一般に「キレやすい」と言うとネガティブな印象がありますが、脳科学的には、そうした性格にもポジティブな側面があるようです。テレビ番組でもおなじみの澤口俊之先生に、興味深い見解を伺いました。

 

子ども

 

子どもによい環境を与えられるかどうか

 

子どもが親の性格を受け継ぐ割合は約50 %です。残りの約50 %は、環境によって形づくられます。

もちろん、「キレやすい」というのも性格の一部です。ちなみに脳科学では、「衝動性が高い」という言い方をします。

「性格には環境が関与している」と聞くと、「うちの子がキレやすいのは私の育て方が悪いから」と思うかもしれませんが、性格形成に影響を与える「環境」とは、「親の育て方」だけではなく、「その子の体験すべて」を指します。ですから、キレやすいかそうでないかは「親が子どもによい環境を与えられるかどうか」にかかっていると言えるでしょう。

 

脳科学的に見ると「キレやすい子」は実はすごかった!

 

「キレやすい」と言うとネガティブに捉えられてしまいがちですが、脳科学的には性格には多様性があり、ネガティブもポジティブもないのです。

「キレやすい」を、「感情の爆発」と考えると、それ自体は悪いことではありません。「人間は感情の生き物である」と言われるように、まず感情があって、それが思考につながるからです。怒りの感情も実は重要で、否定されるべきものではありません。単に感情の出し方の問題で、衝動性の高い子は、怒り感情が強く出やすいというだけのことです。

衝動性が高い子には、「好奇心が旺盛」という特徴があります。「これは何だろう? どういうしくみ?」と真実を追求したくなり、たとえば、授業中でも窓の外に興味をひかれるものを見つけると、それが何なのかを知りたくて衝動的に外に飛び出してしまうタイプです。

ただし、意味もなくキレるのは本来の衝動性とは違います。人間はだいたい1歳になるまでに自分の感情をコントロールできるようになりますが、その能力が十分に育っていないと衝動を抑えることができません。また、ADHDや発達障害など脳の疾患がある場合も、意味なくキレてしまいます。しかし、いずれの場合も改善していくことが可能です。

 

脳科学的に見ると「落ち着いた子」に問題がある場合も!

 

すぐにキレることがなく、いつも落ち着いている子にも、衝動性がないわけではありません。怒りの感情を含め、自分の感情をコントロールすることで衝動性を制御できているのです。

これは何も特別な能力ではなく、先に述べたとおり、人間は1歳になる前から自分の感情を制御できるようになります。その後、3歳ぐらいまでの間にきちんとしつけがなされれば、その後は意味なくキレることはなくなります。

知能が発達した子ほど、意味をもってキレるようになります。今ここで自分が感情を爆発させればお母さんがかまってくれるだろうとか、周りの人たちが自分に利益になるようなことをしてくれるんじゃないか、などと考えてキレるのです。

親御さんとしては、理由などどうでもいいから、とにかくキレてほしくないでしょうし、感情も爆発させない子のほうが育てやすくてありがたいかもしれません。

しかし、人間は感情の生き物なので、感情を出さなかったり、感情が動かないのは大問題です。喜怒哀楽がなくなり、思考もできません。衝動性が見られないのは、好奇心が乏しいとも言えます。「うちの子はいつもおだやかで助かる」と安心している人も、子どもの感情がちゃんと動いているか否か、見極める必要があります。

 

後編: キレやすい子を卒業!「感情をコントロールできる子」に育てる3つの方法

 


 

「PHPのびのび子育て」 2月号より

 

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本記事は、「PHPのびのび子育て」2019年2月号特集【3・7・10歳で変わる! 心が荒れる子・おだやかで強い子】より、一部を抜粋編集したものです。

 

【著者紹介】

 

澤口俊之(脳科学者)

北海道大学卒業、京都大学大学院理学研究科博士課程修了。エール大学医学部研究員、北海道大学医学研究科教授を経て、2006年に人間性脳科学研究所所長に就任。'11年より武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部教授を兼任。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」などのテレビ出演、著書多数。