子どもをかわいがれない、子どもに優しくできない、 子どもの甘えを受け入れられない――、それはなぜなのでしょうか。 その要因をさぐりながら、「甘え」の大切さをお伝えしたいと思います。

 

女性

 

お母さんの育った環境が影響?

 

「子どもをかわいがれない」「子どもの甘えを受け入れられない」。そんな悩みをもつお母さんもいるでしょう。“子どもの欲求を受け入れて甘えさせる”ことが大事だとわかっていても、それができないのです。

 

その理由は、お母さん自身に余裕がないから。仕事も家事も子育ても、1人でこなさなければならないことが少なくありません。とくに、下の子が生まれたばかりで慌ただしい時期などは、上の子とじっくり関わる精神的な余裕をもてないようです。

 

また、お母さんが育ってきた環境も影響しています。子どもの頃に頑張ることを強要されて、甘えたくても甘えられなかったような場合、自分の子どもに対しても、「私は頑張ったのに、そのぐらいのことでなぜ甘えるの?」と思ってしまいます。

 

子ども時代に「助けて」と言えない環境、たとえば親が病気で自分が弟や妹の面倒をみてきたというケースも。誰にも弱さを見せられずに育つと、大人になっても素直に「助けて」と言えず、子どもの「助けて」という甘えも受け入れられないのです。

 

また、子どもと自分は別の人間だと切り離して考えられない人もいます。自分が子どもの頃に望んだことを、子どもも同様に望んでいると考えて、甘えを許さずにやらせてしまいます。進学したかったのにできなかったお母さんが、子どもに勉強を強要することもあるのです。しかし、子どもは別の人間なので、親と同じ望みをもっているとは限りません。

 

このように、甘えさせることができない原因は、現在と過去の両方にあります。

 

【甘えを受け入れられない理由5】

 

・助けてと言えない

自分が弱さを見せて助けを求められないので、自分も子どもの甘えを受け入れられないから。

 

・自分と子どもを切り離せない

自分と子どもを同一視し、自分が望んでいたことを子どもに強要して甘えさせないから。

 

・余裕がない

目まぐるしく忙しい毎日を過ごしていて、心身ともにとても疲れているから。

 

・甘えられずに育った

子どもの頃に頑張ることを強いられて、甘えたくても甘えられなかったから。

 

弱音を吐ける相手が必要

 

子育て中の親は、他の人に助けを求めて甘えることが大切です。だめな自分を見せられる相手、弱音を吐いて甘えられる相手を探してみましょう。

 

身近なのは自分の夫です。たとえば、「今日、子どもに当たっちゃった」と夫に話せるだけでも楽になります。悩みを聞いてもらうだけでなく、子どもの成長の様子や子育てについての喜びを日頃から共有できる関係を築けているといいですね。

 

実家の母親に、子ども時代の満たされなかった気持ちを「昔、こういうことが辛かった」と言うのもいいかもしれません。自分が親になってから当時の親の思いを聞くと、新たな視点で理解できることがあります。大人になってから、母親や姉妹などに弱い自分を見せることにも意味があるのです。

 

ママ友にも「最近しんどくて」など、弱さを見せてみましょう。実は相手も同じことで悩んでいて、絆が強まるきっかけになることも。そのような「弱さでつながる関係」を築けることが理想です。ちょっと辛いときに子どもを預け合えれば、自分の時間がつくれて、子どもを甘えさせる余裕も生まれます。

 

弱音を吐ける相手がいないときには、保育園や幼稚園の先生に話す方法もあります。保護者支援に力を入れている園は多く、親の話を否定しないで、「そういうときもありますよね」と受けとめてくれます。

 

自分が安心して甘えられる相手を探すことが大事です。

 

甘やかしや過干渉はよくない

 

お母さん自身が、誰かに弱さを見せて甘えることができると、子どもの甘えを受け入れられるようになります。

子どもが甘えるのは、下の子が生まれたときや引っ越しをしたとき、小学校に入学するときなど、環境が変わるときが多いようです。変わることに不安を感じて甘えてくるので、十分に甘えさせましょう。

一方「甘やかし」は、「言うことを聞かせたいから子どもにお菓子を与える」など、大人の都合で行なわれるものです。子どもと向き合っているわけではありません。また、子どもが求めていないのに手を出すのは「過干渉」です。

甘やかしも過干渉も、甘えさせることとは違うので気をつけましょう。

 

【こんなとき、子どもの甘えを受け入れるには?】

 

・忙しいときにまとわりつく

親の関心が自分に向いていないことを察して、向けさせようとしている場合も。一度、手を止めて短時間でも子どもの要求に応えるか、「あとで」ではなく具体的に「これが終わったらね」と言います。

 

・好き嫌いをする

無理強いせず、家族がおいしそうに食べている姿を見せると、食べる気持ちになることも。叱られたことを引きずっているせいで「食べたくない」と言っている場合もあるので、不機嫌の原因を探ります。

 

・わからないとすぐ答えを聞く

「自分で考えなさい」と突き放さず、子どもが解けそうな問題ならヒントだけ出し、自分で考えるよう促します。1人で解けた成功体験を積めるよう見守り、親に頼らず自分で取り組める環境を作ります。

 

・幼稚園に行きたがらない

無理に行かせようとしないで、子どもの気持ちに寄り添って、先生と相談しながら慣れるのを見守ります。時間的に余裕があるようなら、「今日は家でお母さんと遊ぼうか」と、提案してみてもいいでしょう。

 

誰かに甘えられる親は、子どもを甘えさせることができます

 

子どもが親に甘えるのは、「親が自分のことを無条件に受け入れてくれる」という信頼感の現われだといえます。子どもを甘えさせすぎて悪いことはなく、甘えさせれば甘えさせるほどいいのです。

 

子どものときに「自分を丸ごと受けとめてもらえた、自分の欲求が満たされた」という経験を重ねていくと、「ありのままの自分を出しても大丈夫なのだ」という安心感が得られます。そこから自分自身を信頼する「自己肯定感」が生まれ、新しいことに挑戦する力や、困難なことがあっても乗り越える力が育っていくのです。

 

親が頑張らなくてはならない今の社会では、子育てが辛いと感じても「助けて」と言えないお母さんがたくさんいます。子育ては1人ではできません。周りに甘えられる相手を作り、自分の弱さを見せることが「親になること」だといえるでしょう。

 

親自身が甘えられれば、子どもを甘えさせることができるのです。

 

 


 

「PHPのびのび子育て」 3月号より

 

 

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本記事は、「PHPのびのび子育て」2019年3月号特集【9歳までの「甘えさせ方」で子どもは変わる!】より、一部を抜粋編集したものです。

 

【著者紹介】

菅野幸恵

(青山学院女子短期大学子ども学科教授)

乳幼児期の親子関係に注目した研究を長年、続けている。最近は子どもと親の育ちの場としての自主保育のフィールドワークを行なう。著書に、『甘えれば甘えるほど「ひとりでできる子」に育つ』(PHP研究所)、『あたりまえの親子関係に気づくエピソード65』(新曜社)などがある。