性が開かれたり閉ざされたりするのです。
人生の展望を開くには「何とかなるさ」という楽観的姿勢が大切です。失敗することで落ち込む人間と失敗から学ぶ人間。その分かれ道もここにあります。

 

2)挫折経験のチャンスを奪わない

最近目立つのは、過保護で甘やかし、過干渉する親です。そのような姿勢は、子どもから貴重な体験を奪うことにつながります。人間が動物と違うのは、本能だけでは生きられないことです。私たち人間は、経験から学ぶことで社会適応力が身についていくのです。
 

挫折というのは学びの大きなチャンスです。失敗を繰り返すことが生きる力を高めてくれるのです。大事なのは、挫折を回避することではなく、挫折を乗り越えることです。乗り越えた経験が自信になります。
 

挫折を味わわせたくないと過保護になることで、子どもはどんどんひ弱になっていきます。失敗しないように先回りして守ることで、失敗を恐れる子になっていきます。失敗を恐れていたら、思い切ってチャレンジできません。失敗から学ぶこともできないし、自分で困難を乗り越える経験もできません。過保護は子どもの成長のチャンスを奪ってしまうのです。
 

忍耐力やがんばる力をつけさせようと思ったら、先回りして失敗を未然に防ごうなどと思わずに、子ども自身の試行錯誤を見守る姿勢が大切です。

 

3)わが子の力を信じる

私たちは、身近な人の視線に強く規定されています。もっとも身近な他者は親です。自分はこんな子だ、自分にはこんな長所・短所がある、こんな力がある。親からどのように見られているかで、そうした自己観を形成します。だからこそ、親がわが子をどのように見るかが重要な意味をもつのです。
 

私たちには、人の期待に応えるという性質があります。これを「ピグマリオン効果」と言います。親や教師から「この子は自分できちんとやる子だ」と信頼されれば、その期待を裏切るようないい加減なことはやりにくくなります。反対に、「この子はどうしようもない子だ」と見限られれば、開き直ってさぼることもできるし、ずるいこともやりやすくなります。正の期待にも負の期待にも応えるのが人間なのです。
 

親が子の力を信じることで、子どもはその期待を肌で感じて、期待を裏切らないようにがんばります。子どもに自覚もでき、自分の力を信じることができるようになります。親が子の力を信じることができず、不安でいれば、子どもも自信がもてず不安になります。
だからこそ、親がわが子の力を信じることが重要なのです。

 

 

【著者紹介】

榎本博明 (えのもと ひろあき)

MP人間科学研究所代表
1955年、東京都生まれ。東京大学教育心理学科卒業。心理学博士。心理学をベースにビジネス研修や教育、生き方に関する講演などを行なっている。著書に『「人と上手につき合える子ども」に育てる36の処方箋』(主婦の友社)、『記憶の整理術』(PHP研究所)ほか多数。

 

 


 

『PHPのびのび子育て』は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌です。

 

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