子どもの将来を左右する「能力」は親の言葉で伸びる

榎本博明

お子さんの「こころ」は、たくましいですか?

「非認知能力の高さ」は、どのような観点から見分けられるのでしょうか。この能力の高い子と低い子に見られがちな違いについて、そのポイントを整理すると以下のようになります。

(1)我慢強いか、我慢できずに駄々(だだ)をこねるか
(2)集中力があるか、気が散りやすいか
(3)粘り強いか、飽きっぽいか
(4)誘惑に負けずにやり抜けるか、すぐに誘惑に負けてさぼってしまうか
(5)怒りなどのネガティブ感情を抑制できるか、すぐにネガティブ感情を爆発させるか
(6)人の気持ちに敏感か、それとも鈍感か
(7)協調性があるか、わがままを通そうとするか
(8)よく考えて行動するか、衝動的に行動するか 

各ポイントの前半が当てはまるほど非認知能力が高く、後半が当てはまるほど非認知能力が低いことになります。お子さんはどちらの傾向が強いでしょうか。もし、非認知能力の低さを疑わせる傾向が見られるようであれば、そこを改善する言葉がけが必要です。

知能に代表される「認知能力」は遺伝要因にかなり規定されると見られていますが、やる気、我慢強さ、粘り強さ、集中力、感情コントロール、協調性、共感性などの「非認知能力」は、訓練によって十分に向上させられることが分かっています。

繰り返しますが、その基本は、伸ばしたい非認知能力に本人の意識を向けさせるよう、親がじょうずな「言葉がけ」で導くことです。

こんな言葉がけが、子どもを伸ばします

では、能力別に、どのような言葉がけをすれば効果的か、大切なポイントと具体的な「言葉」の例を挙げていきましょう。

ここは我慢しないといけないという場面で、我慢できる子と、我慢できない子がいます。そこで大事なのは、親が我慢するモデルになること。そして、子どもが駄々をこねても屈(くつ)せずに、我慢強さを促すような「言葉がけ」をすることです。

例「お出かけしたいけれど、この用事を終えるまでは我慢、我慢」

例「今回は我慢しようね。そうしたら今度買ってあげるからね」

自発性・集中力のある子と、ない子がいます。そこで大事なのは、親が積極的に何かに集中するモデルになること。そして、子どもが興味のままに何かに没頭する経験をさせること。さらには、物事に集中する姿勢を促すような「言葉がけ」をすることです。

例「どうやったらいいかな。まずは自分で考えてみて」
例「好きなようにやってみたら。うまくいかなかったら、一緒に考えよう」

なかなか思いどおりにならなくても諦めずに粘れる子もいれば、すぐに諦めてしまう子もいます。そこで大事なのは、親がけっして諦めずに粘り抜くモデルになること。そして、困難な状況でも諦めずに、粘り抜く姿勢を促すような「言葉がけ」をすることです。

例「もうちょっとだけ頑張ってみようか」
例「粘ってると、案外うまくいくこともあるよ」

目標を決めたり計画を立てたりしても、遊びたいとかのんびりしたいといった誘惑に負けて、すぐにさぼってしまう子もいます。そこで大事なのは、親が誘惑に負けずに、やり抜くモデルになること。そして、いったん決めたことは、どんな誘惑にも負けずにやり抜こうとする姿勢を促すような「言葉がけ」をすることです。

例「疲れたから、もうやめたいな。でも、これを仕上げないと後で困るから、頑張らないとね」
例「ほんとにそれでいいの? 一緒にやってきた友達はガッカリしないかな」

思いどおりにならないと癇癪を起こしたり、ひどく落ち込んだり、友達にすぐに怒りを表したりと、感情をうまくコントロールできない子もいます。そこで大事なのは、親が感情をうまく操縦するモデルになること。そして、感情を爆発させないように、落ち込みすぎないように促すような「言葉がけ」をすることです。