春は子どもの気持ちが乱れやすい!~心を安定させるヒント

榎本博明

すぐ泣く、暴れる……春は子どもが不安定になりやすい季節。子どもの心が乱れる原因をきちんと理解し、温かく受け止めましょう。

※本稿は『PHPのびのび子育て』2015年5月号に掲載されたものを一部抜粋・編集したものです

【著者紹介】榎本博明(えのもと・ひろあき)
1955年生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現在、MP人間科学研究所代表。主な著書に、『伸びる子どもは○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『教育現場は困ってる』(平凡社新書)、『〈自分らしさ〉って何だろう?』『「さみしさ」の力』(以上、ちくまプリマ―新書)『「やさしさ」過剰社会』(PHP新書)などがある。

わがままは、我慢の反動

幼児期から児童期というのは、自分の世界がみるみる広がっていく時期です。慣れ親しんだ家庭での生活と違って、幼稚園や学校の生活は非常に刺激に満ちています。新しいことを学んだり、友たちと遊んだりイタズラをしたり、毎日がワクワクすることの連続です。

そんな楽しい毎日でも、家庭にいる時と違って、どこか緊張感があります。新たな世界に適応しようと、小さな身体で精一杯頑張っているのです。ですから家に帰るとホッとし、気が緩んで疲れかドッと出たり、我慢していた反動でわがままが出たりということがあります。

こんなわが子を、温かく迎え入れ、エネルギーを補給できるのが親御さんです。あなたのもとでエネルギー補給ができるからこそ、子どもは翌朝からまた冒険ができるのです。

まずは、子どもの感情が揺れ動く原因を知ろう!


大きく3つ挙げられます。原因を知ることは、子どもの気持ちに寄り添う近道です

【原因1:時期の問題】 春は親子にともにストレスを抱えやすい

保育所や幼稚綱に通い始めたり、小学校に入学するなど、春は生活環境に変化が生じやすい時期です。そうした未知の環境に入っていく時は、誰でも不安で緊張し、プレッシャーがかかります。
親も、わが子がうまく適応できるだろうかと不安になりがちで、春は親子ともども気持ちが乱れやすくなります。

【原因2:環境の変化】 親から友達中心の生活に

入園や入学によって子どもの環境は大きく変化します。一番大きな変化は、親との関わりが中心の生活から、友だちとの関わりが中心の生活に変わることです。親は、自分の目線に合わせてくれ、要求にもできるだけ応えようとしてくれます。

でも、友たちは遠慮なく自己主張してきます。親のように合わせてはくれません。やさしい子もいますが、自分勝手な子もいます。そこでいろいろなタイプの友だちとのつきあい方を学ぶのですが、相手が親の時と違って思い通りにならないことが多いため、非常にストレスが溜まりやすいのです。

【原因3:性格的特徴】 どんな性格の子でも心は乱れる

性格的に引っ込み思案の子にとって、親のもとを離れて園や学校という慣れない場で過ごすのは、とても不安なものです。わがままな子は、親と違い自分に合わせてくれない友だちとのつきあいにイライラさせられます。

のんびりマイペースな子は、なかなか先生の指示通りに行動することができず、しょっちゅう急かされたり、叱られたりします。活動性が高い子は、たえず動き回り、好奇心に任せて勝手なことをしては先生から叱られます。

つまり、心が乱れる原因は子どもによってそれぞれ違いますが、どんな性格の子にとっても、環境が変化する春は試練の時なのです。