噛みつく、叩く…乱暴に振る舞う子どものしつけ

菅原裕子

○子どもがうまく表現できた瞬間を捉える

親が話してみせた直後も含めて、よく観察していると、子どもが言葉で自分を表現する瞬間があります。この瞬間を逃さないことです。言葉は未熟です。それでも何を言おうとしているのかを理解して、「貸してって言えたね」「お話できたね」と、フィードバックをしてあげてください。その瞬間、子どもは、「これを言えばいいんだ」「こうすればいいんだ」とわかります。そうすることで、具体的にどういう状態が望まれているのかを、子どもに伝えることができます。

大切なのは、その瞬間であることです。つまり、子どもなりに「貸して」と言ったら、親が笑顔で「言えたね」と喜んでいる。子どもはこの瞬間、「おもちゃがほしいときは、『貸して』と言えばいいんだ」と学びます。

○それでも叩くことをやめないとき……

その場を離れましょう。小さいときだからできることです。子どもを抱えて、言葉で説明しながら、他の子どもたちから離します。 「叩く子はみんなと一緒に遊べないよ」と、叩くことで何が起きるかを、言葉と行動で説明します。

なかなか収まらないときは、家に帰りましょう。これを繰り返すと、子どもにもその仕組みがわかります。叩くと、他の子とは遊べなくなり、外遊びもできなくなる、ということを理解します。

しつけの心得

○困った行動のもとには、子どもにとっての「いいこと」がある

叩くというのは困った行動ですが、子どもに悪意はありません。たとえば、おもちゃがほしいのです。でも、使おうとしたら拒絶され、どうやったら手に入るのかわからないので叩く。叩くという行動は、おもちゃを手に入れるという、子どもにとっては「いいこと」を目指した結果であることを理解しましょう。

親の仕事は、子どもが「どんないいこと」を目指したのかを見つけることです。

○感情的にならない

感情的に「何やってるの!」と、子どもを押さえつけたり怒ったりしても、子どもには、何が起こったのか理解できません。子どもをびっくりさせて、泣かせてしまっては、せっかくのしつけの機会を逃すだけです。

大丈夫です。子どもが他の子を叩くのは、ひとつの自己表現。落ち着いて、子どもの手をとりましょう。

○「叩かれる痛みを教えよう」は、うまくいかない

「叩かれる痛みを味わわせたほうがいい」と、子どもを叩く親がいますが、これには効果がありません。三歳前の子どもは、自分が感じていることを、まだ客観的に眺めることができません。だから、うまく表現できずに手を上げるのです。自分が感じていることがわからない子どもに、人の痛みをわからせるのは、無理なことです。

○一度であきらめない

訓練は、重ねてやったときに効果が出ます。一度でうまくいかないからと、あきらめないでください。やり続けると、必ず子どもに変化が表れます。

それぞれの時期に、成長に合わせてしつけることで、その後の子どもとのつき合いが楽になります。子どもも、周りと楽しく過ごせる生き方を学ぶわけですから、あきらめずにつき合いましょう。


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