ここでは、子どもの脳の発達に合わせた「甘えさせ方」について解説します。年齢はあくまでも目安です。実際には、それぞれの子どもの発達を見極めて対応しましょう。

 

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子どもの脳の発達に合わせた「甘えさせ方」

子どもが甘えるのは、不安や恐怖を感じていて、そのストレスを解消するためです。「お母さんのところに行けば大丈夫」と思って、体をくっつけたり抱きついたりするのです。
特に0〜1歳では、頻繁な語りかけと笑いかけが大切です。子どもが甘えてきたら、何はともあれ、まずは抱きしめてあげてください。そしてそのときに、甘える理由を考えましょう。「よしよし。何かあった?」と話を聞いてあげれば、子どもはお母さんの愛情を感じ、安心します。
そうすればまた、外に出ていろいろなものを見たり聞いたりして、お友だちとも遊ぶでしょう。それが、脳を刺激します。子どもの脳の発達のためにも、しっかり甘えさせてあげることが大切なのです。
ここからは、脳の発達に合わせた「甘えさせ方」を見ていくことにしましょう。

2〜3歳 読み聞かせで楽しい時間を過ごそう!

この時期の脳は音声言語、すなわち「話し言葉」を発達させるのにうってつけです。音声言語の発達を促し、同時に親子の接触時間を増やす意味でも、積極的に絵本の読み聞かせをしましょう。脳を育てるのに、絵本の読み聞かせほど有効な方法はないと言われているほどです。
タイミングとしては、夜に眠る前の10分間。一緒に布団の中に入って、寝かしつけながら行なうのがいいでしょう。
言葉や文字を無理に覚えさせる必要はありません。
この時期には、「物語を耳で聞かせる」ことが大切です。お母さんは絵本の字面を追って淡々と読むのではなく、できるだけ登場人物になりきり、ときにはアレンジを加えながら、楽しく、語りかけるようにすると効果的です。

4〜6歳 子どもの主張に耳を傾けよう!

4歳ぐらいになると、それまで「○○を買って!」と駄々をこねるだけだったのが、ほしい理由を自分で考え、主張するようになります。脳のワーキングメモリが発達するからです。
ワーキングメモリとは、さまざまな情報を処理する能力のことで、問題解決、社会性、創造性など人生の成功に深く関係するすべての基礎となるものです。この能力の発達によって、思考力や記憶力、集中力なども育まれます。
子どもの主張には、しっかりと耳を傾けましょう。買ってほしい理由が「友だちが持っているから」なら、「友だちが持っているとほしいのはなぜ?」と聞く。子どもはまた理由を考える。この繰り返しが脳の発達につながります。子どもの答えに納得できたら、買ってあげてもいいでしょう。

7〜9歳 励ましながら、やる気に火をつける!

この時期には、脳の自己報酬神経群、すなわち「自分でやりたい」という本能を生み出す部位が大きく発達します。自分が「やろう」と思ったことを最後まで成し遂げる喜びを感じるようになるので、そのことを利用した甘えさせ方をするといいでしょう。
できれば、子どもが何かに熱中しているときは、本人の気が済むまでやらせてあげましょう。好奇心をもって自分から「やりたい」「やろう」と思ったことに熱中することは、脳の発達にとてもよいのです。それを、親の都合で「もういいかげんにしなさい」などと言ってやめさせると、脳の発達が妨げられてしまいます。さまざまな経験をさせ、子どもが興味をもったことは、どんどんさせてあげてください。
ただ、時間を守り、規則正しい生活を送ることも心がけましょう。

まじめなお母さんほど、どこまで子どもに甘えさせていいのか、「甘えさせ」と「甘やかし」はどう違うのかと悩みがちです。その結果、「○○してはいけない」「○○しなければいけない」という考え方に陥ってしまうようですが、そうやってお母さん自身が追い詰められてしまうことは、子どもの脳の成長にとってはマイナスです。
私が今回お話ししたことを含め、子育ての方法論はいろいろありますが、子どもにはそれぞれ個性がありますし、どんなに「いい」と言われている方法でも、それがわが子の個性をつぶしてしまうものなら「百害あって一利なし」です。お母さんには、どうか肩の力を抜いて、「私の子だから大丈夫。うまく育つわ」ぐらいに、おおらかな気持ちで子どもに接していただきたいと思います。
今、脳科学者の間ではアフリカ南部のある民族の子育てが注目されています。そこでは、仕事や家事をしているときも、親はいつも子どもを抱いています。母親だけでなく、民族みんなで子どもの面倒をみます。
そうすると子どもは安心しますし、母親の心も安定します。母親と子どもの脳は同調するので、お母さんの気持ちが楽であれば、子どももストレスを感じることがありません。それが、脳の発達にとっていいのではないか、原点に戻って子育てを見直そう、という流れになっています。

今の日本で、アフリカのお母さんと同じような子育てはできないかもしれませんが、そのおおらかさは見習いたいものです。くれぐれも、子育てを難しく考えすぎないこと。たっぷり遊んでしっかり食べ、ぐっすり眠って早寝早起き……という、ごくあたりまえの生活習慣を身につけさせることが大事です。
 


 

「PHPのびのび子育て」3月号より

 

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本記事は、「PHPのびのび子育て」2020年3月号特集【頭のいい子、性格のいい子になる 9歳までの「甘えさせ方」】より、一部を抜粋編集したものです。


【著者紹介】
澤口俊之(さわぐちとしゆき)
脳科学者。北海道大学卒業、京都大学大学院理学研究科博士課程修了。エール大学医学部研究員、北海道大学医学部研究科教授を経て、2006年「人間性脳科学研究所」所長に就任。'11年より武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部教授を兼任。フジテレビ『ホンマでっか!?TV』などのテレビ出演、著書多数。