「甘え」という言葉に悪い印象を抱いてしまうお母さんもいるかもしれませんが、実は、子どもが人と信頼関係を築けるようになるための、とても重要なカギなのです。


sikaranaikosodate.jpg


「甘えさせる」といい性格が育つ!

「甘え」という言葉は、実は日本特有の表現だそうです。心理学の名著『「甘え」の構造』(弘文堂)で、土居健郎先生がそのように述べています。
相手のことを信頼していて、なおかつ十分なコミュニケーションがとれているときに、はじめてその相手に甘えることができます。
一般的に「甘え」というと、あまり印象がよくないようにも感じますが、実は子育てや親子関係を考えるときには、とても大切なキーワードです。親と子どもがしっかりとした関係を築くには、「甘え」がその根底にあります。親への深い「甘え」やそれが許される関係性があってこそ、人は他者との深いコミュニケーションができるようになるのです。
子どもを甘えさせるうえでは、成長とともに距離感やバランスのとり方を変えていくことも必要ですので、ここでは、その考え方の基本を解説します。

3〜6歳 心も体も全面的に受けとめよう!

生まれたての赤ちゃんは、すべてを周りの人に頼って生きています。ある意味、究極的な「甘え」の状態ですね。
赤ちゃんの強さは、すべてを人に委ねることができるということでもあります。そして、それを受けとめていくことが子育てのスタートです。
子どもは十分に甘えることにより、基本的な信頼感を得ることになります。
そのように考えると、子育ては「甘え」を前提としている営みであるということに気づかされます。
3〜6歳頃の幼児期になると、子どもは、彼らなりの自立をさまざまな場面で発揮して、試してみようとします。親から見ているとハラハラしてしまいますね。
そのような姿が見られるのは、やはり甘えることのできる存在、自分を全面的に受け入れてくれる人(親)が、近くにいてくれるからです。
この時期、子どもを甘えさせるうえで大切にしていただきたいのは、「全面的な受けとめ」と「心身の受けとめ」の2つを行なってほしいということです。

1つ目の「全面的な受けとめ」というのは、いいことも悪いことも、すべてのことを受けとめるということです。
いいことは受けとめやすいですし、また積極的に認められます。しかし、お母さん、お父さんには、同じぐらいかそれ以上に、悪いことや、うまくいかないことも受けとめてほしいのです。
これは、子どもの行動に対して、親としての価値観をつけないということ。「甘え」をひっくるめた、あるがままのわが子を受けとめる、ということです。

2つ目の「心身の受けとめ」というのは、心も体も、甘えさせながら受けとめるということです。
幼い子どもは、「心」と「体」がとても近い関係性にあり、密接につながっています。その両者に対して、しっかりと充実感、甘え感を伝えてほしいのです。
子ども自身が、体と心でそのことを存分に感じられるようにしてください。「だっこ、だっこ!」とせがんだりすることは、まだあります。そんなときは、だっこしてあげてください。全身で子どもの「甘え」に応えましょう。
この2つの「甘え」を通じて、子どもたちは自分の存在に自信をもち、同時に人に対する信頼のタネを自分に根づかせます。「甘え」は、自分と他人を信頼でつなぐカギのようなものなのです。

7〜9歳 厳しい「外の世界」と甘えられる「家」でメリハリをつけよう!

この時期の子どもたちは、学校と友だちの存在によって、世界が大きく広がります。
そこで大きく羽ばたける力は幼児期に十分育っていたとしても、生活や活動は、これまでのものとはまったく異なりますから、とまどいもあるでしょう。
そんなときですから、親は家の中で甘えられる機会をしっかりと作ってあげてほしいと思います。
学校や社会では、許されないことや、認められないこともあります。
社会はときに厳しく、子どもたち1人ひとりの思いをすべて汲み取ってくれるわけではありません。
だから、そんな思いを家の中で十分に受けとめて、満たしてあげてほしいのです。厳しい「外の世界」と甘えられる「家」で、メリハリをつけるイメージです。

10〜12歳 思春期には親は子どもの最後の砦になろう!

この時期には、子どもは思春期の入り口に立って、本格的な自立への第一歩を踏み出します。
といっても、まだ中途半端で、心のバランスも悪いので、ときには親を一方的に拒絶したり、否定をしたり。かと思えば、過度に甘えたり、依存したり。日替わりの姿に、親も疲れてしまいます。
これは思春期の大きな特徴の1つで、子どもたちは自分の気持ちをうまくコントロールできないのです。
だからこそ、「甘え」が必要です。
その大きくムラのある状態のときに、「親に甘えられる」という保証が大切なのです。親には、「自分が最後の砦になる」という、気持ちと覚悟が必要です。
甘えることができる相手と場所は、思春期の不安を打ち消してくれるのです。




「PHPのびのび子育て」2月号より


Ncover2102.jpg

本記事は、「PHPのびのび子育て」2021年2月号特集【「甘えさせる」といい性格が育つ!】より、一部を抜粋編集したものです。

【著者紹介】
小埼恭弘 (こざきやすひろ)
保育学者。大阪教育大学教育学部准教授、NPO法人ファザーリング・ジャパン顧問。武庫川女子大学大学院臨床教育学研究科を修了後、関西学院大学大学院人間福祉研究科後期博士課程を満期退学。西宮市市役所初の男性保育士として採用される。市役所退職後、神戸常盤大学を経て、現職。著書多数。