「聞く力」はどうして必要?~「話を聞ける子」は伸びる!

榎本博明

社会生活を円滑に送る上で「聞く力」は必要です。「聞く力」がしっかり身についていないと、子どもの将来に、どんな影響が出てくるのでしょうか?

※本稿は『PHPのびのび子育て』2020年7月号に掲載されたものを一部抜粋・編集したものです

【著者紹介】榎本博明(えのもと・ひろあき)
1955年生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現在、MP人間科学研究所代表。主な著書に、『伸びる子どもは○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『教育現場は困ってる』(平凡社新書)、『〈自分らしさ〉って何だろう?』『「さみしさ」の力』(以上、ちくまプリマ―新書)『「やさしさ」過剰社会』(PHP新書)などがある。

「聞く力」が育っていないと…自分の衝動をコントロールできない子が増えている

子どもというのは衝動の塊のようなところがあります。思ったことは何でも言いたい。興味のあることは何でもしてみたい。欲しいモノは我慢できない。

そうした自由奔放さが子どものイキイキした魅力にもつながるわけですが、そのままでは社会に適応できません。自己中心的に動く子どもに、親は合わせてあげられたとしても、友だちは合わせてくれないでしょう。

社会生活を送る上では、相手の気持ちに想像力を働かせ、お互いに歩み寄る必要がありますが、その基礎となるのが「聞く力」です。

近頃では、幼稚園から小学校への移行で躓く子が多く、小1プロブレムなどと呼ばれ、深刻な問題となっています。元気に遊び回っていればいい幼稚園時代と違って、教室で勉強をしなければならない小学校生活に適応できないのです。

授業中に席を立って歩いたり、教室から出たりする。あるいは先生の話をじっと聞いていられず、授業中に騒いだり、暴れたりする。自分の衝動をうまくコントロールできない子が急増しているのです。
自己コントロール力の基礎をつくるためにも、まずは「聞く力」を身につける必要があります。

「聞く力」が育つと、こんな力も伸びる! 


(※画像はイメージです)

子どもの「聞く力」を育むことで、これらの力も自然と伸びます。

吸収力:さまざまな知識を取り込む力!

子どもの前には、未知の世界が大きく開かれています。この先、力強く生きていくために、いろいろなことを吸収し、学んでいかなければなりません。

自然と触れ合ったり、友だちと遊んだりといった直接経験から学ぶこともたくさんありますが、私たちの知識の多くは間接経験によって取り入れたものから成り立っています。

勉強する際に必要不可欠なのが読解力ですが、その基礎となるのが「聞く力」です。想像力を働かせて言いたいことを読み解くのは、本も会話も同じ。人の話を聞き、何を言いたいのか、何を伝えたいのかを理解することが、読解力の土台になるのです。

読解力:言いたいことを理解する力!

中学生の約半数が教科書の意味を理解できていないというデータが発表され、教育界に衝撃が走りました。そこで問題となったのは読解力の乏しさです。読解力が乏しいと、本を読んでも内容をちゃんと理解することができません。

勉強する際に必要不可欠なのが読解力ですが、その基礎となるのが「聞く力」です。想像力を働かせて言いたいことを読み解くのは、本も会話も同じ。人の話を聞き、何を言いたいのか、何を伝えたいのかを理解することが、読解力の土台になるのです。

人間関係力:想像力を働かせて共感する力!

社会生活を快適に送るには、人とうまく関わっていくことが求められます。そこで人間関係力が問われるわけですが、その中核となるのが共感力と傾聴力です。

お互いに相手の気持ちや考えに想像力を働かせ、共感力を発揮するためには、まずは相手の言葉にじっくりと耳を傾ける必要があります。

自分の言いたいことを言うばかりでは、人間関係を良好に保てません。「聞く力」が人間関係力の基礎になっていることを忘れないようにしましょう。