社会で生きていくためには自分を律する力が必要です。でも、いったいどういう伝え方をすれば、本当の意味でガマンができる子になるのでしょうか?

 

 

強い子、あきらめない子にするために 必要な「ガマン」力を育てよう!

 

ガマンとは、踏ん張る力です。踏ん張るためには、土台が必要です。その土台はまわりの大人との関係から生まれる自己肯定感や信頼、安心感によって築かれます。「自分は大切にされている」とわかれば、子どもは大人の言葉に聞く耳をもち、ガマンできるようになります。でも大人に理不尽なガマンを強いられていると、逆に生きていくために必要な力が育たなくなります。

 

小さな子どもに必ずガマンさせなければならないケースは、そう多くありません。主に「命や健康に害が及ぶこと」をしようとしたときと、「社会のルールに反する(人に迷惑をかける)こと」をしようとしたときの2つです。

 

大人の正しいかかわりによって、これらをガマンさせることができれば、やがて子どもは自らの判断で、他のこともガマンできるようになっていくでしょう。

 

わるいガマンをさせられていると......

 

・無気力になる

子どもは自己主張を受け入れられて初めて、ガマンができるようになります。自分の欲求や思いを聞いてもらえないままガマンを強いられる状態が続くと、子どもは自己主張する意欲がなくなるばかりか、「どうせ聞いてもらえない」と最初からあきらめるようになります。深刻な場合は、「こうしたい」という自分の意思さえもてなくなります。

 

・人間関係がうまく築けない

「なぜそうしてはいけないのか」という理由を説明されずに一方的にガマンさせられると、子どもの中に善悪の基準ができません。そのため自分の行為によって、まわりの状況がどうなるかや、他人がどんな気持ちになるかなどについて、見通しをもったり想像したりすることができなくなり、人間関係がうまく築けなくなります。

 

・感情がコントロールできなくなる

いつも理不尽にガマンを強いられ、抑圧されていると、子どもの心の中に抑圧感情や不満が蓄積されていきます。一見大人の言うことを聞くいい子に見えても、いつか、何かをきっかけにその抑圧感情が爆発します。突然キレる、激しく泣きわめく、暴力的になるなど、手のつけられない状態になることもあるのです。

 

わがままを助長!指示待ちの子に! ダメなガマンのさせ方

 

大人がかかわり方を間違えると、どんなに「ダメ」と言っても、子どもは言うことを聞かなくなります。少なくとも、次の3つは避けるようにしましょう。

 

・大人の都合でガマンさせる

あなた自身がイライラしていて、つい何でもかんでも子どもに「ダメ」を連発してしまったり、人から立派なお母さんに見られたくて、いつもは許していることも人前では「ダメ」と言ってしまったり......。こういう経験はありませんか?  親だって人間ですから、気分のいいとき・悪いときはありますし、大人の事情もあります。でも、「あるときは許すけれど、あるときは許さない」とコロコロ対応が変わると、子どもはそれがいいことなのか、悪いことなのかを理解できません。 もちろん、いつもはダメだけれど「今日は特別OKよ」といったメリハリはあっていいのです。でも、その場合も、「どうして今日は特別OKなのか」、その理由がわからなければ、子どもは混乱するだけです。

 

・威圧的に「ダメ」とガマンさせる

「子どものためだから」「しつけだから」という大人の思い込みで、有無を言わさず「ダメ」と子どもを制するのは考えものです。また、子どもがやりたがらないことを無理にやらせるのもガマンの押しつけです。 子どもは「なぜやってはいけないのか」、または「やらなければならないのか」という理由を理解していないので、何度も同じ行為を繰り返すでしょう。そうなると、毎回ガマンさせなくてはならない大人のほうも大変です。気が弱い子だと、「ダメ」と言われ続けることで、いつも大人の顔を見て行動するようになってしまうこともあります。 それともう1つ、よく考えてほしいのは、子どもに説明できるだけの確固たる理由があるかということです。もし理由が思いつかなければ、それは、今はさせる必要のないガマンです。

 

・人のせいにしてガマンさせる

「あのおじさんに叱られるよ」「先生が〇〇って言ってたよ」など、あなた自身の思いや願いではなく、第三者の目を気にさせて、子どもにガマンをさせることはありませんか? このような、誰かのせいにしてガマンをさせると、本当にしてはいけないこととして伝わらず、言われなければやっていいということになってしまい、逆効果です。 中には親や先生に叱られるのが嫌でガマンする子もいますが、その子にとっての基準はあくまでも「叱られることの回避」です。ですから叱る人の前ではいい子でいても、その人たちがいない場面ではやりたい放題となり、自己コントロールができるようにはならないでしょう。

 

ガマンを教えるために大切なこと

 

ガミガミ叱ったり、命令したりしなくても、ガマンは十分に教えられます。

 

・まずは子どもの気持ちを受けとめ、わかりやすい言葉で説得する

たとえば、夕方、子どもが公園から帰りたがらなかったら、「ブランコおもしろいものね。いつまでも遊びたいよね」と子どもの気持ちを受けとめ、共感しましょう。その上で「真っ暗になっちゃったら、おうちに帰るときに危ないよね」「ママ、おなかが空いて倒れそう〜」など、わかりやすい言葉で帰らなければならない理由を伝えます。 子どもが聞き入れない場合は、時々はとことん遊びに付き合ってみてもよいでしょう。自分の思いを受け入れてくれた人への信頼感が増し、次の時にガマンする力の支えになります。そして、親の提案を受け入れてくれたら、「明るいうちに帰って来られてよかったね」「ママ、ごはんを食べられて嬉しいな。ありがとう」など、子どもがガマンしてよかったと思えるような言葉を添えましょう。この一連のかかわりを積み重ねていけば、自然とガマン力は育っていきます。

 

・生活の中で大人が見本を見せる

子どもは身近な大人をよく観察しています。普段から大人がガマンしている姿を見せるだけでも、子どもに十分ガマンを教えることができます。たとえば「お菓子を食べたいけれど、夕ごはんがおいしくなくなるからやめておこう」と子どもの前で言ってみましょう。そして夕飯のときに、「ああ、ごはんおいしいな。やっぱりお菓子を食べなくてよかった」とまた言葉にしてください。 もちろん「昨日の夜遅く食べちゃったから、朝、おなかが痛くなっちゃった」という失敗体験も隠さず見せていきましょう。子どもはあなたを見て、「こうするとこうなる」という見通しをもてるようになります。自分が同じ立場になったときに、身近な大人の姿を思い出して、ガマンにつなげていくこともできるようになるのです。

 

・子どものタイプに合った言い聞かせ方をしよう

自己主張が強い子には、抱っこして「そんなに泣かなくても、ママわかるよ」と落ち着かせてから、「でもね。○○だからガマンしようね」とやさしく説得しましょう。一方、あまり自己主張せず、ガマンしてしまう子には、「○○ちゃんは、どうしたいのかな? ママに教えて」とまず自分の思いを表現させます。言う通りにしてやれないときは「△△は無理だけど、○○ならできるよ、どうする?」と、相談しながら折り合いをつけていくといいでしょう。

 

【著者紹介】

井桁容子(いげた・ようこ)

東京家政大学ナースリールーム主任。東京家政大学短期大学部保育科卒業。30年以上にわたる保育士経験を活かした講演がお母さんたちに人気。テレビの子育て番組に出演するなど幅広く活躍中。著書に『ありのまま子育て』(赤ちゃんとママ社)などがある。

 


 

のびのび子育て

「PHPのびのび子育て」は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌。 2016年3月号の特集は<子どもにさせて「いいガマン」「わるいガマン」>です。

 

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