頭のいい子に育ってほしい、運動が得意な子になってほしい……。それなら、幼児期から学童期にかけて、そのための土台をきちんと育てておかなくてはいけません。

自己肯定感・自己実現力・他者信頼感・地頭のよさ……これらを育てておくことが大事です!

 

女の子

 

土台がしっかり育っていないと……自主性がなく、自ら行動できない子に

 

遊びの中で“楽しい、わくわくする”体験をたくさんしている子は、「自分はできる」という自己肯定感と「やってみたい」という意欲が育ち、勉強でも運動でも主体的に動けるようになります。こうした体験が乏しい子は、「言われればやる。でも、自分からは動けない」状態になりがちで、伸び悩みます。

 

「勉強も運動もできる子にしたい」という思いから、幼児期や学童期の子に早期教育プログラムをやらせたり、運動教室に通わせたりする親は多いです。でも、実はもっと本質的に大切なことがあり、それはなんと「遊び」です。この時期に自分がやりたい遊びを毎日思う存分やれている子のほうが、先々の勉強や運動で後伸びするのです。これは発達心理学の実証的な研究によって明らかになっていることです。

 

たとえば、内田伸子・お茶の水女子大学名誉教授らの調査によりますと、偏差値68以上の難関大学合格者の親の35 .8%が、入学前に「思いっきり遊ばせること」を重視していました。また、24 .1%が「好きなことに集中して取り組ませること」を重視。遊ばせ方についても28 .8%が「自発性を大事にした」と回答したのです。そうでない子の保護者では、1つめが23 .1%、2つめが12 .7%、3つめが16 %にとどまっています。

 

運動能力についても、一斉運動の時間を設けている幼稚園や保育園、あるいは運動教室に通う子たちより、好きな遊びの中で自由に走ったりぶら下がったりしている時間が長い子たちのほうが、運動能力が高いという結果が出ています。これらは幼児期についての研究ですが、私は教師として小学生を長年指導してきた経験から、学童期についても同じことが言えると思います。

 

幼児期に身につけさせたいこと1

「自己肯定感」… 子どもの伸び方に決定的な差をつけるのが、自己肯定感です。

 

たとえば、授業で先生が「○○の勉強をします」「○○の実験をします」「○○の運動をします」と言ったとき、自己肯定感のある子は「面白そう。自分はできる。やってみたい」と自然に思います。ですから、積極的に取り組みますし、ちょっとくらい失敗しても「自分はできるはずだ」という思いがあるので、結局は乗り越えられます。

ところが、自己肯定感のない子は、はじめから「どうせ自分には無理」と思ってしまいます。ですから、意欲もわいてこないわけです。たとえ取り組んだとしても、ちょっと失敗すると「やっぱりダメだ。どうせ自分は何をやってもダメだ」となって、結局乗り越えられなくなります。

このように、自己肯定感があるかないかは、その後の伸び方に決定的な影響を与えます。幼児期の無理な早期教育によっていつも「やらされること」ばかりで、「楽しくない。うまくいかない」経験が多い子は、後者のようになりがちです。また、幼児期に運動の一斉指導の時間が長くて、「同じ運動の繰り返しで楽しくない」「友だちはできるのに自分はできない」と感じる経験が多い子もそうなりがちです。

 

幼児期に身につけさせたいこと2

「自己実現力」…自分でやりたいことを見つけ、主体的に取り組む力が必要です。

 

現在進められている教育改革で、一番大事な方向性は「主体的に学ぶ子」の育成です。というのも、これからの時代は、人に言われたことだけやる人や、与えられた知識を覚えるだけの人では、もう間に合わないからです。「自分がやりたいことを、自分で見つけて、主体的に取り組む」「自ら課題を発見して、追究し、新たな価値を創造する」、そういう人を育てる必要性があるのです。

 

その根底には、〝日本の経済が頭打ちなのは、起業できる人が少ないからだ〟という認識があります。私もその考え方は間違っていないと思いますし、さらに言えば、経済面だけでなく、そもそも自分の人生を充実させる上で、仕事でもプライベートでも自分がやりたいことを自分で見つけて主体的に取り組むことは本当に大切です。人間はそのためにこそ生まれてきたのですから。

 

そして、そういう主体的な人を育てるために大事になってくるのが、3歳からの幼児期の過ごし方です。「自分がやりたいことを、自分で見つけて、主体的に取り組む」経験をしている子、つまり主体的に遊んでいる子が、将来有望なのです。

 

 幼児期に身につけさせたいこと3

「他者信頼感」…人を信用し、よい人間関係を築けてこそ、充実した人生を送れます。

 

学校でも職場でも、他者とよい関係を築くことができる人は幸せです。そういう人は、勉強や運動、仕事でも、楽しく取り組めて自然に成果が上がります。

 

周りと、よい人間関係をつくる上でとても大切になってくるのが、他者を信頼する気持ちです。

 

他者に対する不信感がある子は、廊下で肩がぶつかっただけで「お前からぶつかってきただろう。けんかを売ってるのか?」となったり、目が合っただけで「いつもにらんでくる。オレのことが嫌いなのか?」と感じたりします。他者信頼感がある子は、肩がぶつかったときも「ごめんね。大丈夫?」と素直に言えますし、目が合ったときには笑顔を向けることができます。

幼児期の無理な早期教育や一斉運動で、できないときに叱られることが多かったり、過度な競争状態の中で友だちと関わる経験をたくさんしてしまうと、他者信頼感が薄れて他者不信感が育ってしまいます。その反対に、楽しい遊びの中で、心が解放された状態で友だちとたくさん関わる経験をしている子は、自然に他者信頼感が育つのです。

 

学童期からの土台づくり 7歳からは「地頭」をよくしよう!

 

夢中になって楽しく遊ぶ時間こそが、いろいろな能力を高めます。

 

幼児期の土台の上に積み重ねたいこと、7歳以降の学童期で大切になってくるのが「地頭」をよくすることです。

 

地頭がよいというのは、コンピューターで言えばCPUの性能が高いということです。具体的には、認識力、理解力、思考力、空間認識力、記憶力、想像力、創造力、語彙力、表現力などの能力を高めることが大事であり、それを可能にするのが、これまた遊びなのです。

 

脳科学によると、脳にはニューロンという神経細胞があって、ニューロン同士をつないで情報をやり取りするのがシナプスです。シナプスが多ければ多いほど、情報の処理能力が上がって地頭がよくなります。

 

では、どういうときにシナプスが増えるかというと、本人が楽しいと感じながら頭を使っているときに一番よく増えます。つまり、いやいや問題集をやっているときよりも、自分がやりたいことに夢中になって、わくわくしながら楽しく遊んでいるときのほうが、地頭がよくなっているのです。

 

地頭のよい子が勉強をすれば、どんどん身について学力が上がり、運動もよく身につきます。

 


 

「PHPのびのび子育て」 5月号より

 

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本記事は、「PHPのびのび子育て」2018年5月号特集「3歳、7歳が分かれ道 勉強も運動もできる子になる!」より、一部を抜粋編集したものです。

 

【著者紹介】

親野智可等(教育評論家)

23年間の小学校教師経験を活かした的確でわかりやすいアドバイスには定評がある。全国各地の小・中学校や幼稚園・保育園のPTA、市町村での教育講演会も大人気。著書に、『「自分でグングン伸びる子」が育つ親の習慣』(PHP研究所)など多数。